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出逢い

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時は2008年夏…。1人の夢見がちな青年は刹那の刻を彷徨っていた。

良い感じに話をしていた女性の相談であったが、その内容がまさかの恋話であった。しかも、彼氏の。

「……」

刹那の刻、廻る思考…。

(えっ?恋話?進路は?あれ?というか彼氏?彼氏いるのに一緒にコンサート行きたいって言ったの?聞き間違えか?というか彼氏いるんかーーいぃ!)

先程までの浮かれていた自分を殴り飛ばしてやりたいと本気で思っていると、真剣な表情で相談してくる彼女を見て、下心を完全に捨て話を聞くことに専念した。

彼女の相談内容をまとめると、彼女には10ヶ月前に付き合った彼氏がいる。その彼氏はどこで知り合ったのか、有名な大学を卒業し大手企業に勤める8歳年上の男性という、ハイスペックな彼氏であった。しかし、社交性が無く、人と合わせる事を嫌うタイプなのだそう。

そして、自身が高学歴なのを自慢し彼女の事を馬鹿呼ばわりすると言う。また、外食に行っても彼女に奢らせ、文句を言うと何かにつけて別れ話をチラつかせ自分が優位に立つようにしている。という有様であった。

普通に考えてそんな器量の小さい男なんざ即別れた方が良いに決まっている。彼女もそれを理解していた。しかし、彼女にとって初めての彼氏で1年近く付き合っている男である為、中々踏ん切りがつかないと言う。別れた後、何も無くなるのが怖いのだと…。

私は考えた。彼女が一番良い方向に進む為に私は何が出来るだろうか?

彼女は別れた方が良いと分かっているー。しかし環境が変わる事を恐れて前に進めなくなっているー。彼氏は彼女にとってー。

廻る思考。答えは出ている。今の彼女を救うにはー。

「…今の心境を素直に彼氏に伝えるべきだよ。そうすれば彼氏も考えを改めるかもしれない。それでも改心しなければそこで別れたらいい。」

私は私が出した答えを言わず友人Aとしての答えを言った。真の答えを言うにはリスクが大きい。それに、余計に彼女を傷つける事になるかもしれない。

これで良いのだ。他人の恋愛を邪魔すると馬に蹴られて死んでしまうのだから。

すっかり話し込み、辺りが暗くなって来た。そろそろ…と彼女をアパートの近くまで送り別れを告げた。

「今日はありがとう。久しぶりに女の子と喋れて若返ったよ。またいつでも相談に乗るから遠慮なく連絡してね。」

冗談を混ぜながら、二度と連絡が来ないと分かりながら。

こっちこそありがとう、わざわざ遠くまで来てくれて。と言う彼女。

私は笑顔のまま車に乗り込み、帰路にたった。

ー道中、今日の事を思い出す。我ながら最低だなと笑う。助けを求める女性を助けなかった。いや、一番傷付ける事になるかもしれない。人は変わらない。変われない。自分の彼女がどれだけ真摯に思いを伝えても人はそう簡単に変われないのだ。劇的な何かが起きない限り…。

彼女の元を去って30分程過ぎた。思い浮かぶのは彼女の泣き顔、無理して作った笑顔…。私は…。はぁ、とため息を吐く。私らしくない、そう、本当に今日は自分らしくない。いつもなら、女性の相談など乗らない。自分らしくないついでに、彼女を前に向かせようと決心した。

交差点をUターンし彼女の元へ車を走らせた。

彼女のアパートの前で電話し

「いきなりでごめん!後10分時間を下さい。」

そう伝え、現れた彼女に私は言い切れる。人生で最初で最後の告白をした。

「傷心に浸けいるようだけど、そんな男より僕と付き合わない?絶対に君を傷つけない。約束するよ。」

1人になるのが怖いと言う彼女にきっかけを作る。それが、私の出した真の答えだ。
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