超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 ジェロニモがセンター街に突入する前に殺した人間は数百体。

 それらが時限爆弾のように次々ゾンビ化し出すや検視や現場保存に当たっていた警察関係者たちを襲い始めた。

 被害者が蘇生したと勘違いした鑑識や刑事や平警官たちは抵抗する間もなく喉笛を食い破られた。

 拳銃を所持している者も、生き返ったそれらが人間なのかそうでないのか判断がつかず、発砲を躊躇った者は即座に食い殺され、発砲した者もゾンビどもに一発も当てられずに結局彼らの餌になった。

 食うという本能に突き動かされたゾンビどもの進撃が始まった。

 都合のいいことに周りは餌だらけであった。

 そこには報道陣に野次馬が雁首がんくびを並べており、応援の警察も続々と集まって来ていた。

 機動隊車両や装甲車もやって来た。

 サブマシンガンを構えた特殊部隊員が装甲車両から続々と降りて来た。

 敵を知り己を知れば百戦危うからず。

 敵がスーパーゾンビで自分たちが生きている人間だと認識していれば──

「ジェロニモ」

 ジェロニモは返事をしない。

 追いつかれた。

 もはやこれまで。もう殺戮はやめだ。俺の気は十分晴れた。

 渋谷駅構内は上から下まで死体だらけだ。

 渋谷駅周辺、ハチ公前もモヤイ像前も死体だらけだ。

 スクランブル交差点も死体だらけ、ここだけはその半数以上が警官だ。

 センター街では二千人以上、その前に数百人、全部合わせて何人殺したかわからないが、道連れは十分作った。それにとっくに始まっているだろうが、今できたばかりの死体もそのうち全員ゾンビになってもっとたくさんの人間を殺すのだ。ざまあみろ! ……ん? ざまあみろ? ざまあみろって……なにがだ? 

 ざまあみろの意味がわからなくなっていた。

「もういいよジェロニモ。もう休んでいいんだよ」

 相手は自分のスピードにぴったり付いてくる。

 二人の姿は誰にも見えず、二人にだけサーモグラフィーのようにお互いが見えている。

「場所を選べジェロニモ。そこで終わりにしようや」

 Tの声が言った。 
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