超人ゾンビ

魚木ゴメス

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(つづき)
次の日俺は例の白人かぶれ馬鹿女とプレイルームに向かった。背後から女を抱きすくめドアを開けさせた。部屋に一歩踏み込んだ瞬間、俺の前にあった女の頭が消えた。俺は片足で蹴るようにドアを閉めた。逃がす気はなかった──部屋の明かりを点けるまでもなく俺には見えていた。うずくまり女の頭をバリバリ食っているタッカンが。体の輪郭は出来ていたが、グラスキャットフィッシュのように透明な体内に出来かけの脳や内臓や血管が見えていた。それらはまさに今造られようとしていた。これじゃあ何回殺してもきりがないじゃあないか! とは俺は思わなかった。俺にはもうわかっていた、どうすれば完全にタッカンをこの世から消せるかが。俺はタッカンにける暇も与えずその頭を踏み潰した。出来かけの心臓も踏み潰した。そして今度こそ骨も残さず全部食った。前回と違い全身が緑色に光ったのは一瞬で、それも淡い光だった。力の増幅はほとんど感じなかったが、ライバルが一人減ったという本能的な満足感があった。タッカンが齧っていた女の頭は三分の二以上なくなっていた。後ろを振り返ると女の体はまだ動いていた。仰向けに床に横たわったその手足がもがくように動いていた。俺は自分の左手首を切り、そこから流れる血を女の体のほうの切断面に注いでやり、そこに顎から上が食われてなくなっている首をくっつけた。三日経ったとき、女の頭は綺麗に再生した。彼女は自分が殺されたときのことは覚えていなかった。俺は教団内に新設したばかりの、疾病管理予防局しっぺいかんりよぼうきょくに彼女を調べさせた。その血液を顕微鏡で見ても普通の人間のそれと全く違いはなかった。だがアメリカCDCから引き抜いた大船虫(おおふなむし)博士の推測では、隕石に付着していた緑色に光るそれが微生物であれ細菌であれウイルスであれ、その特性は擬態にあり、生物の体内に取り入れられると直ちに既存の成分に擬態してしまい見分けがつかなくなっているのでは、ということだった。
(つづく)
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