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3歳の僕
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しおりを挟む翌日
これ以上ない程に学園祭日和と言えるだろう雲もなく晴れ渡った空を、僕はカディラリオ兄様の腕に抱き上げられたまま見上げた。
この世界、暦の数え方も前世の日本と同じなら、四季や1年を通してのイベント事もほぼ日本と同じだ。
この世界にキリスト教なんて無いのに、クリスマスみたいに聖人の生誕を祝う恋人達の為のような日もあるし、年越しは国を上げてのイベントになっている。
さすがに建国記念日などは違うが、バレンタインもあればホワイトデーもある。
四季も当然のように、春、夏、秋、冬とあり、6月も梅雨とは表現しないが雨季になっている。
夏には海や別荘地でのイベントがあるし、冬休みにはそれぞれのキャラに合ったスノーイベントが起こる。
あ、これはゲームの方の話だけどね。
ゲームの表にも裏にも、公式の裏設定にも出てこないモブの僕には、フラグもイベントも関係ない。
春には王都の邸の敷地内にある春の花を中心に整えられた庭園の桜の下で家族で花見をして、
夏には社交シーズンなんて丸っと無視の勢いで、家族みんなで王都から少し離れた領地にある海沿いの別荘に避暑に行くし、
秋はまた別の紅葉の溢れる領地の別荘や、王国領内の庭園に散策に向かい、
冬は本領地の邸宅に戻り、長い休みを家族みんなで過ごす。
クリスマスも、年越しも、バレンタインも、ホワイトデーも、
全部家族と一緒。
お出かけの際の移動はもう当たり前のように、ずっと兄様どちらかの腕の中だ。
転生してきたせっかくの異世界。
外に出て大いに満喫は出来ていないけど、
それでも十分過ぎるほど幸せに過ごしている。
何より、大好きな兄様達とは全部一緒に過ごせてるしね。
そんな僕でも、さすがに一緒には来れないだろうと思っていた、王立学園。
その正門前に今、兄様の腕の中抱えられたまま、馬車の中から降り立った。(降り立ったのは兄様だけどね。)
その後ろからはミスティラリ兄様もついてきている。
あの日、いつものように帰宅したミスティラリ兄様は、カディラリオ兄様の話を聞くや自分ももちろん行くと、物凄い勢いでカディラリオ兄様に詰め寄った。
カディラリオ兄様の腕に抱えられていた僕は挟まれる形になってしまって、その勢いの凄さに鬼気迫るものを感じた程だった。
あんなに必死に同行しようとするなんて、ミスティラリ兄様も来年自分が通う事になる学園は、とても気になるんだろうな。
僕も勢い込んで返事をしたし、その気持ち凄く分かる。
それに、ゲームのオープニングで見たこの学園の正門。
学園祭用になっていて、オープニングのスチルとは雰囲気は異なるけど、それでも生で見れるのは胸にくるものがある。
しかも兄様の腕の中で、兄様達と一緒に。
感動も一入だ。
ミスティラリ兄様も降りて隣に並んだ所で、周囲の視線が一気にこちらに向いているのに気が付いた。
それはそうだ。
ゲームでも不動の人気を誇るツーショット。
カディラリオ兄様は既に生徒からも大人気だろうし、ミスティラリ兄様もまだ学園に通う前とはいえ既に社交にも出ている。
中には幼学院から既に見知っている人もいるだろう。
もし知らなかったとしても、この2人の輝かんばかりの美貌とイケメンオーラだ。
目の端に少しでも入れば、見つめてしまうのは常識ってレベルだと思う。
いや、本当に常識になっているのかも。
だって周囲の視線の熱量が違う。
存在の薄い僕には関係の無い視線だとしても、この視線の多さと強さには、さすがに耐えかねるものがある。
僕はディー兄様の肩口へ埋めるようにして、視線からそっと顔を背けた。
それに気が付いたディー兄様が、小さく舌打ちしたかと思うと、僕を視線から庇うようにしながら早歩きし始めてくれたのを感じる。
こんなに優しいディー兄様でも舌打ちする事があるんだな、と少し驚いた。
でも確かに、それくらい不躾な視線だった気もする。
でも兄様、この視線は兄様達へのものだから、僕を庇う必要はないですよ!
そう伝えようと顔を上げようとしたが、兄様の優しくて大きな手が僕の頭の上に置かれて撫でてくるものだから、そのまま何も言えずにうっとりと撫でてくれるその感触を楽しんでしまった。
誘惑にとことん弱い僕である。
そんな風に手の感触を感じたまま惚けていたら、どこかの部屋に入る気配がした。
どこに着いたのかと慌てて顔を上げ、周囲を見渡せば
そこは王立学園生徒会の生徒会室だった。
家具の配置や壁紙、雰囲気も、書類の散らばり方何かの差異はあるけど他はスチルそのままだった。
こっそり感動していると部屋の最奥、いくつか並んでいる個別用の机でお茶を飲んでいる人がいた。
金の髪に金の瞳。
攻略対象者の1人であり、この国の第1王子。
パスティリード・ジル・アイカラリティ殿下だ。
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