超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「オレが魔獄会かだって? まぁ、そんなとこだ。……ふうん、嘘はついてねえな。……そうか。おまえらのスタンドプレイか。こっちとしては手間が一つ省けたが、おまえらにとっては藪蛇やぶへびだったな」

「まっ、ままっ、待ってくれっ! たっ、頼むっ! み、見逃してくれえっ! お、俺が悪かった! もっ、もう魔獄会には金輪際こんりんざい手を出さねえと約束するっ! うちのシマを二つ三つ分けてやってもいい! いや、やる! 差し上げますっ! そ、それでどうか魔獄会に手を出した件は勘弁してくださいぃぃいっ!」

 椅子から跳ね返るように身を起こしプレジデントデスクの縁を両手で掴み、捨てられた子犬のように上目遣いで集金人を見つめながら命乞いをした。

 鷲鼻の能面のような集金人の口元がほころび、その右手を大唾の顔の前でゆっくりと上下にひらひらさせた。

 アンコウの誘引突起ゆういんとっきに見とれる小魚のように、その動きに不思議そうに見入る大唾の薄い両眉のすぐ上に、折り曲げた親指を除く右手の四本の指をやや曲げ加減にして突き出した。

 なんの抵抗もなく豆腐を貫通するように四本の指は根元まで入った。

 それらの指を内部で掻き回すように動かし、抜き取りざま斜め後方に飛びすさった。

 数秒後、ぽっかり開いた四つの穴から鮮血が噴き出した。

 女は脱糞していた。

「ぶっ殺すって言ったのは嘘だよ。でも普通の生活はもうできねえだろうなぁ。前帯状皮質ぜんたいじょうひしつをズタズタにしたんでな。って意味わからんよな、お嬢さん」

「た、助けて……」

「くっさ! あなたウンコなんか洩らして恥ずかしいですねぇ。組員用の風呂場があるでしょう。そこへ行きましょう、案内しなさい」

 三階に降りるとそのまますぐには二階に進まず、組員用リビングに入った。

 荒異は気絶したままだった。

 そこへ歩み寄り、その上半身を引き起こし後ろから両肩を掴み活を入れた。

「おい、蛮神会の枝の事務所、全部教えろ」

「なん……だと……」

「早くしろ。今日中に全部片付けんだからよ」

「おま……え……正気……か……? 今日……中に……全……部……片……付……ける……? 蛮……神……会……をか……? 何……人……い……るか……わかっ……てる……のか……?」

「準構成員入れて千人くらいだろ? いいから早く教えろよ」

「ククク……千……人を……たった……一日……で……馬鹿か」

「教えないの? 教えないなら、今この場で殺すよ」

「いい……だろう……教え……る……やって……みるが……いい」

 荒異は蛮神会の事務所を全部吐いた。嘘はついていなかった。

「サンキュな」

 そう言うと集金人は荒異の頭にも大唾と同じ穴を作ってやった。

「約束通り命だけは助けてやったからな」
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