雨曜日

神奈川雪枝

文字の大きさ
上 下
1 / 1

鬱屈

しおりを挟む

只管に雨が降り続いていた。




何日も何日も。




やむこともなく降り続いていた。







がちゃんと勢いよく閉められた玄関の扉の余韻の後に、




いつも雨の音を聞いていた。




同棲して3年。




彼氏が失業して、

職探しがうまくいかなくて、

息抜きで始めたパチンコが、

損得が激しすぎて、




彼氏がおかしくなった。




「映見!」




どこで覚えたのか、

ストロング系の缶酎ハイを飲みながら、

タバコを吸っている。




「肉かってこいよ。(笑)」




そういわれ、彼氏から一万円を渡された。




(あぁ、今日は勝ったのか。)




パチンコ玉の成り行きで、

彼氏の機嫌が決まる。




私の安息はパチンコ玉にゆだねられている。




自分の実家とはあまり仲がよくなくて、

頼れない。




友達にだってこんな彼氏のことなんて話せない。




(あぁ、孤独だ。)




会社にいけば、私も雰囲気が変わったと揶揄されている。




心の貧しさは人を変える。




(帰りたくない。)




そう思って、夜もやっているカフェに入店してみた。




オレンジ色に光るライトの明かりが暖かった。




ブレンドコーヒーを頼む。




静かに流れるジャズのBGM。




心地が良かった。




珈琲を待つ間に寝てしまったらしい。










夢を見た。




それは5歳くらいの私だ。




そういえば、私の家は父と母2人そろってパチンコ狂いだった。




出会いもギャンブルの時とかっていっていったっけ。




たまに渡される板チョコをいつも大事に食べていた。




長い間、家に一人。




ぬいぐるみだけがいつもとなりにいてくれた。




高校生になり、

バイトを始めると、

パチンコに大負けする度に、

なけなしの給料を無心されたものだ。




こつこつお金をため、

私は実家を捨てた。




珈琲の香りに目を覚ました。




「おまたせしました。」と、

テーブルに珈琲が置かれた。







飲むとコクがあり、暖かくほろ苦かった。




彼氏とは合コンで知り合った。

たまたま隣の席で意気投合した。




そのまま3年付き合って、

同棲した。




結婚もしたいねなんて話したのは最初のころだけで、

だんだん私の相手をめんどくさがる彼氏に期待もしなくなった。




(まさか、彼氏までパチンコ狂いになるとはね。)







胸が痛む。




ふと、窓の方をみると、いつの間にか雨がふっていた。










 雨曜日。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした

珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。 そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。 ※全4話。

【完結】王太子妃の初恋

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。 王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。 しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。 そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。 ★ざまぁはありません。 全話予約投稿済。 携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。 報告ありがとうございます。

今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている

ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。 夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。 そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。 主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。 その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。 自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……

【R18】通学路ですれ違うお姉さんに僕は食べられてしまった

ねんごろ
恋愛
小学4年生の頃。 僕は通学路で毎朝すれ違うお姉さんに… 食べられてしまったんだ……

処理中です...