超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 ジェロニモは増殖しながら蛇行するレーザービームのようにTに殺到した。速度が増した分ジェロニモの分身の数も倍以上に増えていた。余裕を見せるようにすぐには襲いかからずかすめるようにTの周囲を行き来する。

「ウラウラウラウラーッ!」

 またしても空を切るTの連打。

「ハハハ! どうだ見切れまい! どっちの手足が切られるかわからず怖いだろう! 正解は切られたあとで知れい! 切り取られたあとで痛みにのたうち回るがいい! そろそろ行くぞぉ! ショオォォォォォ~……シャごばっ!」

 Tの両脇を通り抜ける前にジェロニモの連凧の中から一人弾き飛ばされた。同時に無数にいたジェロニモの分身の姿が掻き消えた。壁に激突するジェロニモ。その壁は出入口近くのトイレ代わりになっていた箇所だった。

「あがが、顎が……がごのっ」

 そこまで気が回らないらしいジェロニモは両手で、完全に壊れてと言うより千切れかけていた顎を押さえて無理矢理はめ込んだ。

 な、な、なんだとぉ~っ! 当てやがった……! 今の速さでこの俺にぃ~っ! や、野郎~っ! 野郎も本気を出してきたというのか……! 

 とっくに傷口が消え出血も止まり、ズタボロになった衣装も元通りに直っているTは感情の読み取れない表情で、小便臭い壁を背に座り込むジェロニモを見据えていた。

 仁王立ちのTはジェロニモを威嚇するように、胸の前で両手の指の関節を交互に鳴らすのだった。

「準備運動にはちょうどよかったぜ。こっちはもうおまえのどんな動きにも対応できる。中くらいの速さとか余裕こいてねえで全力で来い。もし今のが全力だったらおまえに勝ち目はねえぞ。時間の無駄だからもう食っちまうぞ。どうなんだ? まだ凄いもん隠してんのか?」

 わずかの歪みもなく修復した顔ですっくと立ち上がったジェロニモは、ようやく自身の身に付いた異臭に気付いたようだった。

 前屈の姿勢をとったジェロニモの背中が裂け、そこからジェロニモが人間大砲のように飛び出し再びTの十メートル手前に着地した。

 その顔にはすっかり冷静さが戻っていた。

 小便臭い壁の傍には透明なジェロニモの脱け殻があった。
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