BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

庚寅

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5歳の僕 ♢学園編 2♢

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「レティ、どうしたの?疲れてしまった?」



ミー兄様の声でハッと気が付くと、ペンを握ったまま書類を書く手が止まっていた。
上を見上げると、僕を膝に乗せたミー兄様が頭上から覗き込むように心配そうな顔を覗かせている。
副会長席に座って書類を片付けていたディー兄様も、隣の会長席の第1王子も他の席の生徒会メンバーの人達までこちらを心配そうに見ていた。
そんなに長い時間止まってたのかな。
遅刻してきた上に上の空で申し訳ない…



「違うんです、少し考え事をしてしまって…」

「……そう。ルー?」




僕の返事に納得出来なかったのか、僕の頭を撫でながらルーに報告を促す。
ルーは僕をチラリ、と見て僕の顔色を確認した後、ミー兄様へ報告する為に口を開いた。



「本日、食後のお昼寝の後の授業が学園長様の特別授業だったのですが、それに参加しに来られたある方が是非にとと言う形で王宮にご招待下さいまして。その中にあるとある訓練所にて見学をされましたので、それで些かお疲れなのではないかと。」



学園長さんの特別授業に頻繁にゲストが追加参加するのは、秘密とされているからか、ルーが要所々々を伏せつつも絶妙に隠せていなさそうな回答をした。
父様はもちろん知ってるし、恐らく兄様達も知ってるんだろうけど。
それに第1王子も王宮の関係者や国王陛下、学園長さんから話を聞いていそうだ。
今伏せたのは他にも生徒会メンバーの人達がいるからなんだろうけど…。
なんだろう。伏せてくれたのに何となく察せてしまう、この何ともいえない微妙な感じは。
もう学園長室に飛び入りゲストが来てる事より、課外授業で王宮の施設のどこかに行ってる事の方が大事おおごとだと思うんだよね。
何でこっちは秘密って言われてないのか…。



「そう…」



ルーの言葉を受けて、ミー兄様が小さく息を吐いたのが聞こえた。
僕の視界の端で、ディー兄様が眉間に皺を寄せて王子をめつけてるのが見える。
王子は片掌で額と目元を覆い、大きな溜息を付いている。
兄様に睨まれてショックなんだと思う。
しかし、王宮への見学が当たり前かのように、楽しかったから誰も悪くないですと厚顔無恥とも取られかねない下手なフォローも入れられ無いので、僕は「ご迷惑掛けてごめんなさい」と兄様に謝ることしか出来なかった。
王宮に行くことになったのは王子が悪い訳じゃないのに、フォローもできない。
兄様に睨まれる事になってしまって心底申し訳ない…。



「会長、本日はもうレティと一緒に帰ってゆっくりさせたいのですが宜しいですか?」

「ああ、そうだな。そうしよう。
後は頼みましたよ、殿下」

「えっ、あの、僕、大丈…」

「「駄目だ(よ)」」



言うが早いか、ミー兄様はサッと僕を腕に抱き抱え、ディー兄様もスッと席を立ち、ルーは既に扉を開けてスタンバっている。
申し訳なさで部屋の中を振り返ると、会長含め生徒会メンバーの皆さんが優しい笑顔で手を振ってくれていた。
迷惑ばかり掛けているのに、何て優しい人達なんだろう。
ミー兄様の腕の中から感謝と謝罪を込めて頭を下げたけど、直ぐに扉が閉まったので皆さんに伝わったかは分からなかった。



そのまま馬車に乗り、邸に向けて帰る。
僕を気遣ってか、帰りの間中リディは大人しく1人で歩いたり座ったりしていた。
邸に帰り着くと、そのまま僕の部屋のベッドに直行された。
リディの姿は見えないから、途中で使用人が引き受けたのだろう。
ルーにホットミルクの用意を言いつけた兄様たちが、ルーが部屋を出るや次々に僕の制服を剥ぎ取り楽な室内着に着替えさせていく。
最近は僕の着替えも兄様達が全部するようになっていて、どこにどの服が入っているかもバッチリ把握しているらしい。
ここで下手に遠慮や抵抗をすると、と言って恥ずかしい事をさせられたりされたりするので、僕はされるがまま。
2人に素直に従う。



着替え終わった丁度のタイミングでルーが兄様達の紅茶と、僕へのホットミルクを持って寝室に入ってきた。
サイドテーブルでセッティングしながら手際よく僕達に手渡していく。
蜂蜜入のホットミルク。
口をつける所を、ルーがジッと息を詰めて見てくる。
彼にしては珍しいあからさまな視線に、もしかしてお昼寝の時の先生が入れたものと張り合っているのかもしれないと気が付いた。
僕の専属執事としていつも尽くしてくれる彼からすれば、主の好みは専属である自分が1番把握していなければ、と思っているのかも知れない。
休みも要らないとばかりに常に僕の傍に控えたがるストイックな彼なら、主の事を1番把握しているのが当たり前と思っていそうだ。
僕が口にするのに適温なそれを、ゆっくりと数口飲み込む。
僕の1番好きな銘柄の蜂蜜が、丁度いい甘さで入っていた。
いつもありがとうの気持ちも一緒に込めて「美味しいよルー。ありがとう」と伝えると、僕にしか分からないらしい、はにかんだ笑顔を見せてくれた。



その後も残りを数口に分けながら味わって飲み干し、夕食まで少し眠るように兄様達に言われ、横になる。
両側から抱きしめてくれる兄様達の温もりで、すぐに眠気が訪れる。
それに逆らわずに身を委ねると、額と頬に兄様達の唇の感触がした。
それを合図に僕は深い眠りに落ちる。
僕が眠った後、ルーに詳しい今日の出来事を報告させた兄様達が、話し合いをしているのにも気が付かない程。






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