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5歳の僕 ♢学園編 2♢
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しおりを挟む学園長さんに手を引かれて王宮の通路から各所に飛べる転移魔法陣に乗り、魔道具研究所前の敷地に到着した。
王宮からは少し離れた独立施設。
同じ王宮の敷地内でも、馬車か転移魔法陣でないと遠くて行き来出来ないんだとか。
この各所に移動するための魔法陣も関係者以外は使ったらダメなんだって。
僕が使っていいのか聞いたら、レティ君前から関係者だから大丈夫って言われた。
僕いつ関係者になってたの??
そのまま門の前の衛兵さんからの検閲もなく、スルッと中に案内される。
僕のここ(王宮)での立ち位置が、今日1日で全然分からなくなってしまった。
子供だから大丈夫…って事ではないよね?
大国だから警備とかには厳しい筈なんだけど…
キョロキョロしながら入口を潜り、迷いなく最奥を目指す学園長さんに手を引かれるまま歩き続ける。
通路にいる所員の皆さん全員が立ち止まって挨拶してくるので、僕は立ち止まることは出来ないけど(学園長さんが手を引いたまま歩き続けてるから)、なるべく皆さんに会釈で返す。
一際大きくて立派な扉を潜ると、規則的に並べられてる大きなテーブルの上に完成していたり、部品しかなかったり、組み立て途中だったりと色々な魔道具が散乱していて、それに関係しているであろう魔導回路図も同等かそれ以上の数が無造作に置かれていた。
いや、作ってる人達からしたら規則性のある置き方なのかも知れないけど…
そんないくつもある大きなテーブルのあちこちに見知った顔も見られる。
学園長さんとの特別講習に交ざりに来る人達だ。
僕に気がついてその内の数人が手を振ってくれる。
それに振り返して応えていると、その周りの人達が振り返った。
うっ一気に視線が…
「皆、今日からこのレティ君が偶にここに来るからの。
質問や意見が聞きたい者は、レティ君の無理のない範囲を弁えて順番に。
必要以上の接触は禁止。
破ったら儂からキツーいペナルティ付けるからの。
言うまでもない事とは思うが、くれぐれも失礼の無いようにな」
所員の皆さんが元気に返事をしてるけど、僕そんな大層な人間じゃ無いんですけど…
僕が疎まれないように、学園長さんなりに気を使ってくれたんだろうか。
それにしては大袈裟な気がするけど、僕も勉強させてもらう身だし、皆さんのお邪魔にならないようにしなくちゃ。
「うむ、ではレティ君には今皆が掛かってる魔道具を順番に説明しながら見て回って貰おうかの。
黒の君とレティ君の執事君にはそっちの扉が応接室に繋がっとるから、ちとそっちで待っててもらえんか?
さすがに開発中の魔道具の詳細までは見せられんのでな。
心配せんでも一通り見て回ったら、すぐレティ君と一緒にそっちに行くでの」
学園長さんはやんわりと有無を言わせない流れで、近くにいた所員の1人にリディとルーを隣室に案内させ、また僕の手を引いて早速各テーブルを回り出した。
何故かその後ろを、僕用であろう座面の高い椅子を持って所員さんがついてくる。
1番入口側のテーブルに近付くと、魔道具と図面の置かれた正面を所員の皆さんが空けてくれる。
そこに座面の高い椅子が置かれ、戸惑う間もなく学園長さんが僕を抱えあげて、椅子に座らせた。
うん、高さピッタリすぎてちょっと怖い。
作業用のこの大きなテーブル、もちろん大人に合わせた設計だから、僕には高さがあり過ぎて覗き込めない。
だからこその専用椅子なんだろうけど、皆さん立ってる中で僕だけ座ってるのが何だか申し訳ない。
いや、だからって誰かに抱えてもらいながら見るわけにもいかないし、しょうがないんだけど。
そう、しょうがないんだ、僕が気まずいのを我慢すればいいだけ。
ここで駄々を捏ねる方が迷惑がかかるっっ。
ぐっと恥ずかしさを堪え、テーブルの魔道具と図面に目を向ける。
この魔道具は生活用の魔道具みたい。
まだ理論に従って大まかな図面と、初期の試作品を作ってる所みたいだ。
図面の下にあるのが魔導回路図かな?
側にいた研究員さんが説明をしてくれる。
この魔道具の担当チームのリーダーさんかな?
「この魔道具は、研究所内で今1番新しく作り始めた魔道具です。
私達のチームは、生活用の魔道具を専門に開発していて、これは先日チーム内で提出させた計画案の中から選ばれた物でして、理論上は可能であると判断した為、先日から試作品を組み上げています。
今回の第一目標としてはーーーー」
うん、彼らがいつも僕達の日常をより快適にするよう頑張ってくれてるみたいだ。
まだ着手し始めた所だから理論との相違点なんかの目星を付ける段階にもいけてないけど、これが完成したら貴族だけではなく、庶民家庭でも楽に家の中の室温調整が出来るようになるって物みたい。
貴族の邸と違って市井の一般的な家は2階建てで、キッチンや水周り関係も含めて大体5~6部屋ほど。
貴族の邸に使用されている物をもっと低品質の物で低出力にすれば、コストも大幅に下がり一般庶民の間でも購入、使用出来るようになるだろう、という考えみたい。
素材を見直して色んな組み合わせで、どの魔道回路図を組み込めばより低コスト高品質になるか、をこれから調査していくみたい。
元になってる物があるとはいえ、素材や出力範囲を変えるだけでも全部見直し、組み直しで、比較対象がある分イチから新しく作り上げるよりもある意味大変かも。
でもこうやって真剣に取り組んでくれる人がいるから、みんなの暮らしが豊かになるんだよね。
僕は終始その説明(途中から凄い熱弁になってたけど)を楽しく聞かせてもらった。
またある程度の目処が付いたらご意見下さいって言われたけど、それも前世の僕の庶民の感覚で答えれば大丈夫かなと思う。
所員以外からの一般目線の意見も聞きたくなるよね!
だから快く、もちろん僕で宜しければ、って答えておいた。
説明してくれたリーダーさん(多分)は顔を真っ赤にして潤んだ目でありがとうございますって連呼してた。
熱意が凄い!
その勢いのまま手を握られそうになったけど、学園長さんにすかさず叩き落とされてた。
凄い勢いだったから、少しビビってた僕はちょっとホッとしちゃった。
そのあとも各テーブルで色んな製作中魔道具の説明を聞かせてもらった。
顔見知りの人達は、割と気軽に僕に意見を聞いてきてくれる。
その度に思ったことなんかを話して、それについての質問がまたきたりして、他の人の考え方なんかも沢山聞けて、凄く勉強になった。
時間もあっという間に過ぎてしまって、結局帰る時間になるまでリディとルーを放ったままの状態になってしまい、隣の部屋に迎えに行ったらリディが少し拗ねてたけど、宥めて何とか許してもらった。
これからまた研究所に通う時のリディの事も考えなくちゃかな?
それから辞去の挨拶をしに行ったら、陛下の執務室に通された。
僕なんかが入って大丈夫なのかな…
中には宰相様もいらっしゃって、執務室の中に備え付けられていたソファーセットには豪華なお菓子や飲み物が沢山並べられてて…
そのまますぐ帰りますって言えない空気で、放課後の生徒会の仕事の時間が丸々陛下達とのお茶会の時間になった。
帰宅時間が迫ってきた頃、僕がここにいるのを誰から聞いたのか父様が迎えに来てくれた。
陛下のことすごーく睨み付けてたけど、うちの家族、王族に対して厳しすぎない?
本当に父様も兄様も大丈夫なの?
父様の登場であっさりと解放された僕とリディとルーは、そのまま父様の使ってる馬車で家に直接帰宅したんだけど…。
帰宅した後の兄様達を宥めるのも大変だったんだ…。
今度行く時はその辺もどうにかしないと行く度にこれじゃ大変だなあ…。
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