超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「そ、そうだ! あ、あんた助けてくれよ! 金はいくらでも出すっ! 俺たちをここから出してくれ! 今すぐに!」

 助けてくれ!

 ここから出してくれ! 

 何人もがTにそう懇願こんがんした。

 Tにとってはそんな声などどこ吹く風といった様子であった。

 ほげえっ!

 おごおっ! 

 スマホで外部と連絡を取ろうとした者たちが次々と男馬信者に地獄突きでたおされる。

 スマホを取り上げる必要のない必殺の攻撃であった。

 Tに自分たちを助ける気がないと知るや、夜更けとともに消えていく街の灯りのように招待客たちの熱気が徐々に消えていく。

「……おほっ! おほっほほほーっ!」

 不気味なよがり声が聞こえてきた。

「はうふ! はおっほぉ~っ……いぃっひひぃ~っ!」

 招待客たちがざわめいている。

 リレーのようによがり声の主が代わっていく。

 十人目のよがり声が止むや空砲くうほうを発射したような震動がした。

「復活したか」

 言ったTの、今度は五メートル手前に羽毛の軽さで着地したジェロニモ──は静かに語り出した。

「Tよ、俺はおまえを侮っていた。その侮りに相応しい不様ぶざまを晒してしまったな。……なぜとどめを刺さなかった? 俺の部下が何人いようとおまえの敵ではあるまい。おまえにとって今が俺を殺す最後のチャンスだったのだ。これでおまえを斃しても、おまえの底抜けの甘さにつけ込んだようでスッキリしないが、仕方あるまい」

「そんな気取った考えだからダメなんだよおまえは。ま、おまえみたいな奴はだいたいそうだけどな。オレも他人ひとのことは言えんが。んじゃま、仕切り直しといくか。来いよジェロニモ、おまえの秘奥義とやらで」

 Tは上向けにした右掌でジェロニモに手招きしてみせた。

「言われんでもそうするわっ!」

 叫ぶやジェロニモの体は左右に二十体──どころではない、Tを取り囲むように、Tを中心とする直径十メートルの円陣を全てジェロニモで作る人間の鎖が誕生した。

「ハハハハハ! T! 俺はこれから中心のおまえに向かって一斉に攻撃をしかける! 分身した俺から真っ直ぐおまえに向かって行くだけじゃない、分身一人一人がさっきの俺のように何列にも分かれて攻撃する! あらゆる角度からなぁ! おまえに逃げ場はない! そして重要なのはここからだぁ! さっきの連打で俺はおまえの動きを見切った! わかるのだ、俺には! 俺はもうおまえの攻撃は食らわんぞ!」
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