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1.理不尽な世界へようこそ
オレは絶対あきらめない!!
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ーー世の中には理不尽な出来事でありふれている。
発展しつくした都市の中でも、薄暗い路地はあるもので、
俺、藤沢奈緒は懸命に足を動かし少しでも距離を稼ごうとしていた。
そう、今まさに俺はある者から追われている。
捕まったら最後、どうなるかなんて考えたくもない。
「はあっーー、はあっーー」
もう足は限界に近いようで、運動部でもない俺はこの世界に来る前に少しでも体力をつけておけば良かったと今さらながらに後悔をしている。
既に何回曲がったか分からない角を右に進むと木箱が積み上げられていたのが見えた。
丁度いい。一旦そこで休憩してーー
「なおー、どこいったんだー?早く出てこないと、なおのかわいいバディに悪戯しちゃうよー」
嘘だろ!?なんで、もう!
というか、俺のバディ、なんで捕まっちゃってるんだよ!
バディというのは、この世界でいう生きた身分証みたいなものである。
動物の見た目で機械からできているが、どういう技術か本物のように動く代物なのだ。
12歳を超えると適性検査を受ける事で自分に最適のバディが国から支給される。
俺の場合は特別で、この世界へやってきたのは突然だったから、臨時のバディを与えられている。
それぞれ、特殊なスキルを持っており主人はその恩恵を受ける事ができるのだが、一番厄介なのはバディと感覚を共有しているという点である。
まさに、バディがあいつの手に捕らわれているという事は、絶体絶命のピンチである!!
ズンッーー、急に首筋にぞわりとした感覚がよぎり、
思わず足の力が抜けて膝から崩れ落ちていく。
「なんて可愛い黒ネコちゃんだろうね、なお」
「クッ……、撫でるのやめろぉっーー!」
そう俺のバディはこの黒猫である。まだ小さくて俺に慣れていないせいか言う事をきかない事も多い。
黒猫を抱えながら、久世ミナトは赤っぽい茶髪を優雅にそよがせ近づいてきた。
「気持ちいいかい?感覚を共有しているから、バディは大切にするようにってあれほど伝えた筈なんだけどなぁ」
ミナトはこの第三地区の長で、俺が異世界(過去の地球)からやってきた時に随分世話をやいてくれていた。
教育係も兼ねてくれて、すぐにこの世界に馴染めたから感謝していたんだが、最近、俺を手放したくないとか言ってその豹変ぶりに俺は怖くて逃げだしたんだ。
「うあっ、やめっ。あっ、む、りっーー」
道端にもかかわらず、もうその快感に耐えることが出来ない。
俺は横向きに寝転がって悶えるしかなかった。
「あららー。ほら耳と尻尾出ちゃってるよー。カワイイね。
早くおうちに帰ろう。もう一度、躾け直さなきゃ。」
そう言って、ミナトは俺を人撫でしてから、横抱きに抱えた。
バディとの感覚共有が強くなるほど、バディの特徴が身体に現れてしまうのだ。
いくら力が抜けているからと言って、何もしない俺ではない。
渾身の力を振り絞って暴れようとしたのだが……
「さっ、おとなしくしててね。」
そう言いながら、俺の口と鼻を何かの布で覆った。
息をするために、どうしようもなくて俺は薬品っぽい不快な匂いを嗅ぎながら、意識を手放すしかなかったのだ。
ーー何度逃げても、また捕まえてあげる。君はもう僕のものなんだからーー
発展しつくした都市の中でも、薄暗い路地はあるもので、
俺、藤沢奈緒は懸命に足を動かし少しでも距離を稼ごうとしていた。
そう、今まさに俺はある者から追われている。
捕まったら最後、どうなるかなんて考えたくもない。
「はあっーー、はあっーー」
もう足は限界に近いようで、運動部でもない俺はこの世界に来る前に少しでも体力をつけておけば良かったと今さらながらに後悔をしている。
既に何回曲がったか分からない角を右に進むと木箱が積み上げられていたのが見えた。
丁度いい。一旦そこで休憩してーー
「なおー、どこいったんだー?早く出てこないと、なおのかわいいバディに悪戯しちゃうよー」
嘘だろ!?なんで、もう!
というか、俺のバディ、なんで捕まっちゃってるんだよ!
バディというのは、この世界でいう生きた身分証みたいなものである。
動物の見た目で機械からできているが、どういう技術か本物のように動く代物なのだ。
12歳を超えると適性検査を受ける事で自分に最適のバディが国から支給される。
俺の場合は特別で、この世界へやってきたのは突然だったから、臨時のバディを与えられている。
それぞれ、特殊なスキルを持っており主人はその恩恵を受ける事ができるのだが、一番厄介なのはバディと感覚を共有しているという点である。
まさに、バディがあいつの手に捕らわれているという事は、絶体絶命のピンチである!!
ズンッーー、急に首筋にぞわりとした感覚がよぎり、
思わず足の力が抜けて膝から崩れ落ちていく。
「なんて可愛い黒ネコちゃんだろうね、なお」
「クッ……、撫でるのやめろぉっーー!」
そう俺のバディはこの黒猫である。まだ小さくて俺に慣れていないせいか言う事をきかない事も多い。
黒猫を抱えながら、久世ミナトは赤っぽい茶髪を優雅にそよがせ近づいてきた。
「気持ちいいかい?感覚を共有しているから、バディは大切にするようにってあれほど伝えた筈なんだけどなぁ」
ミナトはこの第三地区の長で、俺が異世界(過去の地球)からやってきた時に随分世話をやいてくれていた。
教育係も兼ねてくれて、すぐにこの世界に馴染めたから感謝していたんだが、最近、俺を手放したくないとか言ってその豹変ぶりに俺は怖くて逃げだしたんだ。
「うあっ、やめっ。あっ、む、りっーー」
道端にもかかわらず、もうその快感に耐えることが出来ない。
俺は横向きに寝転がって悶えるしかなかった。
「あららー。ほら耳と尻尾出ちゃってるよー。カワイイね。
早くおうちに帰ろう。もう一度、躾け直さなきゃ。」
そう言って、ミナトは俺を人撫でしてから、横抱きに抱えた。
バディとの感覚共有が強くなるほど、バディの特徴が身体に現れてしまうのだ。
いくら力が抜けているからと言って、何もしない俺ではない。
渾身の力を振り絞って暴れようとしたのだが……
「さっ、おとなしくしててね。」
そう言いながら、俺の口と鼻を何かの布で覆った。
息をするために、どうしようもなくて俺は薬品っぽい不快な匂いを嗅ぎながら、意識を手放すしかなかったのだ。
ーー何度逃げても、また捕まえてあげる。君はもう僕のものなんだからーー
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