糸糸糸

神奈川雪枝

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コンビニで爆買いしてただけなのに?

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嫌な事がある度、
嫌な事を言われる度、
嫌な事を聞く度、見る度、

私の心の中で
ぷつんと糸がきれる。

その後は理性なく、
ただ食べる。

手当たり次第に食べる。

食べすぎて吐きそうになる時もあるけど。

食べすぎて太って、
常に体が重くて、

太ることによって、
デブっていわれることが増えて、
その度に私の中の糸はきれて、

痩せたいのに
食べてしまう。


この日も仕事で嫌な事があって、
家にあるものを全て食べてしまって、

大雨だったけど、
近くのコンビニまで歩いて行くことにした。


暗い夜道、
車のライトが夜道に反射する。

強い雨だった。

ただ、早く食べたい、
食べてる時はその味に集中して、
嫌な事をわすれられるから。













バシャッ。













通り過ぎた猛スピードの車が通ったと同時に、
私に水が掛かった。



(なんだよ?!)

車は止まることなく進むと思った。

私なんて大木のひとつだと思って通り過ぎると思ったら、

ハザードランプがついて、
運転席から
若い男が慌てて降りてきた。

「す、すいません!
大丈夫ですか?!?!」

びっくりしたのは、
私の方だった。


すいませんと謝りながら、
お詫びがしたいというので、

こんなデブに変なことなんてしないだろうと思い、
濡れたまま車にお邪魔した。


着いたのは一軒家で、
一人暮らしだという。

家に入ると、
タオルを渡され、
急いでお湯張るねと走っていった。

「え?」

「ちょっと、まって。」

私の言葉だけが玄関に残る。



流されるままにお風呂に入っていた。

(広い。)

服も洗濯するからといわれたので、
私なんかが着る服あるのかと思ったけど、
白いタオルのバスローブが用意してあった。


「本当にごめんね!」
風呂からでると、
机には暖かいミルクが用意してあった。

「良かったら飲んで!」

「ど、どうも。」



緊張する。
こんな格好だし。
よく見ると顔が整っている人だし。


あぁ、あぁ。

コンビニで大好きなポテトチップスを沢山買って、
家に戻ってパリパリ食べるはずだったのに。

ポテトチップスのことを考えると、
お腹がなってしまった。

「え?お腹すいてる?」

「す、すいません。」

「そうだよね、どこか行くところだったのか?!ちょっとまっててね!」

彼は台所に向かった。

「嫌いなものとかあるー?」

「な、ないです。」

「え、なにー?」

「なんでも!たべれます!」

「そっか、良かった笑」



彼はオムライスとナポリタンとコーンスープを作ってきた。

(私ってやっぱり凄い食べると思われてるんだ。)


なんか落ち込んだ。
恋愛対象とは見られることは少ないとは思ってたけど、
現実を突きつけられちゃうと、
落ち込むな。


もやもや、もやもや。

ぷつんと緩やかに糸が切れれた。


無我夢中で食べた。

凄い美味しくて、感動してた。


食べ終わった後に
はっと我に帰って
彼を見ると、

彼はニコニコしながら私を見ていた。

(恥ずかしい。)


「いいね!
俺、美味しそうに食べる人好きなんだよね!」



「ご馳走、さま、でした。」


「洗濯、終わったかな?」と、
彼が席を立つ。


ドキドキしていた。
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