超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「いいさ。オレにしてみりゃどっちでも構わん。だがもしおまえがオレと同じことを考えてそれを実行したとしてだ、次会うときおまえはオレを覚えているのか?」

「さっきから何を言っているのかさっぱりだが、俺たちゃ超人だぜ?」

「まぁ次会うときゃ、双子の弟とでも名乗れよ。って、これから食われるおまえに言っても意味ねえか。それともこれもテレパシーみたいに伝わってるのか? 自分でやったことねえからわかんねえや」

「おいT、気持ち悪いぞおまえ。どう見てもおまえのほうが俺に言いたいことがまだまだあるみたいだぞ」

「そうかもな。オレはよ、ジェロニモ、別におまえの教団が日本を支配しても全然構わなかったんだぜ。オレとオレの女を狙ってさえ来なければな。おまえは勝手気儘きままに生きることもできたのに、その力を世の中を変えるために使おうとした。世直しなんて面倒臭めどくせえことにな。多分に独善的ではあるが、な。おまえはおまえなりにおまえの中の正義に忠実に生きようとした。最後はヤケになって大義のない虐殺やっちまったけどな。おまえは戦国時代に生まれてたら間違いなく英雄になってたよ。横死おうししなければ、な。おまえを見逃すことも考えた。もうオレたちに手ぇ出さねえだろ? おまえ。でもやっぱりここで食っとくことにしたわ。おまえを丸ごと食ってその力を全部吸収させてもらうわ。そして念押ししておく。次からはオレたちを狙うなよ? 狙うなら仲間割れした八人を狙え。って、これもテレパシーなかったら意味ないけどな」

「俺は背伸びし過ぎたのかもしれん。あいつら一番歳上のポカンでも十九歳だからな。俺やおまえと同じ力を持ってるはずなのに誰もニュースにならないってのは、普通に青春を楽しんでるのかもな」

「そうだよ。楽しめるときに楽しんどくのが人生よ。いつ死ぬかわかんねえんだからよ。おまえのその真面目なところ、オレは嫌いじゃなかったぜ。次は教祖とか面倒臭えことやらないで遊んで暮らしたらどうだ?」

「そうだな……考えれば考えるほどそうするべきだったと思うよ、今は」

 穏やかな表情でジェロニモは言った。

「今度はオレから行くか? おまえから来たけりゃ来てもいいぞ。それか用意ドンで同時に行くか?」

「用意ドンでいいよ」

 五メートルの距離で対峙するTとジェロニモ。

「用意……ドン!」

 声を揃えて二人が交差する──れ違った直後ジェロニモの顔は八等分に割れた。
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