超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「先輩風を吹かせるのはやめてもらおうか。俺たちは同期だろうが」

「答えろ。殺した女たちから血を抜いただけでなく、脳と心臓まで抜き取ったのはなぜだ?」

「なんだその質問は。どうやらおまえの知識にはかたよりがあるようだな」

 ジェロニモの顔に、無知な大人に知識をひけらかすときの勝ち誇った少年のような笑みが浮かんだ。

「よかろう、教えてやる。その前に一つ聞く。おまえは超人になってから、誰かを噛み殺したことはあるか?」

「ある」

「ならば噛み殺した相手がゾンビになることは知っているな?」

「ああ、知ってるよ。唾液が生きてる人間の傷口に入れば驚くべき回復力を与えることもな」

「そうだ。だがその場合効果は徐々に薄れ、やがて元の普通の人間に戻る。噛み殺された場合その者は死ぬ直前に唾液をたっぷりもらっているから効果は薄れずそのままゾンビになるが、頭を潰せば死ぬ──ここまでは知っているようだな。それが血か精液だったら効果はもっと強力だ。なんせ体内にそれを取り入れた者を二十歳前後まで若返らせるくらいだ、その状態でいる限り、つまり効果が続いている間は、そいつは頭を潰しても死なぬ。完全に動きを止めるには心臓も潰さねばならぬ。だからあの女たちは全員心臓も抜き取ったのだ。こんなことも知らないとは、おまえ、自分の体液を与えた相手を殺したことがないな。まぁ待て。おまえの言いたいことはわかっている。潰せばいいだけなら、なぜ脳も心臓も抜き取ったのか。振り出しに戻ったな」

 ますます得意そうな顔になるジェロニモだった。

「もういい」

「なに?」

「もういい。おまえの話は勿体もったいぶっていかん。食ったんだろ。脳と心臓は食ったんだろ。血を飲むと同じくらい効果があるんだろ、それだけだろ」

「それだけだと? 何がそれだけだ。おまえは何もわかっちゃいない。いいか、よく聞け。どうせおまえはここで死ぬのだ。冥土めいどの土産に教えてやる。肝心なのはここからだ。自分の体液を取り入れた人間の血と脳と心臓では意味がないのだ。それはとっくに試した。そんなものを摂取しても何も能力は変わらぬ。欲しいのは、自分以外の超人エキスなのだ。だからおまえが犯した女たちを狙ったのだ 」

「その言い方だと、オレとおまえ以外にまだ隕石に触った奴がいたってことだな」

「緑色に光っている隕石にな。ああ、いたよ。そのうちの一人を俺は食った。あとの奴らとは殺し合いになる前にたもとを分った。今どこにいるかは俺は知らぬ」

「あと何人いるんだよ」

「八人だ。共食いして減ってなければな。言っとくが俺たち十人は同じ場所にいたんだ。あの夜、俺たち十人とおまえの他に、あの緑色に光っている隕石に触った奴がまだいた可能性はある」

 やれやれだぜ……オレとこいつ以外にまだそんなに同類がいるのかよ。
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