-にゃんでどうしてこうなった世界-

もちもちもふぃ

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6.旅は道連れ

トロピカル

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2人が落ちていった先は、幸いにもゲート前広場の横にある緑が生い茂る植物園だった。
見栄え良くたくましく育つように手入れが充分に施されており、多種多様な植物たちは芯も太く葉も丈夫だった為、落下の衝撃を和らげてくれた。
高所から落ちても死なずに済んだのは、熱帯ならではの、大小様々な樹木のおかげもあるだろう。

最初に目が覚めたのは、奈緒だった。
頭を少し打ったので、起きてからも目の焦点が定まるのに時間が掛かっていたが、ぼんやりと自分がヒデトの上にいる事だけは分かった。

「……っ。ヒデトっ」

まだ、頭がグラグラする。
しかし、自分の体重がヒデトの負担になるのは避けたかったので、汚れるのも構わず地面へと転がり込んだ。

身体で地面のひんやりと湿った土の感触を感じる。
一瞬、ジャングルに迷い込んだのかと錯覚してしまう程、虫の音や鳥の鳴き声がこだまし、響きあっている。

頭が少し冴えてきて、自分が置かれている状況をなんとか把握しようとする。

最後に自分が居たのは、ヒデトの宿泊していた部屋だった。
不埒な事をヒデトにされたような気がするが、
とりあえず、それは無かったことする。

ヒデトは俺を助けに来てくれて、ここを離れようとゲートに向かったはずだ。
だけど、この身体の痛さや、頭痛、そしてこの場所で二人で転がっているのは、高いところから落ちたせいではないだろうか。
頭上も開けており、木の枝や葉っぱが、この周囲には不自然なほど散乱している。

ヒデトのバディが鷹だから、空を飛べる。
下道を歩いていくより、飛んでいった方が早いし確実だ。
きっと、途中で何かハプニングがあったのだろう。

ヒデトはまだ目を覚まさない。

「ヒデトっ!!大丈夫!?」

大きな声を掛けながら、肩を手で叩く。
失神しているときは、揺さぶってはいけないと地元の何かの研修で習った。

「……んっ」

ヒデトの綺麗に整えられた眉が寄せられる。
女性ならきっと、その不快そうな顔でさせ魅了させられてしまうのだろう。
くっそ、不公平だ。

「起きろーっ、ヒデト!!」

ヒデトがいないと、俺だけじゃどうにもできない。
帰ろうにも方角さえ分からないし。
不覚にもヒデトだけが頼りである。

ヒデトが起きるまで声をあげ続けている中、カサコソと草の擦れる音が耳に入った。

「……えっ」

その音は最初は小さなものだったけれど、明らかに大きくなっていてこちらに近づいてきている。

「ちょーっ、ヒデト、早く!!早く起きてー!!」

恐怖心の中、小声で必死に囁き、ヒデトを叩き起こそうとする。
慌てているので、バシバシ叩いてしまうのはしょうがない。

「騒がしいですね……」

「ああ、ヒデトっ!!やばい、やばいよっ!!」

「あぁ、そうでした……、厄介な事になりましたね。」

「納得している場合じゃない!!あっち見て、ほら!!
 何かいるんだってーっ!!」

ガサガサ、ガサガサ
一歩ずつ、着実に。



―――来る者拒まずだが、この時ばかりは拒みたい―――
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