BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

4歳の僕 ♢学園編♢

〇〇を見守る会〜出会い編 (会員目線)

春うららかに、桜も満開な日。
王立学園に天使が入学してきた。


入学式に参加していた全ての人間の視線を奪いながら、天使は学園の制服を身にまとい、他生徒と同じように式に臨んでいた。



式典会場での式が終わり、在校生の授業がない中、生徒会室にて生徒会の仕事を黙々とこなす面々。
昨年度のメンバーからの引き継ぎをしてすぐに、卒業式、入学式と続き、片付けないといけない仕事は山の様に残っていた。
それぞれの分担の書類に集中していた時、生徒会室の扉がノックされた。


「レティシオ様をお連れしました」


抑揚のない事務的な声だ。それに副会長が応え、招き入れる。
その整った顔にも表情のない、我が学園の制服を纏った人物が、大事そうに、腕に抱えていたものを副会長に渡す。



そこには輝かんばかりの美貌の天使がいた。
淡く儚い自身の色彩を学園の制服で包み、安らかな顔で寝入っている。
閉じられながらも大きいと分かる目元に、繊細な鼻筋、柔らかな色彩の髪に、小さく美味しそうに色付いた唇は、今は薄く開いている。
生徒会室にいた全員が息を飲み、その天使を凝視した。
呼吸も忘れ、ただただ見入ってしまう。



副会長は俺たちになんて目もくれず、天使を抱いたまま、その天使の為に設えられた幅広のソファーに共に横になり、その腕の中に抱き込んだ。そのまま、恋人にでもするかのように、頬を撫で、髪を梳き始める。
普段の横柄な副会長からは想像もできないその甘やかな行為に、また別の意味で全員が固まる。
しかし、誰も天使の眠りを妨げまいと、僅かな音も立てなかった。
連れてきた生徒は、話に聞いていた、天使の専属執事だろう。
いつの間にか気配を消し、主の傍に控えるように立っている。
歳は我々とさほど変わらないと聞いているが、随分と高度な教育をされているようだ。
さすがは、マガリット公爵家の執事だ。


その後暫くは天使を起こさないように、その様子を全員が目に焼きつけるように眺めていた。



暫くして天使が身動ぎをすると同時に、涙をその繊細なまつ毛の間から零した。
副会長が、自身の唇でその柔らかそうな頬や目元に口付け、吸い取っている。
その余りにも衝撃の行動に、室内全員が再び固まった。
何だそれは、本当に恋人同士の様ではないか!!!
この時、副会長以外の生徒会メンバー全員が同じことを思ったと思う。
その後副会長が指で頬を拭っていると、天使がゆっくりと目覚めた。
寝ぼけている様子も酷く愛らしい。
副会長が状況を説明すると、慌てたように俺たちに謝罪してきた。
内面も天使そのものだ。


天使の優しい訴えで、無事俺たちも紹介して貰えた。
天使と出会えた今日は、人生最大の幸運に恵まれた日だ。
幸せな気持ちで目の端に天使を捉えながら生徒会の仕事に戻り片付けて程なく、昼休憩の時間になった。
それと同時に、また扉がノックされる。
声掛けに応えて招き入れると、今度は副会長のすぐ下の弟君だった。
副会長もだが、こちらもかなりの美形。
しかし、纏う空気は副会長とは違う種類の油断できないものだった。
この兄達と、あのような天使に血の繋がりがあるとは、世の中とは不思議だ。



天使達を見る俺たちの視線に気が付いた副会長の大きい方の弟は、こちらに来て、今日から自分も生徒会のメンバーに入るのでよろしくというような挨拶を、にこやかにしてきた。
俺達も笑顔でそれに応える。
副会長よりは、付き合いやすそうだと安堵した空気が流れた時、声を落とし、俺たちにしか聞こえない口調で、天使に少しでも何かすれば許さない、と脅しをかけられた。
入学してきた初日の新人メンバーの吐くセリフではない。
しかし、その迫力に圧された俺達は、無言で首肯を繰り返す。
それを満足そうに見遣って、新人はある提案をしてきた。



「私達の天使は、あの通り小さく、とても可愛い。
しかし自身の魅力を理解していなくて、危険な事に巻き込まれないかとても心配なのです。
そこで、先輩方を信用して、レティを見守るのを手伝って頂きたいのですが、如何ですか?」


その、保護者の合意の元に堂々と天使を見続けられ、しかも守るという大役も得られる提案に、一も二もなく全員が力強く頷いた。





その日、『天使を見守る会』が、生徒会メンバー主体の元、結成された。
もちろん、保護者である兄達の監視の元で。