超人ゾンビ

魚木ゴメス

文字の大きさ
上 下
101 / 155

101

しおりを挟む
 魔獄のこめかみに、ぶっとい青筋が浮かんできた。

「なに言ってっかさっぱりわかんねえなぁ。まぁいいや。おまえさん、一体、Tから何をことづかってきたんだい?」

「それを話す前に、トイレをお借りしたいのでありますが。ビッグベンをしたいのであります」

「トイレ? ああ、ドアを開けて右手の奥だよ」

「感謝であります。サト坊、行きまーす」

 ドスドスと足音を響かせて出て行った。

「……なんだよあれは」

「変なデブっちょのおじさんね。あんな人と知り合いなんて、Tちゃんも顔が広いわね」

「あいつほんとにTの使いなんだろうな? まぁ、Tが言ってた通りの奴だけどよ」

「なんか怪しいっすね。見てきましょうか」

「よせよせ。デカいほうっつってたな。あいつ十キロくらい糞しそうだよな。便器詰まらせねえだろうな」

「そんなことになったら、洒落にならねえっスよ」

 ドアの向こうでざわめきが起こっている。

「なんだ?」

 魔獄は片眉を吊り上げた。

 ドアが開いた。

「すっきりしたであります」

 部屋の中にいた全員の目が丸くなった。

「Tっ!」

「Tちゃん!」

「Tの兄貴っ!」

 三人同時に叫んでいた。

「いよぉ~っ、お三方。元気だった? って二日しか経ってないけど」

「お、おめえいつ来たんだよ? あ、あのデブはどうしたんだ?」

「ああ、あいつね。あれ、オレだよ」

「な、なに言ってんだおめえ」

「あれオレが変装してたんだよ」

「!?」

 変装……? あれが? 

「だ、だってよ、顔だけじゃなく、体型からして全然違ったじゃねえか。あれ変装でどうこうできるレベルじゃねえぜ?」

「そう思うのが普通だよな。でも本当に変装だから」

「じゃあ、あのデブは……」

「オレとは全く無関係のどっかの頭のイカれたデブだよ。ネットで見て、こいつに化けてやろうと思っただけのね」

 Tの話は信じ難かったが、信じるしか三人に選択肢はなかった。

 ますますTが人間離れした存在に思えてきた。

「蛮神会だけどよ、あいつらが魔獄会にちょっかいかけてきたのは、自来也組の意を汲んでのことじゃなくて、あいつらの完全なスタンドプレーだったよ。だから昨日の件で自来也組が魔獄会に目をつけることはないと思う」

「それを知らせにわざわざ来てくれたのか。ありがとうよ。だがそんな心配、最初っから杞憂きゆうってもんだぜ。万万が一、蛮神会の残党がウチと揉めてたことを誰かに喋ったとしてもだ、どっちみちウチがやったなんて誰も疑わねえよ。一人二人の話じゃねえ、たった一日で九百五十五人がやられたんだ。寺田心がボブ・サップをボコボコにしたような話だからな。ガハハ」

「そうだな。おやっさんの言う通りだ」

「おおっと、そう殊勝になるこたぁねえ。T! この野郎……おめえには返しきれない借りが出来ちまったなぁ。こりゃあもうアレしかねえなぁ。とりあえず、だが。アレしかよぉ……」

 言いながらチラッとトヨを見る。

 トヨも何かを期待するようにその顔は赤くなり、息が荒くなってきている。

「T、トヨ、俺の部屋に行こうや。ヤス、おまえは仕事に戻れ。俺たちが部屋から出るまで誰も近づけるな。電話も繋ぐな」

「へいっ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

女子バスケットボール部キャプテン同士の威信を賭けた格闘

ヒロワークス
大衆娯楽
女子大同士のバスケットボールの試合後、キャプテンの白井有紀と岡本彩花が激しい口論に。 原因は、試合中に彩花が有紀に対して行ったラフプレーの数々だった。 怒った有紀は、彩花に喧嘩同然の闘いを申し込み、彩花も売り言葉に買い言葉で受ける。 2人は、蒸し暑い柔道場で、服をはぎ取り合いながら、激しい闘いを繰り広げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

処理中です...