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1歳の僕
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しおりを挟むこの世界に生まれて1年。
この国の高位貴族である両親は前世の記憶のある僕を天才だと、天使のように可愛いと褒めそやし、引くぐらいの愛情を注いで育ててくれている。
肉体年齢に精神が引っ張られ、感情の起伏も激しく、思うように振る舞うことも動くこともままならない自分の事を、前世の記憶の頃からしたら明らかに子供だと僕は思っていたので、どうしてそんなに褒められるのかと不思議に思っていたけれど。
意思の疎通が取れるようになったのも、言葉を話すようになったのも、ハイハイやつかまり立ちが出来るようになったのも、一般的な赤子よりも遥かに早かったらしい。
滑舌が悪く舌っ足らずではあるが周りとのコミュニケーションの取り方は赤子のそれではなかったし、夜泣きも殆どしない。普通の赤子ではまだできないはずの事を次々に出来るようになってしまう僕に、両親をはじめ周囲の使用人達も喜び大切に育ててくれた。
そんな風に周りが褒めてくれる程、大切にしてくれる程、僕は前世の記憶でズルをしているような気がして申し訳ない気持ちになった。
でもそんな僕の態度を見て、皆は慎ましく優しいと益々褒めるようになった。
そんな風に1年を過ごし、1歳の誕生日の今日。
僕はまた、前世の記憶に基づいて新たな事実に気がついた。
この1年、僕がいたのは父様が治める領地の本邸になる邸だった。
出産を控えた母様が療養も兼ねて父様と一緒に領地に帰っていた為だ。
そして1歳の誕生日を祝う身内でのパーティを機に、王都にあるタウンハウスに数日前戻ってきたんだ。
そして今、そのパーティで、貴族の為の幼学院に通うためにタウンハウスに残っていたらしい2人の兄と対面した。
僕より10歳上で、濃い灰色の短髪に真っ赤なルビーの様に綺麗な瞳、意志の強そうな眉、既に精悍な凛々しさ漂う、11歳にしてはかなり大柄な体躯の長兄と、
僕より9歳上で、銀に近い艶やかな髪に、左目元に黒子のある、タレ目がちでアメジストみたいな澄んだ瞳の、10歳なのに異様な色気の滲む次兄。
2人のタイプの違う超美形に、僕の目が限界を超える勢いで見開いた。
母様の腕の中、目を見開いたまま固まった僕に満面のえがおで2人の兄が自己紹介してくれる。
「レティ、2人がレティのお兄様だよ。
右が上の兄様のカディラリオ、左が下の兄様のミスティラリだ。
2人とも、この子が可愛い弟のレティシオだよ。
手紙に書いた通り、天使のようだろう?」
「本当に天使みたいに可愛いな。
レティ、これから俺が守ってやるからな。」
「レティ、私達の可愛い弟。
今日からはずっと一緒だよ。」
子供なのに既に男として整った凛々しい顔に、精悍さを浮かべて守ると意気込む長兄。
色気を振りまきながら思わず頬を染めてしまうような笑みを浮かべて僕の頬をつつく次兄。
2人の姿を見てモヤモヤしていた何かが、名前を聞いたと同時に雷を受けたような衝撃と共にハッキリとした。
この見た目。
この名前。
この世界観。
この国の名前も。
ああ…
ここは、僕が前世ハマっていた数々のBL恋愛ゲームの中でも特に気に入ってやり込んでいた『君の瞳の世界』だ。
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