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3歳の僕

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「レティ」


「はい、父様」


「確かにレティの言う通り、必須科目の中にレティにはまだ学ぶことのできないものがある。」


「…はい」


「それでも、もしそれも問題にならない、と言ったら。
レティはどうだい?
兄様達と一緒に、学園に通いたいかい?」



もし、同じ授業を全て一緒に受けられなくても問題がなかったら…



「…はい!
僕、兄様達と一緒に、学園に通いたいです!!!! 」



僕は考えるまでもない答えを口にした。
だって、無理だと諦めていた兄様達との学園生活。
あのゲームの世界を間近で見られるんだ。
それってつまり、兄様達が攻略されるのもすぐ近くで見てしまうって事だけど…
それでも、兄様達とあの大好きなゲームの世界を一緒に体験できるなら我慢できる!
あの数々の美麗スチルを生で見れると思えば、楽しい事だと思い込める!



だって、近くで見ていようといまいと、兄様達が主人公に攻略されるのは変わらないのだから。



それならせめて、少しでもたくさん、兄様達の傍に。




無理だと諦めて、学園祭でゲームの世界を疑似体験できて、満足だと自分に言い聞かせていたのに。
微かでも可能性が見えてしまうと、もっともっとと、求めてしまう。
なんて僕は強欲なんだろう。


また自分の醜さに自己嫌悪し始めた僕の意識を、満面の嬉しさ滲む笑顔で抱き締めてきたミー兄様の温もりが引き戻した。
正面に座る父様も、それなら入学しなさい。何も心配要らないから、と優しい微笑みで包み込んでくれる。



「学園に通ったらレティとの時間が削られるとばかり考えていたのに、レティと学園でも一緒に居られるなんて!! 夢のようだよ!」



兄様は本当に嬉しそうにぎゅうぎゅうと僕を抱き締めながら、旋毛つむじやおでこや耳や頬に、たくさんのキスを落としてくる。
それが、とても嬉しくて、擽ったくて。
僕の方こそ夢みたいだって、僕からもぎゅっと抱き締め返した。
さっきまで感じていた不安なんて、もう少しも残っていなかった。







その日の夕食の時に、僕の学園入学の話が父様から改めて全員にされ、
まだ入試すら受けてないのにもう合格したかのような騒ぎになった。
ミー兄様にはまた抱きしめられ、ミー兄様同様とても喜んでくれたディー兄様からも激しい抱擁とキスの雨が…
あれはもう、嵐と言ってもいい程だった。
母様は、とても喜んでくれた反面、漸く僕を独り占めできる時間が増えると思ったのに、と少しだけ肩を落とされていた。
ごめんなさい、母様。


その日は夕食が終わってから夢の世界に行くまで、いつも以上に兄様達がくっついていてくれた。
いつもの状態の上があるんだと、初めて知った。
何だか幸せ過ぎて、僕に優しい世界過ぎて怖い。
何よりもこの幸せが日常になっているのが一番怖い。



僕は、兄様達が主人公を選んだ時、果たして耐えられるだろうか…


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