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(つづき)
あとでわかったのだが、そいつは俺たち九人を目の敵にしていた教団護衛部の隊長だった。八人が去り、たった一人になった俺ならば倒せると踏んで後をつけてきたのだ。──気がついたとき、俺は一心不乱に何かを食っていた。肉だ! 血にまみれた肉だ、俺が食っていたのは。それが人間の生肉だと気づいたとき、それでも俺の食欲は吐き気を凌駕した。今食っているのが紛れもない人間の肉だと認識した上で、肘と膝から先を除けば首から下のほとんどが骨だけを残すのみの、すっかり内臓まで食い尽くされたそれを見てなお食べ続けるのをやめられなかった。とうとう、首から上、手首足首から先を残して全て綺麗に平らげた。法螺貝を吹いたような太く長いゲップが一つ出た。顔を見てそいつが教団護衛部の隊長だった奴だと気づいた。そいつは、上背は百八十に満たなかったが、重戦車のような厚みのある体型で体重は優に百二十キロはあった。不足していたタンパク質と水分を補うには十分過ぎるほどの量だった。入り口のドアは閉めてあった。それでもそいつが悲鳴の一つでもあげれば誰かに気づかれたはずだ。どうやら俺は一撃でそいつの喉笛を食い千切ったらしい。たった今惨劇が行われた場所で逆に俺はえもいわれぬ安息感に浸っていた。教団幹部の娘のことなどどうでもよくなっていた。俺はしばらく壁に背をもたれて床に足を投げ出しだ格好で目を瞑り座っていた。十数分が経ったときだ、目の前で何かが動く気配があった。目を開けると顔以外ほぼ骨しか残ってなかったそいつが狂ったようにこっちに向かって噛みつこうとしていた。ほんとに顔と手と足の甲くらいしか肉のある部分は残ってなかったから、いくら俺に向かって来ようとしても無駄だったんだがな。だがギョッとしたよ。ゴキブリ一匹にビビる人間みたいにな。そういうときの人間と同じように、俺は跳ね起きるやそいつの顔面を一気に踏み潰した。それで全ては終わった」
オレがキチガイ一家をぶち殺したときとほぼ同じだな。もっともオレの場合は三ヶ月かけて徐々に体が変化したから、正気を失うほどの空腹感に襲われることはなく人も食わずに済んだ。共通するのは強烈な意思によって体が変化するということだ。
改めてそう思い返すTだった。
会場内がざわついていた。
ジェロニモの話は本当なのか? それなら奴は今十三歳くらいなのか? そんな馬鹿な! だがあいつらを見ていると信じざるを得ない気持ちになってくる。緑色に光る隕石が降った事件は俺も動画で観た。あの隕石には、そんな凄い効果があったというのか! あ~あ~! 俺も触りたかったぜ! クソがクソがクソが!
それが招待客たちの偽らざる気持ちであった。
あとでわかったのだが、そいつは俺たち九人を目の敵にしていた教団護衛部の隊長だった。八人が去り、たった一人になった俺ならば倒せると踏んで後をつけてきたのだ。──気がついたとき、俺は一心不乱に何かを食っていた。肉だ! 血にまみれた肉だ、俺が食っていたのは。それが人間の生肉だと気づいたとき、それでも俺の食欲は吐き気を凌駕した。今食っているのが紛れもない人間の肉だと認識した上で、肘と膝から先を除けば首から下のほとんどが骨だけを残すのみの、すっかり内臓まで食い尽くされたそれを見てなお食べ続けるのをやめられなかった。とうとう、首から上、手首足首から先を残して全て綺麗に平らげた。法螺貝を吹いたような太く長いゲップが一つ出た。顔を見てそいつが教団護衛部の隊長だった奴だと気づいた。そいつは、上背は百八十に満たなかったが、重戦車のような厚みのある体型で体重は優に百二十キロはあった。不足していたタンパク質と水分を補うには十分過ぎるほどの量だった。入り口のドアは閉めてあった。それでもそいつが悲鳴の一つでもあげれば誰かに気づかれたはずだ。どうやら俺は一撃でそいつの喉笛を食い千切ったらしい。たった今惨劇が行われた場所で逆に俺はえもいわれぬ安息感に浸っていた。教団幹部の娘のことなどどうでもよくなっていた。俺はしばらく壁に背をもたれて床に足を投げ出しだ格好で目を瞑り座っていた。十数分が経ったときだ、目の前で何かが動く気配があった。目を開けると顔以外ほぼ骨しか残ってなかったそいつが狂ったようにこっちに向かって噛みつこうとしていた。ほんとに顔と手と足の甲くらいしか肉のある部分は残ってなかったから、いくら俺に向かって来ようとしても無駄だったんだがな。だがギョッとしたよ。ゴキブリ一匹にビビる人間みたいにな。そういうときの人間と同じように、俺は跳ね起きるやそいつの顔面を一気に踏み潰した。それで全ては終わった」
オレがキチガイ一家をぶち殺したときとほぼ同じだな。もっともオレの場合は三ヶ月かけて徐々に体が変化したから、正気を失うほどの空腹感に襲われることはなく人も食わずに済んだ。共通するのは強烈な意思によって体が変化するということだ。
改めてそう思い返すTだった。
会場内がざわついていた。
ジェロニモの話は本当なのか? それなら奴は今十三歳くらいなのか? そんな馬鹿な! だがあいつらを見ていると信じざるを得ない気持ちになってくる。緑色に光る隕石が降った事件は俺も動画で観た。あの隕石には、そんな凄い効果があったというのか! あ~あ~! 俺も触りたかったぜ! クソがクソがクソが!
それが招待客たちの偽らざる気持ちであった。
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