BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

庚寅

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4歳の僕 ♢学園編♢

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レクリエーション当日。
兄様達と、ルーと一緒に集合場所である学園敷地内の、厳重に警備されている建物の側の広場に向かう。
今日は教室での朝礼はなくて、ここで1、2年生一緒に先生方から朝の挨拶と今日の説明を受ける。
その後にレクリエーションを行う場所に、全員で一気に行く。
移動方法は、世界でも数箇所にしか設置されていない、大型転移魔法陣に乗って、だ。


広場の奥にある、厳重に警備されているこの建物の中にはとても大きな転移魔法陣があって、国内ではここと王宮の中にしかない、集団移動用の大掛かりな転移魔法陣だ。
他国には、恐らくそれぞれの統治者の元にあるのみだろう。
本当にこの学園は規格外なんだな、と改めて思う。
本来この集団移動用魔法陣は、軍事的な意味合いで使われることが多い。
ゲームでは戦争なんて起こしてるところはなかったはずだが、もしどこかの国と開戦、となったとき、この魔法陣を使って王宮から直接多くの軍隊を一瞬で戦地になる自軍の領土に移動させるのだ。
もちろん、どこにでも移動できる訳ではないし、移動させる数が多ければ多いほど、発動時の条件が難しくなる。
とても重要なものなので、王宮内にある魔法陣はもちろん、ここの建物も王宮騎士団と、王宮魔道士団の人が連携して常に一定数の人員で周囲も中も固めている。
そんなすっごい魔法陣を、授業の一環で使用してしまうのだ。
それだけ国力もあり、この学園に力を注いでいるんだな。



無事に広場に集合し、今はディー兄様の腕の中。
お昼ご飯は学校側からお弁当が支給され、学校指定の収納魔法陣付きの鞄にそれぞれが収納して現地で班ごとに食べることになっている。
お弁当って発想があるのも、ああ、日本のゲーム世界だな~って思う。
中身はお貴族様仕様だけどね!
収納魔法陣付きの鞄は、転生モノや転移モノでよくある、別次元空間と繋げた中にそれに見合った容量なら質量法則無視して入れていけるアレだ。



この指定カバン(野外授業を目的としたリュック型)は、内容量は騎士を目指している人達の野外授業などで動物や魔物を狩るのも視野に入れているので、素材等も入れられるように大きめに設定されている。
10帖の室内に天井までいっぱいになる位の量だろうか?
大型魔獣が解体せずにそのまま5体ほどならギリギリ入る位、と言った方が分かりやすい?
まあ、とりあえず指定カバンにしてはかなりの容量、という事だ。
騎士や、稀に冒険者になった者も割とこれを使い続ける人は多いのだとか。
何せ、容量もそこそこ多く、質もいい、機能性もいいので、これよりいい物、となるとかなりいいお値段のものになる。
そこまでして買い換えるのは、相当の腕前か、それ程に出世した人なんだそうだ。
ちなみにこのカバン。
学園のマークが刻印されているので、これを持ってるだけで信頼度がかなり高くなり、冒険者として依頼を受ける時にもかなりいい待遇を受けれるのだとか。
それ程にこの学園は知名度も信頼度も高く、技術水準も高いって事。
あと…まあ、持ってるって事は貴族って事だから、それもあるのかもしれないけど。



そんな高性能カバンを背負って、世界屈指の魔法陣で向かう先は、国が保有地として管理している『聖魔の森』。
うん、正にって感じのゲームっぽいネーミングだね。
王国の東側にある広大なこの森は、森の奥深くに聖獣様や多くの精霊たちが生息している。
精霊は普段姿を消して割とどこにでも漂っているらしいけど、聖獣様は殆どがここにいて、しかもいるのが広大な森の奥深くだから、その姿を見ることも奇跡位の確率でしか無いし、ここに入るにも国に許可を取らないといけないので、この国の殆どの人が一生見ることが叶わない程の存在だ。
そんな存在がゲームでは隠しキャラ。
条件さえ満たせば、偶然にも出会えてしまうし、その聖なる存在も攻略できてしまう。
主人公って本当に凄いよね!


僕も本物を一目でいいから見てみたいけど…モブの中のモブなのだから期待しても無駄だろう。
余計な期待はせずに、今日は兄様達とのピクニックを楽しもうと思う!



4人で開始時間を待っていたら、第1王子がにこやかにこちらに歩いてきた。


「やあ、皆おはよう」


「……」
「パスティリード殿下、おはようございます!」
「…殿下、おはようございます」


ディー兄様は目を眇めて無言、僕が挨拶して、ミー兄様も温度のない笑顔を貼り付けて挨拶をした。
ルーは平民だからか声を返さず、最敬礼をして頭を下げている。



「ああ、頭を上げてくれ。
ここでは礼は不要だよ。
今日は僕も君達と一緒に行くことになった。
宜しく頼むよ」



満面笑顔の王子。途端冷たい空気を醸し出す兄様達。
温度差が凄い。



「……俺達の申請には、殿下は入れてなかったはずだが?」



兄様が聞いた事のない程に低い声で殿下に問いかける。
兄様、いつも思うけど本当にそんな感じで大丈夫なの?
兄様の将来に影響しない??



「ああ、申請には残念ながら含まれていなかったが、教師陣達とどこの班に振分けるのかとなった時、ここしかないという結論になった!」




兄様の不機嫌さをものともせず、王子は笑顔を崩さずに説明してくれた。
そっか、確かに王子と同じ班になれるのは、高位貴族で、王子の補佐まで務めてる兄様の身内で固められてるここが1番安全だよね。



「……チッ」



納得している僕とは違い、兄様達は明らかに不満そう。
ディー兄様、だから王子に舌打ちはダメですってば!
学園側の決定だし、相手が王子だから拒否はしないけど……
正直、2人ともすっごく機嫌が急降下してる。
王子に言われて顔を上げたルーもいつも通りの無表情だけど、何だかいつもより冷たい空気を感じる。
ダメだ、誰も王子を歓迎しようとしてない。
僕なんかが失礼かもだけど、幼子としての利点を活かそう!
無邪気に空気読めませんよ作戦だ!


「殿下、今日はよろしくお願いします!
楽しみだね、ディー兄様、ミー兄様、ルー」



皆それぞれに声を掛け、重たい空気に引き攣りそうになる表情筋を宥めながら笑顔を向ける。
あ、良かった、少し空気が和らいだ!
ディー兄様が頭を撫で、ミー兄様も頬を撫でてくれる。
ルーも他の人には分からないみたいだけど口角が僅かに上がってて、笑顔だ!
何とか問題なくみんなで行けそうな空気になった所で、時間が来て整列の声が掛かる。
授業とはいえ、滅多に行くこともできない貴重な場所でのピクニック。
未だに見つけることが出来ていない主人公を今日もさりげなく見回し探しながら、ルーの腕の中に移された僕は、ウキウキした気持ちを隠せないまま列に並んだ。







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