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2.動き出す歯車

安全とはいったい

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――奈緒はヒデトの行く先を透明な隔壁ガラスに手をついて眺めていた。
すると背後から、ミナトにそっと抱え込まれた。
腕を俺の胸の前に交差して、俺のうなじに顔を埋めてくる。

「ケガはない?大丈夫?」

「うっ、うん。少しびっくりしたけど――」

ミナトが耳の傍から囁いてくるので、
その息吹がうなじに掠ってこそばゆく、背筋がぞわぞわする。
とたんに、俺の来ていたシャツをめくり腹の方から手が侵入してくる。

「っ、どさくさに紛れて服に手を突っ込むなっ!!
ここ、外だし!!誰かに見られたらどーするんだっ」

「いいーじゃん、別に減るもんじゃないでしょ。」

「だーめーだっ!!」

俺の貞操を守るべく、必死に抵抗する。
誰かに見られて、外でも構わず盛る変質者って思われたら、俺はもう恥ずかしくて生きていけない。
その手を剥がそうと試みると、ミナトに不意に尋ねられた。

「そのブレスレットどうしたの?」

ミナトの手は離れないものの動きは止まったようので、俺は質問に答える。

「これ、綺麗でしょ。ヒデトさんがくれたんだ―。」

「ヘぇ――、良かったね」

「うん、嬉し――」

俺は咄嗟に察した。何か不穏な気配がする。
さっきのミナトの声も急に低くなった。
こんな時、嫌な予感はあたるもので。
急にミナトに力強く抱きしめられて、肺の中から一気に空気が抜けていく。

「――くはっ」

「さぞ、楽しかったんだろうね。妬けちゃうなー。俺からもいっぱい愛させてよ。」

息が出来ず顔が赤くなったところで、ミナトは力を緩めてくれた。
肺に空気が満たされる

「はあっ――、はあっ――」

「本当は外でもいいかなって思ったんだけど、今日は色んな事があったし、
奈緒に免じて許してあげる。
外で奈緒の喘ぐ声を聞かれたくないでしょ?
でも、我慢するのは家に帰るまでだから。
わかったー?」

俺はこれから待ち受けるであろうことを、想像し無言になるしかなかった。

ミナトは奈緒をお姫様を抱えるように、横抱きにすると、
身体強化の能力を付与しながら、屋上から飛び降りた。
俺の能力ではこんなことはできないけれど、彼は全く躊躇しない。
ふわっとした無重力に俺は耐えられず、ミナトの胸にしがみつく。
ミナトはどこか満足そうな顔をして、自分のホームへと駆けていった。

~*。・*~*。・*~*。・*~*。・*~*。・*~*。・*~

ヒデトは奈緒たちと別れた後、銀髪の少年を病院に送り届けた。
病院関係者に諸事情を話して、もし後遺症や他の症状が表れれば医療都市として有名な第4地域に送ってあげるように頼んだ。
本人は、後で保護者が迎えにくるし、その必要はないと言っていたのだが。

話をつけた後、待合室で待機している彼の元へと向かう。

「おにいさん、ありがとう!!」

キラキラした黒目・・を輝かせながら、銀髪の少年は笑顔でお礼を言う。

「どういたしまして、気を付けてね。」

そう言って、少年を病院へ預け、ヒデトはこの事件の後片付けという名の処理に赴く。
現場に急行し、ミナトの直属の部下たちと合流する。

ミナトが残していったのだろう、バディに近づきこれまでの情報を共有してもらった。
事態はどうやら複雑なようで、今は地獄にいるだろう先程の不審者の経歴は全くといっていいほど分からなかった。
しかも各地域へと連動しているゲートの利用歴にもそのデータは存在しない。

とても厄介な問題が起こってしまったと、ヒデトは頭を抱えるしかない。

「あー、ミナト様に叱られそうだ。」

少しでもミナトへの仕事量を軽減しようと、ヒデトは調査の指揮に取り掛かった。
この問題が解決したら、奈緒様と第7地域に行くのもいいかもしれない。
あの貿易都市にはここ以上に、あらゆるものに溢れているのだから
きっと奈緒様の気に入るものもあるだろう。

そんな想いを心に寄せれば、少し負担は軽くなったように感じた。



――無意識な恋心―――
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