BLゲームの本編にも出てこないモブに転生したはずなのに、メイン攻略対象のはずの兄達に溺愛され過ぎていつの間にかヒロインポジにいる(イマココ)

庚寅

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3歳の僕

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生徒会室の、恐らく自分の仕事机だろう場所で優雅にお茶を楽しんでいた第1王子殿下は、入室してきた僕たちに気が付き、こちらに顔を向けた。


「誰かと思ったら、カディラリオか。
一緒にいるのは弟君…………………………」



顔を上げてディー兄様と、その隣のミー兄様を認識しながら声を掛け…ている途中で僕と目が合った瞬間に、言葉と共に動きが止まった。
こちらを見たまま瞬きもせず、息をしているのかも怪しい程にピクリとも動かない。
その王子様の中の王子様、といった高貴な雰囲気漂う正統派イケメンは、止まったままでいるとまるで精巧な人形の様に整った顔立ちだ。


さすが、兄様達の次に人気のある攻略対象者だ。



殿下の視線を辿り、僕と目が合ってるのに気が付いたディー兄様が、僕の頬を優しく包み促す様にして、再度その肩口に顔を伏せさせた。
僕と目が外れた殿下が、ようやく金縛りが解けたかの様に動き出した空気を感じる。
僕の存在感が無さすぎて、幽霊にでも見えたのかもしれない。
幽霊と目なんかあったら、そりゃ驚きと恐怖で固まって動けなくなるよね。
普段は家族や気心知れた使用人達に囲まれてるから、僕がどれ程の存在感の無さかいまいち掴めてなかったけど。
そうか、僕の存在感、幽霊並みか…。
もうモブ通り越して、逆に公式にすら気付かれてない程の隠れキャラクオリティだな。
ははは、笑え………ないよ、さすがに。
ここまで薄いとは思ってなかった。
さすがに辛いけど、今度から無闇に知らない人を驚かさない様に気をつけなくちゃ…


そう心の中で自分の存在の薄さを再確認していると、今度はずいぶんと近くから第1王子の声が聞こえた。


「カディラリオの弟君かい?
今日の学園祭に連れてきたんだね。
最近鬼のような顔をしながらも遅くまで手伝ってくれてたのはこの為か…。
ぜひ、私にも紹介して欲しいのだが?」


「…………」



王子の呼び掛けに何も応えないディー兄様を仰ぎ見ると眉間に皺を寄せて、ものっっっすごーく嫌そうな顔をしていた。
目線を隣のミー兄様に移すと、こちらは笑顔なのに凄く不機嫌そうなオーラが…。
そりゃこんな美形美人なミー兄様見たら、紹介して欲しいだろうな。
でもディー兄様は家族想いだから、大切なミー兄様を容易に人に紹介したくないのかも…
ミー兄様も紹介されるの嫌そうだし…でも返事もしないのは将来の君主に対して、どうかと思うんだ。


「ディー兄様…」


不安になりディー兄様を再度仰ぎ見て声をかければ、いつもの柔らかな笑顔を向けてくれ、安心させるように頭を撫でてくれた。
そして、前に視線を戻して深い溜息を吐く。



「……俺の弟のミスティラリと、……………… レティシオだ」


長い溜息のあとミー兄様を紹介して、また眉間に皺を寄せながら、気をつけてないと聞き逃しそうな程にまでボリュームを落とした小さな声で僕の事も紹介してくれた。
社交デビューしていない僕を紹介するのを躊躇ったのかな?
恥ずかしくて弟として紹介したくなかったのだとは、さすがに思いたくない。もしそうだとしたら立ち直れない。


「ミスティラリと申します、殿下。」


ミー兄様が挨拶したのに慌てて僕も王子の方に顔を上げる。
うわ、想像以上に顔が近い!



「はじめまして殿下。レティシオと申します。」




ここで下手な挨拶をしては、家族や兄様達の評価にも差し障るかもしれない。僕は精一杯の笑顔で、今度はびっくりさせないよう、人間ですアピールをした。
何だか王子の頬が赤い。
ミー兄様の色気に当てられたのかもしれない。
色んな耐性がありそうな王子まで赤面させてしまうなんて、さすがミー兄様だ!




「パスティリード・ジル・アイカラリティだよ。
2人ともよろしくね。
ここでは私も一生徒だし、気軽にパスティリードと呼んでくれ。
…レティシオには難しい発音だろうから、ぜひジルと呼んで欲しいな」




王子オーラをキラキラさせながら、そう声を掛けてきた王子は、僕にまで王子スマイルを向けてきた。
さすが正統派イケメンは、笑顔の威力も違うね!
でも…



「あの…殿下、王族の方のみが呼ぶことを許される御名を、僕なんかが口にするなんて恐れ多い事です…」




そう、殿下の名前にあるジル、とは王族のみに許される王族間の呼び名だ。
王族それぞれに付けられる王族用の呼び名で、王族間での認識に使う愛称のような、別称のような、とにかく王族しか使わない名前。
その名前は王族にしか付けられないし、また王族にしか呼ぶことはできない。
それなのに、呼びにくいだろうからと僕なんかに呼んでもいいとは…
正統派攻略キャラ的な善意なのかもしれないが、さすがに王族ではない僕には無理だ。
本人に許されてても、他の人に聞かれたら不敬罪で最悪死刑もありうる!(gkbr)
それなのに王子は何故か笑顔でゴリ押ししてくる。



「だからこそだよ!
レティシオにはそう呼んで欲しいんだ。
その代わり、私もレティと呼ばせて欲しいな!」




いや、僕の呼び方なんてなんと呼んでくれてもいいんだけど…
さすがに困り果てて、ディー兄様に助けを求める様に見上げてしまう。


「…おい、レティを困らせるな。
それに、俺の天使の名前を軽々しく愛称で呼ぶな」


って、えええええ!
兄様、いくらうちが王家とも懇意の大貴族で兄様自身も殿下と親しいからって、それはさすがに不敬すぎるよーーー!!!
僕の呼び方なんて何でも大丈夫ですー!!



「あ、あの、僕の事はお好きに呼んで頂いて大丈夫です。
でも殿下の事はパスティリード様と呼ばせて下さい」


そこは本当にお願いします!!



「…そう、ではレティと呼ばせて貰うね。
私の名前も追々ジルと呼べるように慣れていこうね」



呼べるようになる日なんてきませんよ!
まだ死にたくありませんし!!
もう僕は笑顔を引き攣らせないようにするので精一杯だ。



「所で、ここには学園祭が始まるまでの避難に来たのかな?
まだ開始まで時間があるし、始まるまでは展示も屋台も演し物もやってないからね。
良かったら学園内を案内しよう。
普段は部外者は立ち入れないけれど、私と一緒なら好きに見て回れるよ。」



その王子の言葉に目を輝かせた僕を見て、兄様達は渋々その提案を了承してくれた。






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