超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 一晩経っても表の機動隊には一向に去る気配がなかった。

 午前九時になったとき、その前に一台の黒塗りの車が停まった。

 後部ドアが開き、匂い立つような麗人れいじんが降り立った。

 真っ黒い綿飴のような髪型をした、百八十センチを超える長身の女だった。

 厚いシルバーのコートの上からでもはっきりと、くっきりと巨大な乳と尻の張り具合がわかる。

 女は魔獄の事務所の前に居並ぶ機動隊に向かって近づいてくる。

 女の歩みに合わせてその体からみしみしと肉のきしむ音が聞こえてきそうだった。

 植物の成長の早回しのように機動隊員たちの股間が盛り上がり始めた。

 金的カップに押さえ込まれたシンボルが急膨張した全隊員の顔が苦痛に歪む。

 女は機動隊員たちの目の前まで来た。

 女の正面に立つ幸運な隊員の厚い胸板に、中身がぎっしり詰まった張りのある彼女の胸が押し付けられた。

 ほのかに漂うミルク臭。

 かあぁぁぁぁあっ! た、堪らん……! うひっ、うひっ、うひひひゃほーっほほーっ! 

 幸運な隊員は迷わず射精した。

 こっ、この野郎~っ! 

 絶頂隊員を除く隊員は全員、歯軋はぎしりをして悔しがった。

 全員から明確な殺意の炎が沸き立っていた。

 幸運な隊員はこのあと地獄を見ることになる。

 嫉妬に狂った隊員たちにいじめの対象にされ、早期退職を余儀なくされることになる。

「道を空けてくださらない?」

 小隊長が猛牛のように駆け寄ってきた。

 勢いで女に飛びかかりそうになるのをその寸前で辛うじて堪えた。

「あなたは……?」

「魔獄の知り合いよ」

 数センチの距離で正面の隊員を見つめたままで答える。

 この時点では最高に幸運な隊員は腰をカクカクさせながら鼻息を荒くし明らかに挙動がおかしくなっていた。

「馬鹿者っ! 下がれっ!」

 小隊長は列を組む機動隊の後ろに回り込むや、カクつく隊員の襟首えりくびを背後から掴み引き倒した。

「失礼しました。どうぞお通りください」

「ありがと」

 にっこりと微笑むと、金的カップを押し上げている全隊員をあとに、ブリン! ブリン! と音が聞こえるように豊かな尻を振りながら事務所に向かって行く。

「トヨッ! 待ってたぜ!」

 ドアが開くや魔獄が顔を出して叫んだ。

「悟空ちゃん、おはよう。待ったぁ?」

「待った待った、おめえがなかなか来ねえからやきもきしてたぜ。外は寒いだろう、さ、早く入れ」

 トヨの肩に手を回し、ドアに向かう。

「あいつらおまえに変なことしなかったか?」

「あたしの正面に立ってた隊員がね、あたしのおっぱいが当たってるのにどかないのよ~。失礼しちゃうわ。まだ倒れてる? あいつよ」
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