10 / 80
2.動き出す歯車
おさないで
しおりを挟む
ヒデトに連れられて来たそこは多くの人で賑わっていた。
中には背中から翼をはやし、空中で話し合っている人もいる。
本当に空を飛べるんだなー、すげー!!
俺も少しくらいなら、飛んでみたいかも。
「なあ、あれどうやって飛んでるの?」
「余所見をすると危ないですよ。
飛行もバディから授けられる能力です。
鳥類のバディをお持ちの方が多いですね。」
「えっ、それじゃあ、ヒデトさんも?」
「はい。私のバディは鷹なので、もちろん飛行可能ですよ。
また今度、お見せいたしますね。」
「いいなー、空飛べるのうらやましー」
「もし空を飛びたいなら、私がお連れすることも可能ですよ?落ちないようにしっかりと隙間なく抱いて差し上げます。」
その言葉を聞いて、俺の空を飛ぶ計画が儚くも散ってしまった。
「遠慮させていただきます……」
「ふふ。さて、いくつか買うものもありますので、私の傍から離れないように。」
奈緒は人混みの中、ヒデトを見失わないように、懸命にそのあとについていく。
表通りを五分ほど歩いたところでヒデトは立ち止った。
ここが最初の目的地のようだ。
俺の世界でいう、花屋さんみたいなもので、
あらゆる植物が並んでいる。
たまに、風もないのに、うにょうにょと動いているものもあるが、
怖いので近寄らないでおこう。
ヒデトは俺にこの店から出ないように釘をさして、店の奥にいる店主に話しかけている。
元から話をつけていたようで、すぐに商品を受け取って戻ってきた。
「支払いはしなくていいの?」
「特に手続きはありません。ああ、そうでした。
昔は貨幣制度でしたね。今では豊かになって、
最低限度の暮らしは誰にでも保障されています。
その分、身分が高くなるほど、様々なサービスを利用することができる事になっているんですよ。」
「ヘぇー、その場合、俺はどうなるの?」
「奈緒様は、ミナト様のお客人ですからね。
住民たちとは異なり、仮の扱いとして、
不便は無いようなシステムになっておりますが、
何かのサービスを利用する度にミナト様に通知が行くようになっております。」
「げっ、それってどこに逃げても足がつくって事じゃん。
だから、あの時、簡単に見つかったのかー。」
「そうですね、ミナト様はこの情報は特に必要ないと判断して、お教えしていなかったのでしょう。」
「ふーん、次から気をつけようっとー。
俺に隠してたなんてひどい奴ー。」
「まあ、ミナト様はあなたにご執心のようなので、
どこへ行っても、その制度を使う暇はないでしょうね。」
「それは、それでなんかやだな。」
ヒデトと話し合いながら次の店へと向かう。
長刀のようなものから、鋭利な極小の針まである。
何に使うのか不明だが、刃がついた道具を見繕っていた。
先ほどと同様に、すぐに手続きが済んだようだ。
「さて、用事は済みました。
奈緒さん、何か欲しいものはありますか?
大人しくして頂いたのでご褒美に何か差し上げましょう。」
「えっ!いいの!?
実はあのキラキラしているお店が気になってたんだよね。」
「かしこまりました。では向かいましょう。」
そういって、ヒデトは俺に手を差し伸べてくる。
俺は、見た事が無い物でいっぱいで少し興奮していたのもあり、
無意識にその延ばされた手のひらに自分の手を重ね合わせた。
少し冷たいその手には、今までどれほどの苦労があったのか、
治っても消えない傷跡で柔らかいとはいえないものだったが、
この広い世界で、俺はその手に頼もしさを感じたのだった。
――そのぬくもりにすがりたい――
中には背中から翼をはやし、空中で話し合っている人もいる。
本当に空を飛べるんだなー、すげー!!
俺も少しくらいなら、飛んでみたいかも。
「なあ、あれどうやって飛んでるの?」
「余所見をすると危ないですよ。
飛行もバディから授けられる能力です。
鳥類のバディをお持ちの方が多いですね。」
「えっ、それじゃあ、ヒデトさんも?」
「はい。私のバディは鷹なので、もちろん飛行可能ですよ。
また今度、お見せいたしますね。」
「いいなー、空飛べるのうらやましー」
「もし空を飛びたいなら、私がお連れすることも可能ですよ?落ちないようにしっかりと隙間なく抱いて差し上げます。」
その言葉を聞いて、俺の空を飛ぶ計画が儚くも散ってしまった。
「遠慮させていただきます……」
「ふふ。さて、いくつか買うものもありますので、私の傍から離れないように。」
奈緒は人混みの中、ヒデトを見失わないように、懸命にそのあとについていく。
表通りを五分ほど歩いたところでヒデトは立ち止った。
ここが最初の目的地のようだ。
俺の世界でいう、花屋さんみたいなもので、
あらゆる植物が並んでいる。
たまに、風もないのに、うにょうにょと動いているものもあるが、
怖いので近寄らないでおこう。
ヒデトは俺にこの店から出ないように釘をさして、店の奥にいる店主に話しかけている。
元から話をつけていたようで、すぐに商品を受け取って戻ってきた。
「支払いはしなくていいの?」
「特に手続きはありません。ああ、そうでした。
昔は貨幣制度でしたね。今では豊かになって、
最低限度の暮らしは誰にでも保障されています。
その分、身分が高くなるほど、様々なサービスを利用することができる事になっているんですよ。」
「ヘぇー、その場合、俺はどうなるの?」
「奈緒様は、ミナト様のお客人ですからね。
住民たちとは異なり、仮の扱いとして、
不便は無いようなシステムになっておりますが、
何かのサービスを利用する度にミナト様に通知が行くようになっております。」
「げっ、それってどこに逃げても足がつくって事じゃん。
だから、あの時、簡単に見つかったのかー。」
「そうですね、ミナト様はこの情報は特に必要ないと判断して、お教えしていなかったのでしょう。」
「ふーん、次から気をつけようっとー。
俺に隠してたなんてひどい奴ー。」
「まあ、ミナト様はあなたにご執心のようなので、
どこへ行っても、その制度を使う暇はないでしょうね。」
「それは、それでなんかやだな。」
ヒデトと話し合いながら次の店へと向かう。
長刀のようなものから、鋭利な極小の針まである。
何に使うのか不明だが、刃がついた道具を見繕っていた。
先ほどと同様に、すぐに手続きが済んだようだ。
「さて、用事は済みました。
奈緒さん、何か欲しいものはありますか?
大人しくして頂いたのでご褒美に何か差し上げましょう。」
「えっ!いいの!?
実はあのキラキラしているお店が気になってたんだよね。」
「かしこまりました。では向かいましょう。」
そういって、ヒデトは俺に手を差し伸べてくる。
俺は、見た事が無い物でいっぱいで少し興奮していたのもあり、
無意識にその延ばされた手のひらに自分の手を重ね合わせた。
少し冷たいその手には、今までどれほどの苦労があったのか、
治っても消えない傷跡で柔らかいとはいえないものだったが、
この広い世界で、俺はその手に頼もしさを感じたのだった。
――そのぬくもりにすがりたい――
0
お気に入りに追加
486
あなたにおすすめの小説
陵辱クラブ♣️
るーな
BL
R-18要素を多分に含みます。
陵辱短編ものでエロ要素満載です。
救いなんて一切ありません。
苦手な方はご注意下さい。
非合法な【陵辱クラブ♣️】にて、
月一で開かれるショー。
そこには、欲望を滾せた男たちの秘密のショーが繰り広げられる。
今宵も、哀れな生け贄が捧げられた。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
大親友に監禁される話
だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。
目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。
R描写はありません。
トイレでないところで小用をするシーンがあります。
※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。
浮気をしたら、わんこ系彼氏に腹の中を散々洗われた話。
丹砂 (あかさ)
BL
ストーリーなしです!
エロ特化の短編としてお読み下さい…。
大切な事なのでもう一度。
エロ特化です!
****************************************
『腸内洗浄』『玩具責め』『お仕置き』
性欲に忠実でモラルが低い恋人に、浮気のお仕置きをするお話しです。
キャプションで危ないな、と思った方はそっと見なかった事にして下さい…。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる