超人ゾンビ

魚木ゴメス

文字の大きさ
上 下
132 / 155

132

しおりを挟む
(つづき)
あとでわかったのだが、そいつは俺たち九人を目の敵にしていた教団護衛部の隊長だった。八人が去り、たった一人になった俺ならば倒せると踏んで後をつけてきたのだ。──気がついたとき、俺は一心不乱に何かを食っていた。肉だ! 血にまみれた肉だ、俺が食っていたのは。それが人間の生肉だと気づいたとき、それでも俺の食欲は吐き気を凌駕りょうがした。今食っているのが紛れもない人間の肉だと認識した上で、肘と膝から先を除けば首から下のほとんどが骨だけを残すのみの、すっかり内臓まで食い尽くされたそれを見てなお食べ続けるのをやめられなかった。とうとう、首から上、手首足首から先を残して全て綺麗に平らげた。法螺貝ほらがいを吹いたような太く長いゲップが一つ出た。顔を見てそいつが教団護衛部の隊長だった奴だと気づいた。そいつは、上背うわぜいは百八十に満たなかったが、重戦車のような厚みのある体型で体重は優に百二十キロはあった。不足していたタンパク質と水分を補うには十分過ぎるほどの量だった。入り口のドアは閉めてあった。それでもそいつが悲鳴の一つでもあげれば誰かに気づかれたはずだ。どうやら俺は一撃でそいつの喉笛を食い千切ったらしい。たった今惨劇が行われた場所で逆に俺はえもいわれぬ安息感に浸っていた。教団幹部の娘のことなどどうでもよくなっていた。俺はしばらく壁に背をもたれて床に足を投げ出しだ格好で目を瞑り座っていた。十数分が経ったときだ、目の前で何かが動く気配があった。目を開けると顔以外ほぼ骨しか残ってなかったそいつが狂ったようにこっちに向かって噛みつこうとしていた。ほんとに顔と手と足の甲くらいしか肉のある部分は残ってなかったから、いくら俺に向かって来ようとしても無駄だったんだがな。だがギョッとしたよ。ゴキブリ一匹にビビる人間みたいにな。そういうときの人間と同じように、俺は跳ね起きるやそいつの顔面を一気に踏み潰した。それで全ては終わった」

 オレがキチガイ一家をぶち殺したときとほぼ同じだな。もっともオレの場合は三ヶ月かけて徐々に体が変化したから、正気を失うほどの空腹感に襲われることはなく人も食わずに済んだ。共通するのは強烈な意思によって体が変化するということだ。

 改めてそう思い返すTだった。

 会場内がざわついていた。

 ジェロニモの話は本当なのか? それなら奴は今十三歳くらいなのか? そんな馬鹿な! だがあいつらを見ていると信じざるを得ない気持ちになってくる。緑色に光る隕石が降った事件は俺も動画で観た。あの隕石には、そんな凄い効果があったというのか! あ~あ~! 俺も触りたかったぜ! クソがクソがクソが! 

 それが招待客たちの偽らざる気持ちであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

おかしな家

MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ おかしな家の、不思議で下品なお話です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選

上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。 一人用の短い恋愛系中心。 【利用規約】 ・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。 ・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。 ・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...