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ミマヨの最新グラビアDVD『ミマヨ、いいんじゃね? いい感じじゃね? いい感乳(かんちち)じゃね?』発売記念イベントは大盛況だった。
直角的にしてピエロをイメージしたような派手派手しい原色基調の、胸の部分だけはその形がはっきりわかる薄い布地に幻惑するような渦巻き模様の入ったコミカルかつエロティックな衣装で、ファンに応えるミマヨ。
突然アメリカに留学すると宣言して彼の地に旅立ったミマヨは、わずか三週間足らずで帰国した。
誰もそれを責める者はいなかった。
ミマヨのいつもの気まぐれだと思われただけだった。
帰国するなり、お詫びのように新作DVDを発売したのだ。
発売日は以前から告知されていたのだが、タイミング的にそう見えるようになってしまった。
それが話題性に拍車をかけたのは販売する側にとっては嬉しい誤算だった。
過去にない過激でセクシーな内容にファンは熱狂していた。
イベント終了後、渋谷区にある全面ガラス張りの一流ホテルに会場を移し、限定された百名の招待者だけの特別パーティーが行われていた。
特別の名に相応しくマスコミはシャットアウト、撮影も一切禁止されていた。
その代わりミマヨファンなら狂喜するようなメインイベントが控えており、もし違反して撮影する者がいれば直ちに退場、二度と招待されない上に法外な違約金を課されるとあっては破る者など出そうもなかった。
いや全員が違約金などどうでもよかったが、このような特権階級の集まりにおいてはルールが全て、抜け駆けが最大のタブーであり、あえてタブーを冒して永久に仲間外れになろうという者などいるはずもなかった、と言うべきか。
このルールは当然ながらミマヨの所属する芸能プロダクションが設定したわけではなかった。
一人一人がミマヨの芸能プロを遙かに凌ぐ力を持った前述の百名が仲間の抜け駆けを禁じるために設定したルールであった。
ミマヨの事務所の社長など、チンピラに目を付けられたカワイコちゃんの頼りにならない父親よりも頼りにならない存在であった。
「ミマヨちゃ~ん、喉渇かない? オレンジジュース持って来ようか?」
シルバー地にブルーのストライプの入った上下のスーツを着て、赤い蝶ネクタイを付け、豊かな髪をオールバックにした、牛乳瓶の底のように分厚い眼鏡の男が、なにくれとなく甲斐甲斐しくミマヨのご機嫌を伺っている。
ミマヨがつい最近雇った丁陀(ていだ)というマネージャーだ。
図体はデカいが見るからにとろくさそうだ。
「う、うん。大丈夫……」
嫌という感じではなく、逆にそんなことをしてもらったら恐れ多いとでもいった感じでミマヨは答えていた。
直角的にしてピエロをイメージしたような派手派手しい原色基調の、胸の部分だけはその形がはっきりわかる薄い布地に幻惑するような渦巻き模様の入ったコミカルかつエロティックな衣装で、ファンに応えるミマヨ。
突然アメリカに留学すると宣言して彼の地に旅立ったミマヨは、わずか三週間足らずで帰国した。
誰もそれを責める者はいなかった。
ミマヨのいつもの気まぐれだと思われただけだった。
帰国するなり、お詫びのように新作DVDを発売したのだ。
発売日は以前から告知されていたのだが、タイミング的にそう見えるようになってしまった。
それが話題性に拍車をかけたのは販売する側にとっては嬉しい誤算だった。
過去にない過激でセクシーな内容にファンは熱狂していた。
イベント終了後、渋谷区にある全面ガラス張りの一流ホテルに会場を移し、限定された百名の招待者だけの特別パーティーが行われていた。
特別の名に相応しくマスコミはシャットアウト、撮影も一切禁止されていた。
その代わりミマヨファンなら狂喜するようなメインイベントが控えており、もし違反して撮影する者がいれば直ちに退場、二度と招待されない上に法外な違約金を課されるとあっては破る者など出そうもなかった。
いや全員が違約金などどうでもよかったが、このような特権階級の集まりにおいてはルールが全て、抜け駆けが最大のタブーであり、あえてタブーを冒して永久に仲間外れになろうという者などいるはずもなかった、と言うべきか。
このルールは当然ながらミマヨの所属する芸能プロダクションが設定したわけではなかった。
一人一人がミマヨの芸能プロを遙かに凌ぐ力を持った前述の百名が仲間の抜け駆けを禁じるために設定したルールであった。
ミマヨの事務所の社長など、チンピラに目を付けられたカワイコちゃんの頼りにならない父親よりも頼りにならない存在であった。
「ミマヨちゃ~ん、喉渇かない? オレンジジュース持って来ようか?」
シルバー地にブルーのストライプの入った上下のスーツを着て、赤い蝶ネクタイを付け、豊かな髪をオールバックにした、牛乳瓶の底のように分厚い眼鏡の男が、なにくれとなく甲斐甲斐しくミマヨのご機嫌を伺っている。
ミマヨがつい最近雇った丁陀(ていだ)というマネージャーだ。
図体はデカいが見るからにとろくさそうだ。
「う、うん。大丈夫……」
嫌という感じではなく、逆にそんなことをしてもらったら恐れ多いとでもいった感じでミマヨは答えていた。
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