超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 地下からはエレベーターで一階エントランスまで行く。

 エントランスに入ると、澄ました顔のコンシェルジュのいるフロントを素通りしてエレベーターまで行き、エレベーターが来るのを待って乗り込む。

 全てテンキー入力が必要だった。

「坊や、あなた、こんなとこに住んでいるなんて凄いのね。お金持ちなのね」

 二人っきりのエレベーター内で悦子がTにしなだれかかったまま、あえぐように言う。

「まぁ、ね。オレ、今年の一月に日本に帰ってきたんだけど、その前の三年間、海外で荒稼ぎしたのよ」

「荒稼ぎ、したのね」

「どんな仕事か大体想像つくだろ?」

「なんでもいいわ。あたし、あなたの仕事なんか気にしないわ」

「悦子~っ! おまえのそういうとこが好きだぜ。ほらぁ。オレの息子がビンビンになってるぜぇ」

「凄い……! ああ、早く欲しいわぁ……! でもあたしのおっぱいもちゃんと飲んでくれなきゃイヤよぉ!」

「当たり前だよぉ、マァマァ~。おっぱいが先だからね? ママのおっぱい飲みながら、ママのでシュッシュしてもらって、白いおしっこピュッピュするんだからね? ママを死ぬほど泣かせて、死ぬほどヒィヒィ言わせるのはその後あとだからね?」

「おお、おおお!」

 来る途中、車の中で何度もそうなったように、またもやTの言葉だけで悦子は軽く達してしまった。

「悦子! この乳ブタが。スケベだなぁ~っ、ほんとおまえは」

 聞いていられないような馬鹿馬鹿しくも恥ずかしいイチャラブトークを交わしながら、ようやく辿たどり着いたTの部屋というヴァーラスキャールヴで、悦子はアグニ神の火矢の直撃を受けて火達磨になるように煩悩の炎で身を焼き尽くされたあと、ニルヴァーナを味わったのだった。

 シャワールームで何度もTにイかされた、あの日以来のニルヴァーナだった。

 死んだようにぐったりとしながらも満足気な表情を浮かべる悦子に向かって、おまえは一生オレの母乳奴隷兼ママとして生きていくのだ、とTはおごそかに言い放った。

 そう言ったほうが、次から悦子がより燃え上がると思ったからだ。

 悦子はTと暮らすことになった。

 初恋を知ったばかりの少女のように悦子は狂喜していた。

 まさにTの思惑通りだった。

 Tが歴代Z務事務次官を絶賛殺害中にもかかわらずわざわざ時間をいて悦子をマンションに連れ帰ったのは、気まぐれとしか説明がつかなかった。

 Tが助けずとも、悦子ほどの上玉なら、寮付きの母乳風俗店で働けば簡単に売れっ子になれるのだ。

 悦子以外の女たちについては、悦子と違って生活に困窮こんきゅうしているはずもなかったので放置していた。

 悦子がTに選ばれたのは、ただただ運だった。

 しょせん世の中そんなものだ。
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