上 下
22 / 80
4歳の僕 ♢学園編♢

4歳の私の弟(ミスティラリ目線)

しおりを挟む




マガリット公爵家。
この国の暗部を受け持つ、この国の裏の顔。
我が家はそんな、王家と表裏一体となってその時代の王に直接仕えている。
我が家の裏の顔を知るのは王国内でもほんのひと握りだが、それを知らなくても我が家は揺るがない地位にいる。
私の可愛い弟、レティは何も知らないけれど、温厚そうに見えるお父様も、その暗部の責任者の席に就いている。
でもレティにはこれからも教える気はない。
レティにはいつでも日向の真ん中に立っていて欲しい。
柔らかい真綿の様な愛情で優しく包んで、レティがそこでずっと微睡んでいられるように。



代々、その席には我が公爵家の嫡男が就いているが、私の兄のカディラリオに裏の顔は出来ないだろう。
それは兄本人も分かっていて、随分前から、兄は公爵家次期当主として表の顔を軍事面で、私は公爵家次男として文官を経て、その裏の顔を引き継ぐ事を話し合って決めている。
これで、レティを表でも、裏でも、ずっと守っていける。
兄とは特段仲が良くも悪くもないが、レティの関わる事に関してだけは、いつもピッタリと息が合うのを感じる。
きっと兄も同じだろうと思う。
兄も私同様、他人には欠片も興味を持たないからだ。



唯一の例外は、両親と、レティだけ。




私は、生まれた時から容姿にも恵まれ、家柄にも恵まれ、特段努力しなくても何でもできた。
こちらから何もしなくても周りは勝手に擦り寄ってくるし、煩わしいと跳ね除けても少しの問題にもならない。
我が家と揉め事を起こしたい者など誰もいないのだ。



生まれて成長し、自我が目覚め、社交をする頃にはすっかり私の心は冷めきっていた。
何にも心が動かない。
ただただ、モノクロの景色を眺めているような毎日だった。



そんな日々をただ流れゆくままに過ごしていたある日、両親と共に王都に帰ってきたレティを見た瞬間、初めて世界が色付いた。
比喩ではなく、本当に。
その淡い色彩の可愛いらしい存在の中に様々に煌めく瞳の色たち。
初めて何かを見て美しいと思った。
初めて感動に心が震えるという事を知った。






レティは私の太陽。






レティがいなければ、私はただの生ける人形だ。
私の人生はレティの為に。




ずっとずっと、傍に在り続ける為に、人生を賭す。
レティが初めて話しかけてくれた時、自然と心にその気持ちが湧き上がった。
とても温かく、しっくりと自分の中に馴染んで溶け込んだ。
息をするように、ただただレティを愛するだろう。





その為に、レティの傍に常に在り続ける為に、私がしなくてはいけないこと。




武芸は兄にはどうやっても適わないが、それ以外の面では私にも十分に分がある。
だからこそ、表と裏に分かれる事に決めた。
レティの為ならば、きっとどんな汚物にもまみれるだろう。
レティを守る壁は高ければ高い程。
厚ければ厚い程良いからね。




先ずはこの、レティを不躾に見つめるクラスの奴らから。
それから徐々に学園内全ての人間を。
これからの手慣らしには丁度いい。




僕のレティには指1本。
少しの心にも触れさせないよ。



しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

処理中です...