超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「怒るなよ。あと帰りいつになるかわかんねえから」

 数分前の、Tが自分の期待を裏切らないという確信は見事に裏切られた。

「ミマヨ、おいミマヨ。ミマヨちゃ~ん。もしも~し」

 ミマヨは答えない。

「じゃあ今日で終わりにするか!」

「いやっ!」

 ミマヨは金切り声で叫んだ。

「オレもだよ。なぁミマヨ、いい子だから我慢してくれよ。アメリカから帰ったら、さっき言ったみたいに、おまえに寄ってくる奴ら全員片付けてやっから」

「でも、いつ帰るかわからないんでしょ。あたしまた誰かのオモチャにされちゃうよ」

 地縛霊のような声音こわねでミマヨは言った。

「オレはな、ミマヨ、おまえがどれだけけがれようが一向に構わん。そういう趣味じゃないぜ? そうじゃなくて、ミマヨ、オレはおまえという一個の人間が好きなんだよ。体を張って芸能界で頑張っているおまえを応援したいんだよ」

 いつの間にかミマヨは泣いていた。

 涙に濡れそぼった瞳でTを見ていた。

「だからな、オレがアメリカに行ってる間にまた昔のパトロンか、全く別の新しい奴が出てきて、おまえをなぐさみ物にするようなことがあってもオレは全然気にしない。もちろん帰ったらそいつはただではおかない」

 Tなら必ずそうするだろうことがミマヨには確信できた。

 睫毛はまだ乾いていなかったが、その顔にはどしゃ降りのあとの青空のような表情が浮かんでいた。

「わかった。あたし我慢する。我慢して待ってる。だからなるべく早く帰ってきてね? お願いよ、T!」

「わかってるよぉ。ミマヨ、おまえさっきオレがアメリカ行くって聞いたとき一瞬キレたろ。ブルッたぜ。バナナみたいにオレの息子がおまえのアソコに切り取られるんじゃないかってな」

 ミマヨは笑いだした。

 もう大丈夫だ。

 何とかなだめすかした。

 猛獣を手懐てなずけたムツゴロウさんの気分だった。

「よぉーしょしょしょしょしょしょしょし」

 見る者をゾクゾクさせるような妖しい笑みを浮かべながらTはミマヨの顔を両手で挟み、ひとしきりこするように撫で回した。

 ミマヨは従順なペットのように気持ちにされるがままになっていた。

「ようし、機嫌直したな。いい子だ。じゃあお礼とお詫びの気持ちも込めて、今夜は朝までおまえをイかしまくってやるぜぇ! 覚悟はいいな? ミマヨ!」

 ミマヨの全身の皮膚が粟立あわだった。

「イヤーん、アッハーン。多分あたし壊れちゃうぅ~」

 心配そうな言葉とは逆にミマヨのアワビの内部では、さっきにも増して力強い蠕動が始まった。
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