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4.奪還作戦
潜伏
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「い、やぁ……、誰かっ!
はぁっ……、んんっーー」
扉の奥からは奈緒さんの悶える声が聞こえる。
一通り、手当てをして傷に関しては数日もしない内に治るだろう。
可哀想に。
だけど、僕は一切手を貸してあげられない。
救急箱を手にしてコンは部屋から出て倉庫へと向かう。
治療薬なんて、久々に使ったなー。
普段は、使用する機会がないから、救急箱は倉庫に保管してある。
他にも様々な道具が置かれてるけど、そろそろ整理したいなぁ。
ミツヒコ様は遺物を見るとすぐに収集してくるから、倉庫には物が溢れかえっている。
僕はただの人だから口出しするなんて事はできないけど……。
「コン様ーっ、ここにいらしたんですか。」
ドタドタと足音を立てて、数人の男達が廊下の奥からやってくる。
「何?」
「あの、ここにある名簿の方を知りませんか?
数日、誰もみてなくて探してるんです。」
「……知らない。
どこかでのたれ死んでるんじゃないの?
ただでさえ、入れ替わりが激しいんだから。」
「そうですか。
ありがとうございます。
あと、数人、新人が入ったようです。
すぐに、挨拶に行かせますので、よろしくお願いします。」
「えぇー、またぁー?
僕、名前覚えられないんだけどー。」
「では、我々は捜索を続けますので。」
「はーい。行ってらっしゃーい。」
彼らは来た時と同じように、走って去っていった。
この組は、人の入れ替わりが激しい。
理由は様々だけど、組織としては実力主義の形を取っている。
だから、弱いものは排他され、強いものたちだけが生き残る。
ミツヒコ様の久世家は莫大な富を持つ資産家で、そんな彼らの恩恵に授かりたくて人が集まってくる。
ミツヒコ様は必然的に命を狙わらやすい立場にあるが、彼は能力を使って滅多に人前に現れる事はない。
本当の姿を見られる者はほんの一握りだ。
僕が初めて目にしたミツヒコ様はとてもお美しくて、孤児院育ちの僕でも優しく接してくれたのを覚えている。
僕自身には強い能力はないけれど、ミツヒコ様との相性が良いみたいで、依代として頻繁な使われる事が多い。
だから、組の人たちも僕に危害を加えたりはしない。
まぁ、悪そうな事を考えている人が近くに寄ってきたら僕の察知能力ですぐに避ける事もできる。
こうして今も無事にミツヒコ様の側でお力になれる事はとても嬉しく感じている。
だけど、急に彼を連れて来たと思ったら、あんな仕打ちをするなんてなぁ。
まぁ、いつもと比べると死なないくらいには優しく扱ってはいるんだけど……。
僕はあの事故の時、本当に死ぬかと思った。
だから、助けてくれた彼の事は大切にしたいと思ってるし助けたい。
もし僕が彼を逃してあげたら、きっと奈緒さん以上に辛い事が僕の身に降りかかるだろう。
ミツヒコ様は僕を拾ってくれた大切なお方だから、裏切るような事もしたくない。
モヤモヤとした気分がコンの中で渦巻いている。
倉庫に救急箱を、戻して他の用事をしに行こうとしたら、また僕の元に訪問者が来た。
「どうも、僕たちここで仕える事になりました。
僕は総です。」
「俺は、カケルです。」
順に、名前を名乗るだけの軽い挨拶を交わしていく。
数人名乗り終えた後で、コンも軽く自己紹介した。
「僕はコン。ミツヒコ様の代わりだから。
よろしくね。」
「はい、よろしくお願いしますっ」
彼らは同時に気合を込めた声で返事をすると、他の人たちへの挨拶まわりのため早急にこの場から立ち去った。
ただ、僕はさっきまで考え事をしていたからか、その気配に気付かなかった。
1人だけ頭を下げながら、口元に邪悪な笑みを浮かべていた事に。
ーーー来たるは災難?ーーー
はぁっ……、んんっーー」
扉の奥からは奈緒さんの悶える声が聞こえる。
一通り、手当てをして傷に関しては数日もしない内に治るだろう。
可哀想に。
だけど、僕は一切手を貸してあげられない。
救急箱を手にしてコンは部屋から出て倉庫へと向かう。
治療薬なんて、久々に使ったなー。
普段は、使用する機会がないから、救急箱は倉庫に保管してある。
他にも様々な道具が置かれてるけど、そろそろ整理したいなぁ。
ミツヒコ様は遺物を見るとすぐに収集してくるから、倉庫には物が溢れかえっている。
僕はただの人だから口出しするなんて事はできないけど……。
「コン様ーっ、ここにいらしたんですか。」
ドタドタと足音を立てて、数人の男達が廊下の奥からやってくる。
「何?」
「あの、ここにある名簿の方を知りませんか?
数日、誰もみてなくて探してるんです。」
「……知らない。
どこかでのたれ死んでるんじゃないの?
ただでさえ、入れ替わりが激しいんだから。」
「そうですか。
ありがとうございます。
あと、数人、新人が入ったようです。
すぐに、挨拶に行かせますので、よろしくお願いします。」
「えぇー、またぁー?
僕、名前覚えられないんだけどー。」
「では、我々は捜索を続けますので。」
「はーい。行ってらっしゃーい。」
彼らは来た時と同じように、走って去っていった。
この組は、人の入れ替わりが激しい。
理由は様々だけど、組織としては実力主義の形を取っている。
だから、弱いものは排他され、強いものたちだけが生き残る。
ミツヒコ様の久世家は莫大な富を持つ資産家で、そんな彼らの恩恵に授かりたくて人が集まってくる。
ミツヒコ様は必然的に命を狙わらやすい立場にあるが、彼は能力を使って滅多に人前に現れる事はない。
本当の姿を見られる者はほんの一握りだ。
僕が初めて目にしたミツヒコ様はとてもお美しくて、孤児院育ちの僕でも優しく接してくれたのを覚えている。
僕自身には強い能力はないけれど、ミツヒコ様との相性が良いみたいで、依代として頻繁な使われる事が多い。
だから、組の人たちも僕に危害を加えたりはしない。
まぁ、悪そうな事を考えている人が近くに寄ってきたら僕の察知能力ですぐに避ける事もできる。
こうして今も無事にミツヒコ様の側でお力になれる事はとても嬉しく感じている。
だけど、急に彼を連れて来たと思ったら、あんな仕打ちをするなんてなぁ。
まぁ、いつもと比べると死なないくらいには優しく扱ってはいるんだけど……。
僕はあの事故の時、本当に死ぬかと思った。
だから、助けてくれた彼の事は大切にしたいと思ってるし助けたい。
もし僕が彼を逃してあげたら、きっと奈緒さん以上に辛い事が僕の身に降りかかるだろう。
ミツヒコ様は僕を拾ってくれた大切なお方だから、裏切るような事もしたくない。
モヤモヤとした気分がコンの中で渦巻いている。
倉庫に救急箱を、戻して他の用事をしに行こうとしたら、また僕の元に訪問者が来た。
「どうも、僕たちここで仕える事になりました。
僕は総です。」
「俺は、カケルです。」
順に、名前を名乗るだけの軽い挨拶を交わしていく。
数人名乗り終えた後で、コンも軽く自己紹介した。
「僕はコン。ミツヒコ様の代わりだから。
よろしくね。」
「はい、よろしくお願いしますっ」
彼らは同時に気合を込めた声で返事をすると、他の人たちへの挨拶まわりのため早急にこの場から立ち去った。
ただ、僕はさっきまで考え事をしていたからか、その気配に気付かなかった。
1人だけ頭を下げながら、口元に邪悪な笑みを浮かべていた事に。
ーーー来たるは災難?ーーー
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