BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

庚寅

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7歳以降の僕 ♢就職編と見せかけて王宮編♢

前世のアイツと今世のアイツ (ヘーゼリオ(ヘジィ)視点)①

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アイカラリティ王国のオリリア男爵家次男として生まれたに、前世のの記憶が戻ったのはアイカラリティ王国王立学園に入学する1週間前。
貴族としては最低ラインでの生活の我が家に商人を呼び付けるという財力はなく、3人しかいない我が家の使用人の1人、馬子のトッテと共に街へ学園の準備をしに出た時だった。


目当ての商会の目前まで来たボクは、心が逸って、周りも見ずに道を横断しようとした。
その時、運悪くその道を進もうとしていた馬車に轢かれそうになった所で横転し、頭部を地面に強かに打ち付けた時に、そのまま気を失い、自分の部屋のベッドで目を覚ました時には既に、よりもの意識の方が強くなっていた。
前世から今世へと渡る際にされた『説明』も思い出していたので、目覚めた時から特に混乱もなく、それまでの『ボクの記憶』も残ったままの俺は、怪我を心配する両親と兄弟達と共にその後も何食わぬ顔で過ごした。




前世の俺はとても素行が良いとはいえない人間だったから、どれだけを装っても『ボクだけ』だった時とは仕草や言葉遣いなど随所に差が出るようで、家族や3人しかいない家族のように近しい使用人達には学園の寮に入寮するまでの数日間、度々頭を打ち付けた後遺症かと心配された。
やはりそれほどまでに『この世界の主人公』と『俺』とでは違うのかと、少し落ち込みもしたが、王都にタウンハウスのないオリリア男爵家我が家から通いは不可能な王立学園に前もっての知り合いなどはいないので、入寮し周りが全て見知らぬ誰かならば問題はないかと、早々に開き直った。


シナリオ通りにを攻略する為、実家の自室よりも広く立派な寮の個室で『主人公』の練習も恥を堪えて試みたが、入学して早々に、既にシナリオ通りではない状況に唖然とする事になった。


最初の1年は、イレギュラーに見えるも、ゲームに出てきていなかっただけかと思い、『ゲームシナリオの主人公通り』にイベントをこなし、との好感度を上げようと主人公のチート魔法、『魅了』まで使ってみたが、結果は惨敗。
イベントのはずのイベントが、イベントとして全く意味を成しておらず、の相手には、俺が入学する以前から心に決めた相手、というのが存在していた。
その心に決めた相手への想いに、俺のチート魔法であるはずの魅了など少しの役にも立たず、俺という存在は彼の視界恋愛対象にすら入る事が出来なかった。



俺は愕然とした。



 " この世界の主人公であるはずの俺が、全くのモブになっていた ” からだ。



そして元のゲームの主人公よりもこの世の全てに愛されているかの様な存在ソイツに、俺は直接物申す事にした。
影でコソコソしたり、何かを企てたり、そんなのはの性に合わない。



そして正に言葉通り、大人気なく突っかかっていった俺に対して問い掛けてきたその幼児イレギュラーの言葉に、俺は更に愕然と…いや、驚愕した。









──そもそも、何で俺が何の困惑もなく、『前世でプレイしていたBL恋愛ゲームの世界の中に生まれ替わった』今世を受け入れているのか、と言うと。
それは俺が前世で死んでしまった時に、自分を神だと名乗る胡散臭い子供ガキに自ら願ってこの世界に転生させて貰ったからだ。







前世の俺は何の娯楽もないような田舎の小さな町に生まれた。
親父は酒に依存していて子供にも手を上げるようなクソ人間で、母親はそんな親父にビビっていつも小さくなっていた。
田舎の小さな町だ。
そんな俺の家庭のなんか、近所はおろか町中に筒抜けで、物心着いた頃から俺は『可哀想な子供』として扱われていた。
遠巻きに俺を『可哀想な』と言うだけで、何にもしてこないような無関係な加害者達。
安全な場所で偽善者ぶる。
俺は町の奴ら大人達が嫌いだった。



そんな俺の家の隣には、夫婦仲は最悪なもののうちのように家庭内暴力ってのは無かったらしい、綺麗な顔した夫婦と、綺麗な顔した子供が1人の3人家族が住んでいた。


綺麗な顔した子供は俺と同い年で、初めて会った時には、こんな可愛い女の子がいるのかと間抜けにも呆けてしまった。
気が付けばお互いに家にいる時間が苦痛だったのもあり、度々近所の公園や空き地、裏山にある境内の裏手なんかで頻繁にち合う様になり、自然と共に過ごすようになっていた。


小学生に上がり、黒いランドセルをその子供が背負っているのを見た時には軽い失恋をした気持ちになった。
俺はその子供に、初めての恋心を抱いていたのだと、その時になって気がついた。
自覚した途端に失恋したのだとその時の俺は自然と納得し、しかしその、家が隣で幼なじみの綺麗な子供が同性だと分かってからも、初めての恋は無くならなかった。


今となっては実際どうだったのか分からないが、その時の俺は自分が周りと同じように異性愛者であると、それが普通だと思っていたから、男だと分かってからも幼なじみに心惹かれてしまう事に酷く嫌悪感を抱いた。
『周りと同じ』な自分を守りたいという、多感な子供のちっぽけな悩みだと、吹っ切った今なら笑い飛ばせるが、その時の小さな俺は、普通では無くなる事が怖かったのだ。
この嫌いなはずの『ちっぽけな世界生まれた町』の中で、これ以上はみ出したく無かった。
その気持ちが、自分への嫌悪から幼なじみへの嫌悪へとすり替わっていくのに、時間は掛からなかった。


周りよりも早熟な体が大人に近づき、親父の暴力にも抵抗出来るようになってきた中学の頃には、俺はますます家に帰らない時間が増え、俺がもう1人でも大丈夫だとでも思ったのか、いつの間にか母親は家に帰ってこなくなっていた。
そうなると俺は更に家を空ける様になり、家に帰らない日の方が多くなってきた頃には、親父は家に母親とは別の女を連れ込むようになっていた。
偶に帰るだけの息子の俺にまで色目を使ってくる様な、そんな胸糞わりぃ女だった。



中学義務教育が終わると同時に家を出て、ツレの親父さんの町工場で住み込みで働かせて貰うようになった頃には、周りの男連中をそういう目恋愛対象で見ている自分を自覚した。
その頃になって漸く、幼なじみのアイツへの嫌悪が薄らいで来たが、今度は代わりに罪悪感が湧いてきて、アイツには変わらず近寄れなかった。



そんな仕事と仲間とつるむ時間を繰り返していたある日、ツレの親父さんから渡された書類に親の判子が必要な物があった。
まだ未成年の俺は、まだどうあっても全てを自分だけで賄えないことに軽い失意を覚えながらも、あと数年の我慢だと己を宥めながら久しぶりの実家に行った。
親父がいない時間帯を狙って行ったから、判子も問題なく拝借できた。
こんな時ばかりは、外出時に鍵を掛ける習慣なんて無いほどの田舎で良かったとさえ思った。


そんな、問題なく事が終わったことに安堵して実家の玄関を出た時だった。
丁度目の前を、顔なんて見えない位に髪を無造作に伸ばし下ろした、小さくてひょろっこい男が通り過ぎたのは。
そのひょろくて小さいのは、県じゃ一等頭が良い奴が行くって高校の制服を着ていて、こんな奴、この町にいたか?と目だけでその背中を追うと、俺の家の隣家に静かに入っていった。
俺はまさか、と唖然とし、丁度幼なじみの部屋の窓が見える位置まで無意識に移動すると、その窓のカーテンが先程のひょろい奴の手で閉められるのを見留め、力なくその場にしゃがみ込んだ。


何故だか、酷くショックを受けたのだ。


それが、自分が避けている間に豹変した幼なじみに対して失望したからなのか、そうなるまで気が付かなかった自分に対して失望したからなのか、それとも全く関係ない事になのかは分からなかったが、兎に角その時の俺は直ぐにでも幼なじみの現状を把握しなくては、と思った。


試しに知り合い伝いに聞いて回ってみたが、意外や幼なじみの近況は割と直ぐに聞くことができた。
何でも出来のいい姉が同じ高校に通っているという奴の話によれば、俺の幼なじみは高校で、酷く浮いている様子らしかった。
その高校の中でも抜きん出て頭の良いらしい幼なじみは、友達は疎か教師とも必要最低限しか話さないらしく、あの顔も見えない髪型や高校生男児には見えない体の貧弱さ、それに加えて自分の興味のある事には時間を忘れて没頭するその姿勢から、頭のいい変人だと認識されているらしかった。


俺はそれを聞いた時に、自然と眉を顰めてしまった。


確かにアイツは好きな物には没頭しやすい。
まだ一緒にいた幼い頃も、俺が話し掛けても気が付かない程に集中して只管に蟻の行列を見続けていた事もあったし。
でも他者との会話は普通に出来ていたはずだ。
あの髪と人と話さなくなった事には、何か関係があるんだろうか?



ツレに聞き込むほど幼なじみの事は気に掛かったが、結局俺は本人に接触なんて少しも出来なかった。
でも、家の近くに行くと、つい幼なじみの姿を探してしまう。
そんな日々を送っていた時に、「君の瞳の世界」というBL恋愛ゲームと出会った。
自分の恋愛対象が同性だと認める事は出来るようになったものの、周りにはバレないように隠し通していた俺は、その鬱憤をぶつけるかのようにそのゲームにハマっていった。
初代学園編から、その後に出たシリーズの全てを一通りやったが、俺は学園編と王宮編に出てくる正統派王子に一際のめり込んだ。
王道キャラに弱かったらしい俺は、その綺麗な顔から紡がれる甘い言葉に、その主人公を見詰める蕩けるような金の目に夢中になった。
王子の出るシリーズだけを、王子とのエンドルートだけを、何度も繰り返しプレイして、それまでに出てきた全キャラを攻略できる最終作の結婚編では常に涙しながら進めるほどにゾッコンだった。




そんな最終作が発売された半年後。
隣の県の中心地にある店に期間限定のキミセカコラボカフェが出来ると知り、俺は不審者の如く怪しい重装備の変装をしてその店に行くことにした。
いつもネットで購入していて、人前でキミセカの世界に触れるのは初めてだったから、その日の朝は酷く緊張していた。
なるべく早くに入店して、一通り満喫しながらも、できうる最速で退店しようと決めていた俺は、田舎の人もいない始発の駅のホームに1人立っていた。

ソワソワとケータイをいじり、コラボカフェの詳細や販売グッズ、抽選アイテムなどを何度も見返し確認していたら、あっという間に電車がホーム内に入ってくる時間になった。
俺が立っていたのは進行方向に向かって中央よりも後ろ側。
電車の勢いもあるだろうと立ち位置から少し後ろに下がった時だった。
電車が入ってくるのに合わせたかのように、小学校低学年程の子供が俺を横切り線路に向かって躍り出たのが見えた。
俺は咄嗟にその子供の腕を掴んで、その勢いのまま、子供と位置を交換するかの様に勢い付けて子供を後方に投げ飛ばした。


見えたのは、子供の酷く驚いた顔。


そして感じたのは、子供を投げ飛ばしたのとは反対の手を掴む小さな手の感触。


その手の感触に驚き、子供から視線を移せば、そこには線路内方向に投げ出される俺を引っ張ろうと俺の手を掴む幼なじみの姿があった。



子供を投げ飛ばした勢いと、周囲よりも一際体格のいい自身の体重で、俺はその時既に目前に迫る電車の目の前に飛び出していた。
咄嗟に手を離し突き飛ばす猶予の無いままに、小さくてひょろくて体重の軽い幼なじみは、俺の体重を一瞬も支えることは出来ず、俺の落ちる方向に引っ張られるまま、共にそのまま電車に撥ねられた。





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