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4.奪還作戦

失踪

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失踪事件は他の地区でも起こっていた。

場所は第4地区。医療都市として有名な地域だ。

救急移送隊はゲートを通った後、すぐに予定されていた検査施設へと奈緒を運び入れた。

順序通りに検査を執り行い、身体面では特に大きな異常は見られなかった。
しかし、能力検査では反応があり、解析班が徐々に能力の分離を行う予定であった。

その前に、点滴をして身体の調子を整える為に奈緒はある一室で寝かせられていた。

事が起こったのは、点滴が終わって看護師が奈緒の様子を見に来た頃だった。

看護師はそのベッドが空になっている事に気付くと、慌てた様子でセンターに戻り他の看護師たちにこの事を伝えに行った。

患者が抜け出したと騒ぎになって、院内はすぐにドタバタとする。

何せ、他の地域の長からの頼みで受け入れた患者であるから、何もしないで帰したとなると信頼問題に関わるのだ。

急いで看護師達は連絡を取り合って奈緒を探し回った。

もう他に手はないと思っていた矢先に、奈緒を見たという患者の知らせが入った。

すぐに担当の看護師が話を聞きに行った所、奈緒からある伝言を頼まれたらしかった。

「大変お世話になりました。
僕はもう大丈夫です。
帰りますので、地域長への連絡は不要です。」

その患者は、奈緒が元気に玄関から帰って行くのを見送ったという。

病院の看護師達などの関係者は頭を悩ませた。
いくつかの疑問が生じるからだ。

なぜ、他の誰も奈緒が帰って行く所を見なかったのか。

なぜ、彼は意識を取り戻したのか。

そして、伝言には長への連絡は不要とあるが、本当に何もしなくていいのかどうか。

看護師達では対処しきれない事だと判断し、院内の上層部である役割の方達が審議する事になった。

結論を言うと、奈緒に掛けられていた能力の効力が切れて意識を取り戻したという事になった。

院内は忙しかったので、誰も見ていない事はただの偶然で、特に問題はないらしい。

また、伝言の件についてだが、いくら患者の要望とはいえ、やはり長への連絡は必須だろうという結論に至った。

それらの事が決まったのは奈緒が消えてから数時間が経ってからだった。

夜になって、ひとしきり看護師達の業務が終わりかけになった頃、これらの決定事項が伝えられたのだった。

奈緒の担当者だった看護師が責任を持って第3地区の長であるミナトへと連絡する事になった。

これをもって、この事件は解決するに至るはずであった。ーーー

   ~.。・*・。.~

その男は能力を解くと、その身なりだけでなく体型までもが変わった。

そしてまだ普及していないはずの無線機を使って誰かに連絡を取った。

「……はい、ボス。
こちらは作戦通りに進んでいます。
……承知しました。
では、そちらへ帰還します。」

彼は人に見られていない事を確かめると、また偽装をしてゲートのある施設へと向かっていった。



ーーー密かな犯行、判明するのはまだ先の事ーーー
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