-にゃんでどうしてこうなった世界-

もちもちもふぃ

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3.囚われの華

眠り姫

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そして、ミナトはというと――

事細かいことに口出しするヒデトがいないため、
素早く地区長の仕事をこなしている。
少し雑であったとしても、またどうにかなるだろう。

ミナトの帰りを待つ奈緒のため、必死でその作業に取り組む。
本当であれば、こんなめんどくさい地位を継ぎたいとは思わなかったが、家のためにしょうがなくやっている。
ヒデトがいない分、いつもより捗った気がする。

俺は最後に、仕事の仕分けをして、部下への指示を出してから、
無事、ほとんどの仕事を終えた。
一部、期限のないものはいつでもできるので、
今日すぐにやらなければいけないという事もないだろう。

俺は気分よく、奈緒の待つホームへと帰路についた。
帰り道の夕暮れは燃え上がるように赤く、その空を染め上げていた。

「ただいまー。」

俺は玄関の扉を開けて、家の中へと入る。
この家は隠れ家的な用途で使っているので本宅よりかは小さめである。
すぐに奈緒の待っている部屋へと向かうと、動く気配はしていない。

「寝てるのかなー。」

そっと、扉を開けて覗くと、
規則的な寝息を立てて、奈緒はベッドの上へと横たわっていた。

「お昼寝かなー?
まあ、夜に苛めすぎちゃったからなー。
少し寝かせてあげるかー。」

わざわざ、気持ちよく寝ているところ起こすのも無粋なので、
ミナトは先にシャワーを浴びる事にした。
恋人を抱きしめるためにも、キレイでいた方が嬉しいだろう。

そうしてすぐに、電源を入れて風呂へと向かう。
仕事用のスーツも脱いで、着替えのための部屋着を持っていく。

「奈緒は寝顔も可愛いからなー。」

その寝姿を思い出し、ミナトの心は癒される。
身体の心配もあるけれど、また愛し合いたいと思ってしまう。
はやる気持ちを抑えて、温かいシャワーを浴びる事にした。

    ~。・*・。~

ミナトはお風呂から上がった後、部屋着を着ると、
リビングへと向かった。

奈緒のために軽く料理を作る。
きっと、奈緒の事だから、その匂いを嗅いで、
お腹すいたーって起き上がってくるに違いない。

そして、奈緒が好んでよく飲んでいる、果汁ジュースも用意する。
本当は、自身をよがらせていたクラリセの実からできているなんて思ってはいないのだろうけれど。
催淫効果も含んでいるため、毎日飲ませるようにしている。
奈緒の口にあって本当に良かった。
いつかは胸を触るだけで、イッてしまうように開発もしてみたい。
毎日飲み続ければ、そうなる日も遠い事では無いだろう。

料理が完成しても奈緒は起き上がってこない。
珍しく、熟睡でもしているのだろうか。
こんなことは今まで無かったのだけれど。

可愛い奈緒を起こしに俺はベッドへと向かった。

「おーい、奈緒ちゃん、
そろそろ、起きてー。
襲っちゃうよー。」

奈緒の耳元で囁いて、その身体を抱きしめる。
それでも、奈緒は身じろぎ一つしない。

「なーおー。」

息はしている、だけど目覚めない。
俺がこんなに話しかけても起きないし、
俺が力を入れて抱きしめても、何の反応も返さない。

「なおっ!!」

おかしい。異常事態だった。
愛する人が目覚めないなんて、何の冗談だろうか。
眠り姫は童話の中だけにしてくれ。

俺の保護下でこんな事がおこるなんて、
よほどの事ではない。
眠っているときの奈緒に違いはないのだが、
少しだけ何かの能力が使われた気配が残っている。
微かな残り香のようで、その正体を突き止める事ができない。

きっと奈緒は、いつかの時点から、
眠ったままで水分や食事を摂っていない可能性がある。
俺はすぐさま、奈緒のため医者を呼ぶことにした。

バディへと意識をやり、この第3地域で一番信頼のおける医者を呼ぶように伝えた。
きっとすぐにドクターは来てくれるだろう。

何の能力でこうなっているかも分かれば、対処の仕様もあるのだが。
俺は奈緒をそっとベッドへと寝かし、その手を取り見守り続ける事しかできなかった。





――人は誰しも万能ではない――
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