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5.光と闇
回復の兆し
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うーん……あつい、おもい……
身体の上に漬物石でも乗せられているかのようだ。
俺、藤沢奈緒はやっと正真正銘、自分の身体へと戻る事が出来た。
しかし、後遺症が残り体調不良を起こしていた。
それもそのはず、精神体とは言え、胸にピアス、ムチで背を打たれたりと数々の陵辱を受けたのだ。
もちろん、身体にそれらの痕は無い。
それでも、奈緒の記憶に残り続ける事だろう。
そして、奈緒は休養のため、助けてくれた総の部屋で寝かせてもらっていた。
強いだるさは無くなったけれど、何故か身体に重圧を感じる。
寝返りを打とうとしても動けない。
腰に絡まっている何かが、俺の動きを封じていたのだ。
「っ……!?」
よく見るとそれは人の腕で、俺をひと時も離さないようにがっしりと掴んでいる。
足も、抱き枕を抱くように俺の上に乗っかっていた。
それだけではない。
俺の後ろからは誰かが俺に重心を掛けて頸に顔を押し付けてピッタリと寄り添っていた。
……フゥー……
「ぁっ……」
誰かの吐いた息が、首筋を擽っていった。
背筋がゾクゾクとして、身体がビクッと反応する。
いてもたってもいられず、後ろを振り向く。
こんな寝起きだなんて、文句も言いたくなる。
「おいっ」
俺のとはまた違ったしっかりとした毛質の黒髪が揺れた。
「ふぁあー、奈緒ー。
起きたのー?」
「総!!ひっつきすぎだっての!
もう少し離れろよっ。」
「えー。ここ、僕の家だよ。
好きに寝かせてよー。
それによく一緒に寝てたでしょ?」
総はまた、奈緒を抱え直して寝ようとする。
「それは、小さい頃だからできた事だっ!
今はもうお互い大きんだから狭いだけだろーっ!」
「もー、文句が多いよー?
僕と一緒にいるって約束もしたのに。」
総は寝る事を諦めたのか、渋々俺を自由にして起き上がった。
「まぁ、少しだけでも体調が良くなったみたいでよかったー。
折角だし、ご飯にでもしよっかー。
ずっと、食べてなかったでしょ。」
俺が倒れないように、わざわざ手を取って起こしてくれた。
総の部屋を出て、一階に降りるとリビングへと繋がる扉が見えた。
事前に準備していたのか、総は料理を温め直している。
「奈緒、あれから結構眠っていたんだよー。
少し心配になるくらいだったんだから。」
「うぅ、助けてもらった上に看病もしてもらって……。
ほんと、ありがとうな!」
「この御礼は何で返してもらおっかなー。」
「ええっ、俺、今、金ないんだけどっ!」
「それじゃー、身体で返済だね。」
「もー、総っ。ははっ、それダメなやつー。」
総と、冗談を言い合えるなんて本当に久々だ。
「ふふふ、もうすぐできあがるよー。」
「あっ、ちょっとトイレいってくる!」
「はーい、準備してるから。
トイレは出て左だからね!
ゆっくりしておいでー。」
俺は扉を出て、駆け足で向かった。
総と話をしていたら、リラックスして催してしまったのだ。
だから、俺はトイレに行っていて気付かなかった。
俺の飲み物に、総は何か白い粉末状の物を入れていたのを……。
ーーーもちろん、それはーーー
身体の上に漬物石でも乗せられているかのようだ。
俺、藤沢奈緒はやっと正真正銘、自分の身体へと戻る事が出来た。
しかし、後遺症が残り体調不良を起こしていた。
それもそのはず、精神体とは言え、胸にピアス、ムチで背を打たれたりと数々の陵辱を受けたのだ。
もちろん、身体にそれらの痕は無い。
それでも、奈緒の記憶に残り続ける事だろう。
そして、奈緒は休養のため、助けてくれた総の部屋で寝かせてもらっていた。
強いだるさは無くなったけれど、何故か身体に重圧を感じる。
寝返りを打とうとしても動けない。
腰に絡まっている何かが、俺の動きを封じていたのだ。
「っ……!?」
よく見るとそれは人の腕で、俺をひと時も離さないようにがっしりと掴んでいる。
足も、抱き枕を抱くように俺の上に乗っかっていた。
それだけではない。
俺の後ろからは誰かが俺に重心を掛けて頸に顔を押し付けてピッタリと寄り添っていた。
……フゥー……
「ぁっ……」
誰かの吐いた息が、首筋を擽っていった。
背筋がゾクゾクとして、身体がビクッと反応する。
いてもたってもいられず、後ろを振り向く。
こんな寝起きだなんて、文句も言いたくなる。
「おいっ」
俺のとはまた違ったしっかりとした毛質の黒髪が揺れた。
「ふぁあー、奈緒ー。
起きたのー?」
「総!!ひっつきすぎだっての!
もう少し離れろよっ。」
「えー。ここ、僕の家だよ。
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それによく一緒に寝てたでしょ?」
総はまた、奈緒を抱え直して寝ようとする。
「それは、小さい頃だからできた事だっ!
今はもうお互い大きんだから狭いだけだろーっ!」
「もー、文句が多いよー?
僕と一緒にいるって約束もしたのに。」
総は寝る事を諦めたのか、渋々俺を自由にして起き上がった。
「まぁ、少しだけでも体調が良くなったみたいでよかったー。
折角だし、ご飯にでもしよっかー。
ずっと、食べてなかったでしょ。」
俺が倒れないように、わざわざ手を取って起こしてくれた。
総の部屋を出て、一階に降りるとリビングへと繋がる扉が見えた。
事前に準備していたのか、総は料理を温め直している。
「奈緒、あれから結構眠っていたんだよー。
少し心配になるくらいだったんだから。」
「うぅ、助けてもらった上に看病もしてもらって……。
ほんと、ありがとうな!」
「この御礼は何で返してもらおっかなー。」
「ええっ、俺、今、金ないんだけどっ!」
「それじゃー、身体で返済だね。」
「もー、総っ。ははっ、それダメなやつー。」
総と、冗談を言い合えるなんて本当に久々だ。
「ふふふ、もうすぐできあがるよー。」
「あっ、ちょっとトイレいってくる!」
「はーい、準備してるから。
トイレは出て左だからね!
ゆっくりしておいでー。」
俺は扉を出て、駆け足で向かった。
総と話をしていたら、リラックスして催してしまったのだ。
だから、俺はトイレに行っていて気付かなかった。
俺の飲み物に、総は何か白い粉末状の物を入れていたのを……。
ーーーもちろん、それはーーー
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