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7歳以降の僕 ♢就職編と見せかけて王宮編♢
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しおりを挟む王宮勤めになってから早くも3ヶ月が過ぎた。
最初の頃は不安しかなかった出仕も、宰相さんの言う通り、顔を合わせるのは見知った人ばかりで、最近は不安に思うこともかなり減ったように思う。
役目に自分が見合うとは、今でも思わないし、本当に僕で良いんだろうかという不安は消えない。
それに顔見知りの中に、明らかに僕の執務室に来るのは可笑しい気がする方達もいるのだけど…当人達が好きで来ているのだと主張して譲って頂けないので、それについて僕からお伺いを立てるのはもう止めた。
僕の傍には変わらずリディとルー。
僕の職務のひとつに、『黒の君への歓待』というのがあるので、リディは仕事中も施設への視察中も、ずっと一緒だ。
ルーは学園の時と同じ理由。
成人していない僕の世話役兼、護衛として公爵家からの遣いとして伴っている。
これは国王陛下直々に許可を頂いている。
それから、学園とは違い新しく僕の秘書に前生徒会役員のクレッグさん。
ディー兄様や第一王子と同年の方で、侯爵家の次男。
飴色の髪に新緑の瞳、リムの細く横長な形の眼鏡を掛けた、知的で落ち着いた人だ。
最終学年生の時には、生徒会書記を務めていたクレッグさんは、仕事関係の予定の調整や管理、選別等を全て行ってくれている。
公爵家の従僕であるルーには、国事に関わる事への管理、関与は一切できない為だ。
この秘書というのも王宮勤めが幼い僕の負担にならない様に、と国王陛下が配慮して下さっての事なんだけど、クレッグさんは在学時でもディー兄様や第一王子に次ぐ位に優秀だと有名だった方で、卒業し王宮勤めになってからも内宮でとても重宝されていると聞いていた。
そんな方を僕なんかの秘書にさせてしまい、申し訳なくて顔合わせの時に謝ったら、自分から希望したのだと、とても素敵な笑顔で言われた。
きっと気を使ってそう言って下さったんだろうけど、その時に年下の僕に対して、部下なのだから呼び捨てで構わないと言ってくださる程、とても心の広い人だ。
名前はさすがに呼び捨ては出来ないので、さん付けにさせて貰った。
思えば生徒会の活動の時も、自分から気配って兄様達や僕、ルーにまで度々不足がないか確認してくれたりしていた。
とても大人で、とても優秀。
一緒に仕事をする様になってから、密かに憧れている。
そして、僕付きの、王宮からの護衛で宮廷騎士のローアイン。
彼、実はキミセカの就職編に出てくる攻略対象キャラで、本来なら誰かの専属護衛になんてなっていなかった。
ディー兄様といい、騎士団のキャラの設定が少し変わってる。
オレンジの清潔感ある短めの髪に、紺色の瞳、爽やかな顔立ちの美形。
彼とは顔合わせの時が初対面だった。
キミセカでの彼の設定は、実力はピカイチだけど皮肉屋で周囲とのトラブルが絶えなくて、実は特殊系魔法の使い手だという事を隠している、出自も複雑という特殊枠だった。
見た目の爽やかさとは大きく違う内面や裏設定に、コアなファンがついていたはず。
そんな彼は、初めての挨拶時から、僕の予想を裏切りとても優しく好青年だった。
挨拶の際も身長差のある僕の前に片膝を付き、目線を合わせて僕の両手を取りながら丁寧に挨拶をしてくれた。
「この命に変えても、何者からも必ずお守りします!」と言い切った真剣な瞳の彼にはとても驚いた。
彼も余程の子ども好きらしい。
実際彼は当初休憩も取らない程の意気込みで、今も常に僕の傍らで守ってくれている。
正直、ルーもいるのにそんな危険なことは無いだろうと思ってるんだけど、この宮廷騎士の専属護衛は父様からも必ず付けるよう厳命されている。
父様曰く『王の提案を受けたのも、レティシオに何かあった時に国としての対応、対策もとれるようにする為だから、国からの護衛は必須だよ。』とのこと。
父様が僕に何か強く命令するなんて珍しいので、これも申し訳ないとは思いながら傍に控えて貰ってるんだけど…さすがにきちんと休憩はとって欲しいと伝えても、これくらい全然平気ですと言いきられてしまったのには困った。
これはクレッグさんにも言える事なんだけど、僕の周りは働きすぎで真面目な人ばかりだ。
ルーも僕がしつこくお願いして漸く僕の相手をするという名目で、衆目のない場所限定だがやっとお茶を一緒にして貰えるようになったのだ。
僕には休憩して欲しいと必ず日に2、3度は誰かが言ってくるのに、当の本人達は誰も休憩しないんだ。僕が休憩させられていても。
これはさすがに甘受できなくて、みんなに僕が休憩をとる時は一緒にとって欲しいとお願いした。
最初は酷く渋られたので、卑怯だとは思いつつも自分の幼子と言う所を活かして、1人は寂しいし、みんなが仕事をしている中では心休まらないのだと懇願させてもらった。
それで最近やっとみんなで休憩出来るようになった。
本当に良かった。
実際みんなで休憩をとる時には、クレッグさんもローアインさんも(彼にも呼び捨てでと言われたが、さん付けで許してもらった。)とても嬉しそうというか、幸せそうな顔をしてる。
やっぱり休憩は大事だよね!
没頭すると時間を忘れがちな僕も、みんなの休憩も兼ねていると思えばきちんと時間を確認するようになった。
これにはルーがとても安堵していた。
そうして、僕たち " 魔道統括長組 ” の全員でのお茶休憩は無事に定着していった。
そんな僕の王宮勤めは、毎朝僕の執務室まで日参してくれる元・学園保健医、現宮廷医師のユージュアル先生の問診から始まる。
えっ、なんで学園編攻略対象者で、学園勤務の先生が!?と驚いた初日。
何でも、今年から王宮勤めに転属したらしい。
そして僕への毎朝の問診は、きちんと父様に許可を得ての事だと説明された。
うーん、就職編にも、王宮編にも、ユージュアル先生が王宮勤めになるなんて裏設定なかったはずなんだけど…。
設定になかっただけで、転属してたのかな…?
僕が覚えてない可能性もあるなってここまでくるとそう思うようになってきた。
今度ヘジィに会った時に聞いてみようかな。
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