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7歳以降の僕 ♢就職編と見せかけて王宮編♢
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しおりを挟む暫し無言のまま。
無表情でムーラン皇子から目を離さないディー兄様。
アルカイックスマイルのままムーラン皇子に笑っていない目を向けるパスティリード殿下
そんな二人と背後からの圧にも変わらず穏やかな笑みを浮かべているムーラン皇子。
僕はと言うと、この空気に不安になってついディー兄様を見上げてしまう。
そんな僕に気が付いたディー兄様は、いつも僕に向けてくれる蕩けそうな笑顔で目線を僕に移して、頭を撫で、旋毛にキスしてくれた。
良かった、いつもの兄様だ。
僕は余程ホッとした顔をしてたみたいで、その瞬間から周りの圧も薄くなったように感じた。
ムーラン皇子のさっきのはブラックジョークってヤツかな?
いや、ゲームの頃ならともかく今のムーラン皇子はそんな悪趣味なことする様な人には見えないし、やっぱり幼い僕に気遣って大袈裟に褒めてくれたのがちょっと言い方不味かっただけだよね。
うんうん。
「ふふふ、どうやら一番の壁はレティの御家族の様ですね。」
パスティリード殿下にも負けない完璧なアルカイックスマイルでパスティリード殿下に零したムーラン皇子の言葉に、パスティリード殿下は僅かに眉間を寄せた。
一番の壁って、父様や兄様達がアイカラリティ王国の壁の役割を担ってるって事?
確かにディー兄様は軍務だからそうとも言えるけど、父様とミー兄様は内政に携わってる筈だし、壁とは言えないような…?
僕の頭の中はまたハテナでいっぱいだ。
「レティ、私はレティと友達になりたいので、国に還る前にレティの家に遊びに行ってみたいです。
この場では話せない私の話をして私の感謝もきちんと伝えたいですし、私の国の事ももっと知って欲しい」
パスティリード殿下に向けていたアルカイックスマイルから、僕を振り返ってさっきまでの穏やかな笑顔に戻ったムーラン皇子は、「如何ですか?」と僕に問いかけた。
うん、皇族のお願いを断るなんて選択肢、無いよね?
外出だったら父様や兄様達にもお伺いしないといけないけど、わが家に訪問だからみんな邸に居るだろうし皇子に失礼を働いてしまう事も無いだろうし。
皇族のお願いは僕には断れないし。
「はい、ムーラン皇子。日程は父様や兄様に確認を取らなくてはなりませんが、我が家にお迎え出来る事を光栄に思います。」
僕も精一杯の笑顔を返しながら頷く。
僕もムーラン皇子みたいに素敵な笑顔を浮かべられたら、話してる相手に驚かれたり怖がられたりする事無いのになあ、なんて考えながら。
僕が話してる時に笑うと、顔を赤くして固まられたり、その後顔を青くして怯えられたりするんだよね。
僕も王宮で働くようになってから少し経ったし、そろそろ周りも僕がモブで存在が薄いのにも慣れて貰えてると思うんだけど、未だに歩いて居るだけで驚いて赤ら顔で壁端に避けられたりとか、遠巻きに見られたりするんだよね…。
慣れて話をしてくれるようになった人達も笑うと固まっちゃう事があるし。
僕の笑顔もこんな素敵な笑顔だったらなー。
攻略対象はゲームと違っても素敵なんだなあ。
その後の残りの案内はもう終盤だった事もあり、滞りなく終わった。
案内後にムーラン皇子からお茶に誘われたけれど、まだ職務が残っているので丁寧にお断りさせて頂いた。
本当は執務室に戻ってからの休憩時間が待ってるんです。
朝から何度もグレッグさん達に確認と約束を取られたからね。
きちんと休憩しないと、また心配させてしまったら今後の休憩事情がどうなるか分からないし。
皆に負担を掛けるのは、僕も嫌だしね。
僕は内心うんうんと頷きながら、とても残念そうに僕の屋敷への訪問を念押ししてくるムーラン皇子に見送られながら、自分の執務室に足を向けた。
執務室に戻る途中でパスティリード殿下や他の人達も其々の職場や仕事に戻って行ったけれど、ディー兄様だけは父様への報告が終わり次第僕の執務室に来てくれると言ってくれた。
今日はまだこの後も一緒に居れるみたいで嬉しい!
僕は鼻歌を歌い出しそうな位のご機嫌で、執務室でお留守番してくれている筈のリディやルーの元に戻って行った。
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