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5歳の僕 ♢学園編 2♢
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しおりを挟む剣術大会はゲームの通り、ディー兄様の優勝だった。
正直、去年もだったんだけど2人の攻防が速すぎて見えなくて、後ろに控えてるルーに解説してもらいながら見てた。
これが自分の目で確認出来る速さだったら怪我の心配で観戦どころじゃなかったかもしれないけど、2人の位置を追うのに精一杯の状況で解説での状況把握だからか、試合自体を楽しむことが出来た。
それにしても、あれが見えるルーも凄いなあ。
僕は試合に夢中で気が付かなかったんだけど、そんな僕の様子を父様母様とベルまで見ていたらしい。
2人の攻防に決着が着いて、ぱっと見怪我も無さそうでホッとしながら、次の魔術大会決勝に移る準備が整うのを待ってる間に、可愛かったとからかわれてしまった。
必死に見詰めてた自覚があるから凄く恥ずかしかった。
魔術大会は第1王子の優勝。
流石だね。
魔術の撃ち合いは流石に華やかで、観客席も盛り上がってた。
剣術大会の方は、目で追えて凄さが分かる人じゃないと、何が起こってるのか分からないうちに終わっちゃうんだよね。
圧倒されてる間に終わっちゃうから、魔術大会みたいに歓声が上がるのは勝敗が決した後だけって事が多い。
両大会の試合が終わって、国王陛下と学園長さんから祝辞が述べられた後、それぞれに勲章と褒賞が与えられた。
まあ、学生への褒賞なので一部施設の利用特権や学食での特別待遇、成績への加点なんかなんだけど。
あと、王宮訓練施設への特別見学の許可。
何故僕に課外授業で自由見学させて貰えてるのかは分からないけど、本当は褒賞にされるくらい特別な事なんだよね。
何だかとても複雑というか。
気まずい気持ちになった。
大会が行われるのは毎年日曜日で、休日に行われるから翌日は振替休日。
大会の後、兄様達に頑張ったご褒美が欲しい、と言われて僕に出来ることなら何でもと返したら、兄様達に明日1日3人だけでデートがしたいと言われた。
デート
その言葉に内心浮き立ちながら、それがご褒美になるのか不安になって聞くと、僕が嫌じゃなかったらそれがいいと言われたので、もちろん快諾した!
嫌だなんて思うわけない!
デートって言ったのは、兄様達の言葉遊び的な言い回しか、単に僕の反応を楽しんでるだけだと思うけど。
それでも兄様達とデートだと思うと嬉しい。
確かにいつも父様母様や、リディ、ルーや使用人達が一緒にいるから3人だけのお出掛けってした事ないなぁ。
なんて考えてたら、就寝時間にベッドに入っても楽しみでなかなか寝れなくて、兄様達に笑われてしまった。
デート当日。
出かける前にリディが愚図ってしまって大変だったけど、何とか宥めて3人で馬車に乗り込んだ。
何処に行くんだろうと思っていると、まず最初に大型書店に連れていってくれた。
王都内でも有名な、1番の店舗面積と蔵書量を誇る書店だ。
普段僕が父様にお願いして取寄せてもらってる専門書なんかもここから購入して運ばせてるらしくて、その専門書の種類も様々なジャンルの有名な著書からマニアックなものまで、と幅広く取り扱ってるらしい。
たまには自分でどんな物があるのか見ながら選びたいでしょう?と、ミー兄様がとても優しい笑顔で言ってくれた。
とても嬉しくて気分が一気に上がったけれど、ここは僕が嬉しい所で兄様達のご褒美にはならないのでは?と心配になってそう口にした。
けれど「移動中ずっと抱き上げさせてくれたら十分ご褒美になるよ」と言われてしまった。
それがご褒美の意味が分からなかったけど、お店の中は空間魔法で拡張してあって、見た目よりも更に広いらしいから、きっと僕の体力面等を考慮した上で、その事を僕に気遣わさせない様にそう言ってくれたんだな、と納得した。
やっぱり兄様達のご褒美にはなってないって思ったけど、あまりににこにことさあ、行こうと言われるものだから、あまり遠慮し過ぎるのも良くないなと思ってお言葉に甘えることにした。
店内に入ると本当に広くて、天井もとても高い。
明らかに外観とは異なる中の広さと天井の高さ、蔵書量の多さ、その空間魔法の凄さに呆気に取られてしまった。
上階には螺旋階段で上がっていくらしく、要所要所に休憩スペースがある。
購入した本を読みながら飲食できるエリアなんかもあり、ゆったりと寛いで過ごすのも楽しそうだ。
見たい蔵書のエリアへは、店員さんが店内の簡単な説明なんかをしながら案内してくれる。
辿り着いてみても蔵書量の多さに僕は目移りするばかり。
兄様達が店員さんに普段僕が読んでる蔵書のタイトルや専門書の作者、好みの傾向等を伝えオススメの物と普段手に入りにくい物などを選んで持ってこさせてくれた。
兄様達が僕の読んでるものや好みの本を完璧に把握していて驚いた。
でも先回りして僕が選びやすい様にしてくれる様子を見て、もしかしてその為に把握してきてくれたのかもしれないと思い、とても擽ったい気持ちになった。
僕が選んでる間兄様達はずっと僕の髪を梳いたり、頭や頬を撫でたり、頭や顔にキスしたりを僕の邪魔にならない様にしながら、ずっと繰り返していたみたい。
選ぶのに集中してて所々本の内容の記憶しかないけれど、意識が本から戻ると必ずどこかに兄様達が触れてたし、普段もそんな事が良くあるらしく、そんな時はたまに父様と母様が兄様達に呆れて文句を言ってくる位ずっとしてるみたいだから(なんか注意じゃなくて、文句って感じなんだよね。内容が。)、かなりの確率で今回もそうだっただろうと思う。
かなりの時間をかけて10冊ほどの購入を決め、店員さんに邸に届けてもらえるようにお願いする。
担当してくれた店員さんの顔がほんのり赤くなってたから、もしかしたら僕の選ぶのが遅すぎて疲れさせてしまったのかもしれない。
申し訳ない。
最後に笑顔でお礼を伝えると、更に赤くなってしまった。
もう帰るので、ゆっくり休んでください。お手数お掛けしてすみませんでした、と心の中で謝る。
貴族が平民に無闇に謝るのは良くなくて、彼も仕事だからと口に出すのは我慢した。
そういえば、店内には僕達以外のお客さんいなかったな。
平日の午前中だからかもしれない。
とても人気のある書店だと聞いているし。
本選びに午前中いっぱいをかけてしまったので、そのまま昼食をとりに行くことになった。
着いたのは貴族の間でも予約が取れなくて有名な元宮廷料理人のお店だった。
立派な門を潜り店内に入ると、廊下から直接個室に通された。
調度品や室内の設えも上品で、流石人気店だと感心する。
他の客の目に触れずに辿り着くこの部屋は、もしかしたら普段は王族等を通す部屋なのかもしれない。
サーブに来る固定の店員以外はずっと僕達3人だけで、外での食事にも関わらずマナーも気にせずにいつものように兄2人に給餌される。
たまに僕からの給餌も強請られて、恥ずかしいながらも丁寧にカトラリーを使って兄様達の口に運んだ。
その後は宝飾店に連れていかれて、僕は宝石の善し悪しは分かるけど、好みのものとか流行りのデザインとかになると良く分からないので、兄様達の選ぶ様子をただ眺めていた。
宝石のキラキラで、いつも以上に兄様達が眩しい。
あれこれ付けられたりしたけど、結局兄様それぞれとお揃いのカフスとブローチになった。
「本当は指輪がいいんだが、これからまだサイズも変わるしな…」とか、「レティがもう少し大人になって意味が分かるようになったら、この石を使って作ったピアスを片方ずつ…」とかすごーく真剣に選んでた。
ここは貴族御用達で王族も利用する宝石店だからお値段も高いし、選ぶのも慎重になるよね。
お金を使って経済を回すのも貴族の務めと言えど、貴族の資産は基本領民からの税収。
うちはそれ以外からの収入源が色々あるけど、領民達の納めてくれてる税も含まれているのに変わりはないし、兄様達はきちんとそういった事も考えて慎重に選んでるんだろうと思う。
僕も日々気をつけて感謝しながら生活しよう!
その後も貸し切ってくれたらしい人気のカフェに連れて行ってくれたりと楽しく過ごして、そろそろ邸に帰って夕食かな?と思ってたんだけど。
馬車が着いたのは邸ではなくて、他国の王族も宿泊利用する高級宿だった。
不思議に思って兄様達を見上げると、「王都にタウンハウスがあるからここには来たことないでしょう?」とミー兄様が色気を乗せた笑顔で言って、「明日はここから学園に行く。今日1日。明日目が覚めるまでずっと3人だけだ」とディー兄様が悪戯が成功したという様な魅力溢れる笑顔で言った。
明日目が覚めるまで。
今までと違う特別な夜に、兄様達の笑顔に、心臓が大きく跳ねた。
きっと僕の顔は耳まで真っ赤だろう。
そんな僕に両側から交互にキスを落として、2人に手を繋がれながら挟まれる様にして宿に入った。
支配人だと言う壮年の男性が直ぐに恭しく宿の中で一等上等な部屋に案内してくれた。
ここは本当に王族が泊まる時の部屋だ。
今は昨日の大会もあって他国からの来賓も少なくない数王都に滞在しているはず。
王宮に宿泊しない方たちは必然的にこの宿に泊まってる筈だから、今日偶然この部屋が空いていた、とは考えにくいけれど…と不思議に思う。
支配人さんも説明の後退室して、3人だけになった室内。
兄様達を見上げても説明してくれそうにはない。
とりあえず夕食まではここでゆっくりしようと促されたソファーに、僕は大人しく座った。
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