超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「ま、待ってくれ! 強要なんかしていないっ! 全てミマヨも納得した上でのことだっ! そうだろミマヨ! おまえだって納得してたじゃあないかっ!」

「嫌だったわよ、あたしは。最初からね」

「おっ、おい~っ! ミマヨちゃ~ん。そんな今さら……そのお蔭で今のミマヨちゃんがいるわけだし、ミマヨちゃんが流した涙と飲み込んだ精液は無駄なんかじゃあなかったんだよ? ……あれ? なんか今失礼なこと言ったかな? ……そ、そうだっ! 私はまだ終わってはいないっ! 何度でもやり直せるっ! いくらでも方法はあるっ! これだって私のせいじゃないっ! 全部ジェロニモのせいだ! あのキチガイカルト野郎が全部悪い! 責任を取るべきは奴だ! Tさん、早く奴をやっつけてくれ!」

「ケッ、調子のいい野郎だぜ。さすがやり手芸能事務所の社長といったところか。まぁいい、ミマヨ、これを被れ」

 Tは記入例で使われるような名前の女芸人そっくりに変化させた自分の顔に片掌を押し当て引き剥がし、有無を言わさずそれをミマヨの顔に貼り付けた。

「顔はこれでよし……あとは服だな。おいおっさん、おまえのスーツとシャツをミマヨに貸してやれ」

 ミマヨの顔を見た社長は思わず吹き出したが、それを取り繕うように慌てて言われた通りにした。

 ミマヨはモデルだけあって手足が長いので、男物のスーツを着ても違和感はなかった。
 ぱっと見は男か女かわからない中性的な容貌になった。

「ほらよ」

 どこに隠していたのか、一度はジェロニモに全身をズタズタにされたにもかかわらず、Tが預かっていたミマヨのスマホは無傷だった。

 ミマヨにすればそれがTの肛門の奥に隠してあったとしても全然構わなかったが。

「ミマヨ、おまえはこのままマンションに帰れ。もしタクシーが捕まらず地下鉄も止まっていたら、走って帰れ。もうおまえも気付いていると思うが、今のおまえは普通の人間とは違う。おまえがその気になったら忍者のように動ける。途中誰かに襲われても、相手が普通の人間なら、おまえなら余裕で振り切れるし、戦えばおまえが圧勝する、相手が何人いようとな。どうやって戦うとか考えなくていい。適当に殴るなり蹴るなりすればいい。相手は勝手に倒れるだろう。家に帰ったらTVニュースでも観てろ。多分ずっと特番だ。その顔は引っ張れば簡単に取れるから帰ったら剥がせ。それからおっさん、おまえはそんななりだが、他人の目なんか気にしなくていい。パトカーの音が聞こえるだろう、これからもっとうるさくなる。どうせ外はパニックになってて誰もおまえを見ている余裕はないから、どさくさに通行人の服を頂戴ちょうだいしてもいいだろう。いいか、ミマヨ、外はパニックだ。だがおまえなら何とか切り抜けられる。何を見ても驚くな。助けを求められても無視しろ。オレが出てったら一分待ってからおまえも出ろ」
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