超人ゾンビ

魚木ゴメス

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(つづき)
呆気ないものだった。ボコボコにした指導員はそのまま置き去りにした。その指導員は二度と教団に戻ることはなかった。俺たちは表面上は大人に従うふりをしてそれぞれ好き勝手なことを始めた。言い忘れていたが、隕石が緑色に光っているうちに触った九人はそれぞれ、十二歳が二人、十一歳が二人、十歳が一人、九歳が俺を含めた三人、そして六歳が一人という顔ぶれだった。俺たち九人は疲れ知らずになっていた。一週間くらい寝なくてもチャラヘッチャラだった。少年部の消灯時間は夜の九時だった。俺たち九人は皆が寝静まったあと、山を降りてまちへ遊びに行った。俺たちが何もしなくても、下は不良小学生から上はヤクザのおっさんまで、向こうから勝手に絡んでくるので片っ端からぶちのめした。生まれ変わったように毎日が楽しかった。そんな毎日が一ヶ月ほど続いたあと、俺を除く八人は教団を脱走した。脱走の前日、俺たち九人は話し合いをした。俺たちのリーダー格だったリュウジという奴が、こんなとこにいてもしょうがない、俺たちだけで一旗揚ひとはたあげようぜと提案した。それに対し俺は、少年部の残りの奴らはどうするのかと聞いた。まさか置いていくのかと。俺たちと違い普通の人間とは言え、わるわる負ぶって強行軍をしたかけがえのない仲間じゃないかと。あのときの気持ちを忘れたのかと。リュウジは、足手まといになるだけだから置いていくと当然のように言った。話はそれで終わりだった。リュウジは冷静な奴だった。食い下がる俺に、それならおまえはかけがえのない仲間のために残れと静かに言い、翌日八人を引き連れて消えるように教団を去って行った。リュウジに言った理由とは別に、俺には教団に残る理由があった。リュウジに言った理由は綺麗ごとだった。俺にはひそかに思いを寄せる女がいた。海外の大学から一時的に帰国していた教団幹部の娘で、歳は十九、俺より十歳上だった。彼女は物珍しさもあってか親の手伝いで教団に滞在していたのだ──」

 Tを除く招待客は、先程からジェロニモの話に突っ込みを入れたくて仕方がなかった。

 おいジェロニモ、おまえは約四年前の話をしているんだよな? ──そのとき九歳だっただと? 計算が合わないだろ! ジェロニモ、おまえはどう見たって二十歳はいってるだろうが! と。

 招待客たちの口には出さない突っ込みに対する答えを、このあとジェロニモは語ることになる。

 だが、それを聞いたところで誰一人として到底理解できる話ではなかった。
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