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6歳の僕♢学園編 3♢

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3年生になっても、僕は変わらず生徒会長になったミー兄様の補佐をしている。
生徒副会長もいるのに、僕の補佐がいるのか分からなくて聞いたんだけど、兄様はじめ生徒会メンバー皆に、「「「「必要です!!」」」」と勢い込んで言われた。
普段は仕事の話をするのにも遠慮がちな後輩まで凄い勢いだから、びっくりした。


1年間の行事の流れも3年目。
補佐の僕の仕事は殆ど変わらないから、もう慣れたものだ。
最近はお昼寝以外の時間に眠くなることも少なくなったし、大分成長を感じる。
でも、体の作りは同い年の子に比べて小柄な気がする。
身近に親しい同い年の子なんていないけど、学園までの通学路で馬車内から見える市井の子供たちとか見てると…。
うん、やっぱり小さい気がする。
父様も母様も兄様達も気にするなって言うけど…気になるよね。
男としては。


前の生でも男らしい方では無かった気がするんだよね。
何だか異様に今の小柄な自分が気になるんだ。
もしかしたら前も小柄で、そんな自分がコンプレックスだったんじゃないかと思ってる。
でも今世は、父様も兄様達もしっかりとした体つきだし。
父様もディー兄様もガッシリしてるし。
ディー兄様なんて、騎士団に入って更に引き締まった筋肉が付いて、羨ましい肉体美になってきてる。
最近はお風呂の度に、羨ましくて気がついたらジッと見てしまってる。
ミー兄様も、そんなに鍛えている様に見えないのに、しっかり腹筋も割れてるし、年々体重も育ってるはずの僕を未だに片腕で縦抱きにしてる。


僕も兄様達位の歳になれば、あんな風に筋肉質になれるかな?
最近はそれがすっごく気になってるんだよね。
お願いしても最低限の剣術しか教えてくれないんだもん、みんな。
兄様達は小さい頃からしっかりやってたらしいのに。
何でなんだ。



「そりゃ、レティには必要ないと思われてるからじゃね?」


いつもの静かな庭園で、ヘジィが当たり前の事みたいに言う。
だから、何で!


「兄様達は小さい頃からみっちり訓練受けてたんだよ?
不公平だよ。」

「ぶはっ!不公平って!」


くくくっ、と可笑しそうに笑うヘジィを、くちびる尖らせながら上目遣いに睨みつける。
て言うか、隣に座ってるから自然と見上げる形になるんだけど。


「はぁー、その顔か?その顔でたらし込んでんのか?」

「何それ!僕、今ヘジィの事睨んでるんだけど!」


たらし込むって、何だ!
何その、残念なものを見る目は!
何でそんなにヤレヤレみたいに、溜息つくの!


「いや、もうお前の無自覚はしゃーないな。
相変わらずで、逆にほっとするわ!」



何それ!
あっ、ルーに整えてもらってるんだから、髪の毛ぐしゃぐしゃしないで!
ほら、ルーこっち睨んでるじゃない!
何でかリディまで唸ってる。


「あー、お前の周りマジ怖ーよ。
まあ、いいや。またな、レティ。」

「えっもう行っちゃうの?」

「ああ、様子見たかっただけだから。
次の選択着替えなきゃだし、もう行くわ。」

「そっか、またねヘジィ!
授業中怪我しないでね!」

「おー。」



ヘジィは振り返らず後ろ手で緩慢に手を振りながら、生徒の授業棟の方に向かって歩いて行った。
あれからも定期的なヘジィとの待ち合わせは続いていて、話すのは10分程度だけど、出会った時の攻撃的な態度なんてもう、微塵も感じない。
相変わらず可愛い見た目と中身とのギャップが凄いけど。
僕に危害を加えないからか、ルーもリディも変わらず少しの距離を空けて、僕達の話が終わるのを待っててくれてる。
近くのベンチに座っててって言うんだけど、いつも同じ所に立って、何かあったらいつでも駆けつけるって感じなんだよね。
もう、ヘジィから何かされる事は絶対ないと思うけどなぁ…。


あっ!!
またヘジィの進路と好きな人の事聞くの忘れちゃった!
いつものらりくらり躱すんだもんなー。
ヘジィは明け透けな雰囲気の割に、結構な秘密主義だ。
好きな食べ物とか、趣味とか、前世でこうだったとか、そういう些細なことは結構自分からも喋るんだけど、込み入った事や秘密にしたい事は絶対教えてくれない。
しかも話を逸らすのがすごーく上手い!
僕は秘密事とか苦手だから、すぐ皆にバレちゃうのに。
これが主人公とモブの違いなんだろうか。
こんな所でまでモブ感とか。
本当にダメだな、僕。


「待たせてごめんね、行こうか。」


リディと手を繋いで、ルーに背後を守られながら保健室に向かう。
保健室に着いて、僕が寝たのを見てから、リディはユージュアル先生が学園長室まで連れてってくれてるらしい。
ルーは頑なに僕の傍を離れないし、リディも先に学園長室に行こうとすると、拒否するんだよね。
僕のこと、保健室まで送って寝入るのを見守ってくれてるみたい。
僕よりリディの方を優先して守ったり、送ったりしないといけないと思うんだけど…。
僕の周りは誰もその意見に賛同しないんだよね。
ルーが僕から離れないから、自然と送るのはユージュアル先生の担当になってる。
申し訳ない。
ユージュアル先生は相変わらず寝る前に、蜂蜜入りのホットミルクを出してくれる。
本当に生徒想いで優しい先生だ。




お昼寝後に学園長室に行ったら、今日は久しぶりに魔道士団長さんがいた。
新団員の選考から入団までの手続きや書類仕事や訓練なんかで、年始からこの時期まで忙しいらしくて、僕も冬の長期休暇の間は生徒会の仕事以外では学園にいなかったし、何だか会うの凄く久しぶりな気がするな。


「イグリットさん、お久しぶりです。
もう忙しいのは終わったんですか?」

「レティシオ君!
お久しぶりです!
ええ、後は私がいなくても大丈夫ですから!」


にこやかに両手を広げて歓迎をアピールしてくれるイグリット団長さんは、相変わらず綺麗な顔をしている。


「おや?
レティシオ君、瞳の色が濃くなってきていますね。」

「あっ、そうなんです!年末に兄様達に言われて気が付いたんですが、僕も魔力成長期に入ったみたいです。」



そうなんだ!
僕もやっと魔力が育ち始めた!
これからどれくらい成長するかは分からないけど、アレコレ考えてる魔術を構築出来るくらいまで成長してくれたら嬉しいなぁ。
魔力が大きいと、魔道具に魔力を落とし込むのも上手く出来るし、性能にも違いが出てくるからね。
家族みんなが高魔力持ちだから、実は結構期待してるんだ!


「そうでしたか!
それなら丁度いいですし、来月にでもうちに魔力の練習をしに来ませんか?
魔力鍛錬から魔力のり方、魔力制御の練習を私が教えますよ!」

「ええっ!そんな、僕の初期鍛錬に魔道士団長さんのお手を煩わせる訳には…。」

「そんな事気にしないで下さい!
私とレティシオ君の仲じゃないですか!
気が引ける様なら、またレティシオ君の考えた魔術式の話しでもして下さい!」


ええっ、僕と魔道士団長さんの仲って…そんな、恐れ多いんだけど…。
確かに凄く良くして貰ってるけど、そろそろ本当に過分が過ぎるよ…。



「えっと…あの…ありがとうございます。
あの、父と兄達に相談させて下さい…。」



イグリット団長さんの笑顔の圧が凄くて、思わず体を引きながら、家にお持ち帰り案件にさせて貰った。
そんな優遇、有難いけど流石に僕が決めていい事じゃないし、どっちみち父様には話を通さないといけない。
父様に話を通すと、自然と兄様達にも話が行くし。
先にその事をイグリット団長さんに伝えておこう。


「ええ、私からもマガリット公爵にお話しておきます。
楽しみにしていますね。」



何だかもう決定したみたいな雰囲気のイグリット団長さんに、僕は曖昧な笑顔を返した。




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