20 / 80
2.動き出す歯車
可愛い子には旅をさせろ!!
しおりを挟む
――すぅ――、すう――。
心底疲れ切って眠り、規則的な寝息をたてている奈緒の傍で、ミナトは心の底から満足感と愛しさを感じる。
ずっと俺の傍にいてほしい、俺だけを見て欲しい。
他の人としゃべるのも、その笑顔を他人に向ける事もして欲しくない。
歪んだ愛情がミナトを占めている事に、自身は気付いていない。
気付いていたとしても、全く気にしていないのだろう。
奈緒の頭をゆっくりと優しげに撫でて、その柔らかなさらさらとした髪の感触を楽しむ。
「はああ――、好き。
大好きすぎる。
奈緒の気持ちはまだかもしれないけど、
先にその身体から手籠めにするって決めたんだ。
ごめんね、なお、愛してるよ。」
ミナトは瞳を閉じて、奈緒が傍にいるという証でもあるそのぬくもりを肌で感じる。
「奈緒は元いた所へ帰りたいかもしれないけれど、
もう離してあげたくないんだよねー。」
どうしたものかと、ミナトは心の中でこれからの計画を考える。
頭の中でその考えを整理していると、部屋の扉がノックされた。
「入れ。」
ミナトは幸せで緩んでいた顔から、その柔らかい微笑みを消してしまう。
この部屋が情事の後だと分かってしまうのにも構わず、
ミナトは小声でそのノックの音に答える。
「――失礼します、ミナト様。」
いつもの仕事通りの顔になって、部屋の扉を開け踏み入ってくる人物に視線をやる。
「ヒデトです。調査の件ですが――」
「分かった。そちらへ出向く。
ここでは、奈緒が起きてしまう。」
そうして、ミナトはゆったり起き上がり、服を着て部屋の出口へと向かう。
最後にゆっくりと振り返り、奈緒がベッドの上で寝ている様子を目に焼き付けて、一言奈緒が起きないような音量で声をかける。
「いってくるね、なお。
またね、おやすみ。」
そして部屋の扉を閉めて、ヒデトの方へと足を向ける。
近くで待機させていた、ライオンのバディのレオも主人であるミナトの後へと続いてこようとするが、奈緒の見張りのため、この部屋の前で待機するようにと思念を伝える。
大人しくレオはその指示に従い、腰を落ち着けて、大きな欠伸をする。
「よろしいんですか?
部下を寄越しますのに。」
「奈緒の傍で他人を寄らせるのが嫌なんだ。
このままでいい。」
「かしこまりました。では、こちらに。」
そう言って、部屋を出てヒデトからの報告を受けに行った。
~。・*・。~
奈緒は暗闇の中へ意識を漂わせている。
夢を見ているのだろうか。
意識ははっきりとせず、ぼーっと暗闇の中で横たわっている。
すると、そぉ――っと静寂の中を誰かの歩いてくる気配が伝わってくる。
深夜の暗闇の中で幽霊が迫ってくるとか、そんな類の恐怖は感じない。
ただ、誰かが俺の傍まで近づいてきて、ふんわりと優しく包んでくれる。
俺はその暖かな、温もりにほっと心が安らぐ。
俺を抱きしめていたそのぬくもりは俺から離れずに、
まるで抱き上げるかのようにして俺を抱え直す。
そしてどこへとも知らない方向へと足を向けた。
俺は一瞬どこへ向かうのかという考えが頭を過ったが、
こんなにも優しげなぬくもりに絆されて、これ以上考える事はやめにした。
ふわふわと漂う感覚にその身をまかせて、俺はそのぬくもりに浸り続けた。
――その温度を分かち合う――
心底疲れ切って眠り、規則的な寝息をたてている奈緒の傍で、ミナトは心の底から満足感と愛しさを感じる。
ずっと俺の傍にいてほしい、俺だけを見て欲しい。
他の人としゃべるのも、その笑顔を他人に向ける事もして欲しくない。
歪んだ愛情がミナトを占めている事に、自身は気付いていない。
気付いていたとしても、全く気にしていないのだろう。
奈緒の頭をゆっくりと優しげに撫でて、その柔らかなさらさらとした髪の感触を楽しむ。
「はああ――、好き。
大好きすぎる。
奈緒の気持ちはまだかもしれないけど、
先にその身体から手籠めにするって決めたんだ。
ごめんね、なお、愛してるよ。」
ミナトは瞳を閉じて、奈緒が傍にいるという証でもあるそのぬくもりを肌で感じる。
「奈緒は元いた所へ帰りたいかもしれないけれど、
もう離してあげたくないんだよねー。」
どうしたものかと、ミナトは心の中でこれからの計画を考える。
頭の中でその考えを整理していると、部屋の扉がノックされた。
「入れ。」
ミナトは幸せで緩んでいた顔から、その柔らかい微笑みを消してしまう。
この部屋が情事の後だと分かってしまうのにも構わず、
ミナトは小声でそのノックの音に答える。
「――失礼します、ミナト様。」
いつもの仕事通りの顔になって、部屋の扉を開け踏み入ってくる人物に視線をやる。
「ヒデトです。調査の件ですが――」
「分かった。そちらへ出向く。
ここでは、奈緒が起きてしまう。」
そうして、ミナトはゆったり起き上がり、服を着て部屋の出口へと向かう。
最後にゆっくりと振り返り、奈緒がベッドの上で寝ている様子を目に焼き付けて、一言奈緒が起きないような音量で声をかける。
「いってくるね、なお。
またね、おやすみ。」
そして部屋の扉を閉めて、ヒデトの方へと足を向ける。
近くで待機させていた、ライオンのバディのレオも主人であるミナトの後へと続いてこようとするが、奈緒の見張りのため、この部屋の前で待機するようにと思念を伝える。
大人しくレオはその指示に従い、腰を落ち着けて、大きな欠伸をする。
「よろしいんですか?
部下を寄越しますのに。」
「奈緒の傍で他人を寄らせるのが嫌なんだ。
このままでいい。」
「かしこまりました。では、こちらに。」
そう言って、部屋を出てヒデトからの報告を受けに行った。
~。・*・。~
奈緒は暗闇の中へ意識を漂わせている。
夢を見ているのだろうか。
意識ははっきりとせず、ぼーっと暗闇の中で横たわっている。
すると、そぉ――っと静寂の中を誰かの歩いてくる気配が伝わってくる。
深夜の暗闇の中で幽霊が迫ってくるとか、そんな類の恐怖は感じない。
ただ、誰かが俺の傍まで近づいてきて、ふんわりと優しく包んでくれる。
俺はその暖かな、温もりにほっと心が安らぐ。
俺を抱きしめていたそのぬくもりは俺から離れずに、
まるで抱き上げるかのようにして俺を抱え直す。
そしてどこへとも知らない方向へと足を向けた。
俺は一瞬どこへ向かうのかという考えが頭を過ったが、
こんなにも優しげなぬくもりに絆されて、これ以上考える事はやめにした。
ふわふわと漂う感覚にその身をまかせて、俺はそのぬくもりに浸り続けた。
――その温度を分かち合う――
0
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる