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魔獄のこめかみに、ぶっとい青筋が浮かんできた。
「なに言ってっかさっぱりわかんねえなぁ。まぁいいや。おまえさん、一体、Tから何を言づかってきたんだい?」
「それを話す前に、トイレをお借りしたいのでありますが。ビッグベンをしたいのであります」
「トイレ? ああ、ドアを開けて右手の奥だよ」
「感謝であります。サト坊、行きまーす」
ドスドスと足音を響かせて出て行った。
「……なんだよあれは」
「変なデブっちょのおじさんね。あんな人と知り合いなんて、Tちゃんも顔が広いわね」
「あいつほんとにTの使いなんだろうな? まぁ、Tが言ってた通りの奴だけどよ」
「なんか怪しいっすね。見てきましょうか」
「よせよせ。デカいほうっつってたな。あいつ十キロくらい糞しそうだよな。便器詰まらせねえだろうな」
「そんなことになったら、洒落にならねえっスよ」
ドアの向こうでざわめきが起こっている。
「なんだ?」
魔獄は片眉を吊り上げた。
ドアが開いた。
「すっきりしたであります」
部屋の中にいた全員の目が丸くなった。
「Tっ!」
「Tちゃん!」
「Tの兄貴っ!」
三人同時に叫んでいた。
「いよぉ~っ、お三方。元気だった? って二日しか経ってないけど」
「お、おめえいつ来たんだよ? あ、あのデブはどうしたんだ?」
「ああ、あいつね。あれ、オレだよ」
「な、なに言ってんだおめえ」
「あれオレが変装してたんだよ」
「!?」
変装……? あれが?
「だ、だってよ、顔だけじゃなく、体型からして全然違ったじゃねえか。あれ変装でどうこうできるレベルじゃねえぜ?」
「そう思うのが普通だよな。でも本当に変装だから」
「じゃあ、あのデブは……」
「オレとは全く無関係のどっかの頭のイカれたデブだよ。ネットで見て、こいつに化けてやろうと思っただけのね」
Tの話は信じ難かったが、信じるしか三人に選択肢はなかった。
ますますTが人間離れした存在に思えてきた。
「蛮神会だけどよ、あいつらが魔獄会にちょっかいかけてきたのは、自来也組の意を汲んでのことじゃなくて、あいつらの完全なスタンドプレーだったよ。だから昨日の件で自来也組が魔獄会に目をつけることはないと思う」
「それを知らせにわざわざ来てくれたのか。ありがとうよ。だがそんな心配、最初っから杞憂ってもんだぜ。万万が一、蛮神会の残党がウチと揉めてたことを誰かに喋ったとしてもだ、どっちみちウチがやったなんて誰も疑わねえよ。一人二人の話じゃねえ、たった一日で九百五十五人がやられたんだ。寺田心がボブ・サップをボコボコにしたような話だからな。ガハハ」
「そうだな。おやっさんの言う通りだ」
「おおっと、そう殊勝になるこたぁねえ。T! この野郎……おめえには返しきれない借りが出来ちまったなぁ。こりゃあもうアレしかねえなぁ。とりあえず、だが。アレしかよぉ……」
言いながらチラッとトヨを見る。
トヨも何かを期待するようにその顔は赤くなり、息が荒くなってきている。
「T、トヨ、俺の部屋に行こうや。ヤス、おまえは仕事に戻れ。俺たちが部屋から出るまで誰も近づけるな。電話も繋ぐな」
「へいっ」
「なに言ってっかさっぱりわかんねえなぁ。まぁいいや。おまえさん、一体、Tから何を言づかってきたんだい?」
「それを話す前に、トイレをお借りしたいのでありますが。ビッグベンをしたいのであります」
「トイレ? ああ、ドアを開けて右手の奥だよ」
「感謝であります。サト坊、行きまーす」
ドスドスと足音を響かせて出て行った。
「……なんだよあれは」
「変なデブっちょのおじさんね。あんな人と知り合いなんて、Tちゃんも顔が広いわね」
「あいつほんとにTの使いなんだろうな? まぁ、Tが言ってた通りの奴だけどよ」
「なんか怪しいっすね。見てきましょうか」
「よせよせ。デカいほうっつってたな。あいつ十キロくらい糞しそうだよな。便器詰まらせねえだろうな」
「そんなことになったら、洒落にならねえっスよ」
ドアの向こうでざわめきが起こっている。
「なんだ?」
魔獄は片眉を吊り上げた。
ドアが開いた。
「すっきりしたであります」
部屋の中にいた全員の目が丸くなった。
「Tっ!」
「Tちゃん!」
「Tの兄貴っ!」
三人同時に叫んでいた。
「いよぉ~っ、お三方。元気だった? って二日しか経ってないけど」
「お、おめえいつ来たんだよ? あ、あのデブはどうしたんだ?」
「ああ、あいつね。あれ、オレだよ」
「な、なに言ってんだおめえ」
「あれオレが変装してたんだよ」
「!?」
変装……? あれが?
「だ、だってよ、顔だけじゃなく、体型からして全然違ったじゃねえか。あれ変装でどうこうできるレベルじゃねえぜ?」
「そう思うのが普通だよな。でも本当に変装だから」
「じゃあ、あのデブは……」
「オレとは全く無関係のどっかの頭のイカれたデブだよ。ネットで見て、こいつに化けてやろうと思っただけのね」
Tの話は信じ難かったが、信じるしか三人に選択肢はなかった。
ますますTが人間離れした存在に思えてきた。
「蛮神会だけどよ、あいつらが魔獄会にちょっかいかけてきたのは、自来也組の意を汲んでのことじゃなくて、あいつらの完全なスタンドプレーだったよ。だから昨日の件で自来也組が魔獄会に目をつけることはないと思う」
「それを知らせにわざわざ来てくれたのか。ありがとうよ。だがそんな心配、最初っから杞憂ってもんだぜ。万万が一、蛮神会の残党がウチと揉めてたことを誰かに喋ったとしてもだ、どっちみちウチがやったなんて誰も疑わねえよ。一人二人の話じゃねえ、たった一日で九百五十五人がやられたんだ。寺田心がボブ・サップをボコボコにしたような話だからな。ガハハ」
「そうだな。おやっさんの言う通りだ」
「おおっと、そう殊勝になるこたぁねえ。T! この野郎……おめえには返しきれない借りが出来ちまったなぁ。こりゃあもうアレしかねえなぁ。とりあえず、だが。アレしかよぉ……」
言いながらチラッとトヨを見る。
トヨも何かを期待するようにその顔は赤くなり、息が荒くなってきている。
「T、トヨ、俺の部屋に行こうや。ヤス、おまえは仕事に戻れ。俺たちが部屋から出るまで誰も近づけるな。電話も繋ぐな」
「へいっ」
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