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2.動き出す歯車
束の間の休息
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長い間眠ってしまっていたようで、俺は朝昼兼用のヒデトが用意してくれた料理をたいらげた。
曇っていないところを見ると、今日も良い天気なようでこんな時には外に出たくなってくる。
ずっと家にこもりきりじゃ、足も衰えるし少しくらい散歩に出かけたい。
でも、きっとミナトは俺が外に出るのを許さないだろうしなー。
ヒデトはいつもミナトの傍にいるけど、今日はきっと俺の監視役なんだろう。
一人きりだと寂しく思ってしまう分、誰かが傍にいるのは落ち着く気がした。
だが、いつまでも監視されているようで嫌な気分だ。
「ねえ、今日はミナトの傍についてなくていいの?
側近なんでしょ?」
「気になるんですか?私はミナト様のご指示でこちらにいます。ちなみに、ミナト様は業務のため出掛けられていますよ。安心してください。あなたのためにすぐに片づけて帰ってこられるはずです。」
「うわ……、おまえ、あいつのためなら何でもするんだな。」
軽蔑の意を込めて、ヒデトの方をみやる。
「そんな事言っちゃっていいんですか?」
口を手で隠し、ヒデトは意味ありげに呟く。
「折角、奈緒様のために、外出の許可を頂いてきたのに。
そんな意地悪な事をする方には、連れて行ってあげません。」
「なっ!!どっちが意地悪だよっ!!
外に出られるって本当かっ!?」
「はい、あ、でも条件が三つ程あります。
それさえ守って頂ければ。」
うわー、何だか嫌な予感。
絶対、俺の嫌がることを要求してくるに違いない。
しかし、ここから逃げられる機会ってそうそうあるもんじゃないし。
もしかしたら、俺の元いた所に帰る手掛かりが見つかるかも。
俺は決心をして、そのお願いとやらを訊く心構えをした。
「……条件って、なんだよ」
「ひとつ、バディをこの部屋に置いていく事
ふたつ、お逃げにならない事。
私の傍から離れてはいけません。
少しでも逃亡されようとしたら、
……お分かりですね?」
「うっ……、わかった。」
(これ行くだけ無駄じゃない!?いやいや、ネガティブになってはいけない。俺には情報収集というしっかりとした目的があるんだ!!)
「で、最後は?」
「最後はですね……」
ヒデトはいったいどこに隠し持っていたのか、小さくて軽そうな、銀色に輝く鎖をちゃらちゃらと鳴らしながら迫ってくる。
「これをつけて、私にひかれて歩いてください。」
「っ!?やだしっ!?何言ってんの!?
俺は犬じゃねーし!!」
「そうでしたね、あなたは犬ではなく猫――」
「いやっ、そこじゃねーしっ!?」
「ふふ、そんなに、顔を赤くされないでください。
万が一にも私が我慢できず、あなたに何かあったら、ミナト様に怒られてしまいます。」
「う――、その鎖だけは勘弁して……」
俺の名誉のためにも、背の高いヒデトを見上げ泣きそうになりながら懇願する。
「まあ、私の冗談なんですけどね、ははっ」
「はあっ!?この性悪男!!」
「あ、でも首輪はつけたままでお願いします。
と、言ってもご自分では取れないとは思いますけど」
「はいはい、分かった。
くそっ、めっちゃ焦ったじゃねーか。」
こうして、俺はヒデトに連れられて、外に出る事になった。
行き先は、比較的安全な市場通りらしい。
もしかしたら、便利な小道具があったり、俺の世界についての情報を知っている人がいるかもしれない。
首輪をして外に出るのは慣れないけど、ファッションの一部と考えたら少しマシだよね。
いつどんな時でも、ポジティブに!!
よし、張り切って行こうー!!
――首につけられた痣は、誰かの悪戯――
曇っていないところを見ると、今日も良い天気なようでこんな時には外に出たくなってくる。
ずっと家にこもりきりじゃ、足も衰えるし少しくらい散歩に出かけたい。
でも、きっとミナトは俺が外に出るのを許さないだろうしなー。
ヒデトはいつもミナトの傍にいるけど、今日はきっと俺の監視役なんだろう。
一人きりだと寂しく思ってしまう分、誰かが傍にいるのは落ち着く気がした。
だが、いつまでも監視されているようで嫌な気分だ。
「ねえ、今日はミナトの傍についてなくていいの?
側近なんでしょ?」
「気になるんですか?私はミナト様のご指示でこちらにいます。ちなみに、ミナト様は業務のため出掛けられていますよ。安心してください。あなたのためにすぐに片づけて帰ってこられるはずです。」
「うわ……、おまえ、あいつのためなら何でもするんだな。」
軽蔑の意を込めて、ヒデトの方をみやる。
「そんな事言っちゃっていいんですか?」
口を手で隠し、ヒデトは意味ありげに呟く。
「折角、奈緒様のために、外出の許可を頂いてきたのに。
そんな意地悪な事をする方には、連れて行ってあげません。」
「なっ!!どっちが意地悪だよっ!!
外に出られるって本当かっ!?」
「はい、あ、でも条件が三つ程あります。
それさえ守って頂ければ。」
うわー、何だか嫌な予感。
絶対、俺の嫌がることを要求してくるに違いない。
しかし、ここから逃げられる機会ってそうそうあるもんじゃないし。
もしかしたら、俺の元いた所に帰る手掛かりが見つかるかも。
俺は決心をして、そのお願いとやらを訊く心構えをした。
「……条件って、なんだよ」
「ひとつ、バディをこの部屋に置いていく事
ふたつ、お逃げにならない事。
私の傍から離れてはいけません。
少しでも逃亡されようとしたら、
……お分かりですね?」
「うっ……、わかった。」
(これ行くだけ無駄じゃない!?いやいや、ネガティブになってはいけない。俺には情報収集というしっかりとした目的があるんだ!!)
「で、最後は?」
「最後はですね……」
ヒデトはいったいどこに隠し持っていたのか、小さくて軽そうな、銀色に輝く鎖をちゃらちゃらと鳴らしながら迫ってくる。
「これをつけて、私にひかれて歩いてください。」
「っ!?やだしっ!?何言ってんの!?
俺は犬じゃねーし!!」
「そうでしたね、あなたは犬ではなく猫――」
「いやっ、そこじゃねーしっ!?」
「ふふ、そんなに、顔を赤くされないでください。
万が一にも私が我慢できず、あなたに何かあったら、ミナト様に怒られてしまいます。」
「う――、その鎖だけは勘弁して……」
俺の名誉のためにも、背の高いヒデトを見上げ泣きそうになりながら懇願する。
「まあ、私の冗談なんですけどね、ははっ」
「はあっ!?この性悪男!!」
「あ、でも首輪はつけたままでお願いします。
と、言ってもご自分では取れないとは思いますけど」
「はいはい、分かった。
くそっ、めっちゃ焦ったじゃねーか。」
こうして、俺はヒデトに連れられて、外に出る事になった。
行き先は、比較的安全な市場通りらしい。
もしかしたら、便利な小道具があったり、俺の世界についての情報を知っている人がいるかもしれない。
首輪をして外に出るのは慣れないけど、ファッションの一部と考えたら少しマシだよね。
いつどんな時でも、ポジティブに!!
よし、張り切って行こうー!!
――首につけられた痣は、誰かの悪戯――
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