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「傭兵ですか」
「おうよ。だがそれくらいならそれほど驚くこともない。ヤクザだって傭兵を雇うこともあるし、傭兵上がりの組員抱えてる組もあるしな」
ヤスは考え込むように黙っている。
もちろん考えるふりをしているだけだ。
魔獄は続ける。
「それでも奴が、Tが傭兵時代の仲間と蛮神会を襲撃した、とは俺は思わん。傭兵だったときも今も、Tが誰かと組んで仕事をするような奴とは思えねえんだよ。それにな──」
魔獄は立ち上がると冷蔵庫から白い液体が入った二リットル容器を持ち出してきた。
組員たちには知り合いの酪農家から特別に分けてもらっている新鮮な牛乳と言ってあったが、中身はトヨの母乳だった。
蓋を開け、グビグビと飲む。
「ぷはぁ~っ! うめえぇ!」
それがトヨの母乳だとは知らない組員たちには、魔獄が何故そこまで牛乳好きなのか不思議だった。
魔獄はトヨの母乳を一気飲みしながら、昨夜のTとの乳兄弟の契りを思い出していた。
自然と顔がほころんでくる。
ニヤケ面で続ける。
「へへっ。俺は、へへへ。奴は──Tは人間じゃないと思う──うえっへへぇ……」
「え」
「へへ……奴はバケモンだ。ひひ。俺は一目見た相手の力量はだいたいわかる。それが俺が一代でここまで来れた理由の一つだ。T──あいつには、底が見えねえ。ひひひゃ」
「そんな、会長──」
そこまで言うかとヤスは思った。
「うふう。俺はあいつといるとき、虎をペットにしてるようなスリルを感じるんだよ。可愛いと思うと同時に、何かの弾みで簡単に殺されるかもしれないっていうような。ほひっ」
魔獄の面には恍惚の表情が浮かんでいる。
「うひ、うひひ、うへひほへひひゃー」
……なんか思い出して笑ってるよ……会長、まさかそっちの気があるんじゃ……いや、そんな話は噂でも聞いたことがねえ。クスリか? いや、会長はクスリを売っても自分でやることはねえ。ヤクは売っても打つんじゃねえ、会長の口癖だ。
魔獄の話は聞き手が小学生でも納得するものではなかったが、ヤスはそれ以上疑問を口にするのをやめた。
親が黒いと言ったらピンクの乳首も黒乳首、それがヤクザだ。
「さ、今日はもう寝るか。なんてったって機動隊が守ってくれてるんだ。今夜はぐっすり眠れそうだぜ」
「おうよ。だがそれくらいならそれほど驚くこともない。ヤクザだって傭兵を雇うこともあるし、傭兵上がりの組員抱えてる組もあるしな」
ヤスは考え込むように黙っている。
もちろん考えるふりをしているだけだ。
魔獄は続ける。
「それでも奴が、Tが傭兵時代の仲間と蛮神会を襲撃した、とは俺は思わん。傭兵だったときも今も、Tが誰かと組んで仕事をするような奴とは思えねえんだよ。それにな──」
魔獄は立ち上がると冷蔵庫から白い液体が入った二リットル容器を持ち出してきた。
組員たちには知り合いの酪農家から特別に分けてもらっている新鮮な牛乳と言ってあったが、中身はトヨの母乳だった。
蓋を開け、グビグビと飲む。
「ぷはぁ~っ! うめえぇ!」
それがトヨの母乳だとは知らない組員たちには、魔獄が何故そこまで牛乳好きなのか不思議だった。
魔獄はトヨの母乳を一気飲みしながら、昨夜のTとの乳兄弟の契りを思い出していた。
自然と顔がほころんでくる。
ニヤケ面で続ける。
「へへっ。俺は、へへへ。奴は──Tは人間じゃないと思う──うえっへへぇ……」
「え」
「へへ……奴はバケモンだ。ひひ。俺は一目見た相手の力量はだいたいわかる。それが俺が一代でここまで来れた理由の一つだ。T──あいつには、底が見えねえ。ひひひゃ」
「そんな、会長──」
そこまで言うかとヤスは思った。
「うふう。俺はあいつといるとき、虎をペットにしてるようなスリルを感じるんだよ。可愛いと思うと同時に、何かの弾みで簡単に殺されるかもしれないっていうような。ほひっ」
魔獄の面には恍惚の表情が浮かんでいる。
「うひ、うひひ、うへひほへひひゃー」
……なんか思い出して笑ってるよ……会長、まさかそっちの気があるんじゃ……いや、そんな話は噂でも聞いたことがねえ。クスリか? いや、会長はクスリを売っても自分でやることはねえ。ヤクは売っても打つんじゃねえ、会長の口癖だ。
魔獄の話は聞き手が小学生でも納得するものではなかったが、ヤスはそれ以上疑問を口にするのをやめた。
親が黒いと言ったらピンクの乳首も黒乳首、それがヤクザだ。
「さ、今日はもう寝るか。なんてったって機動隊が守ってくれてるんだ。今夜はぐっすり眠れそうだぜ」
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