超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「あらーっ。やっぱり持ってたのね。全く警察は何やってんだ。てかおまえらグルだろ。グルになって庶民いじめてんだろこの野郎~っ。どうしようもねえなこの国は」

「やかましいっ! てめえ自分の置かれた立場がわかってるのか? 今すぐ死にてえのか?」

「うるさいのはおまえだろ。ギャーギャー喚いてないでさっさと撃てよ。どしたオラ。早く撃てよ」

 大唾の目がわってきた。

「どうやらてめえは狂ってるようだな。ヤクザの事務所にカチコミかけて、無事に帰れると思ったか。望み通り殺してやる」

 両手で拳銃を持ち直し、照準を集金人に合わせた。

「ご託は」

 銃声。

 撃て撃てとけしかけていた女は轟音ごうおんに腰を抜かした。

 もっとも完全防音仕様の建物から音が外に漏れることはない。

「!?」

 大唾の目が信じられないものを見るように大きく見開かれた。

 銃弾は集金人の眉間に画鋲がびょうのようにくっついている。

 貫通していない。

 目の錯覚か? それとも外したのか? 

「耳が痛~い。会長、撃つなら撃つって」

 銃声。銃声、銃声。

 数秒経った。

 銃声、銃声、銃声、銃声。

 八発全弾撃ち尽くした。

「それトカレフだよなぁ。もうたま残ってねえだろ」

 銃弾は全て、集金人の顔や服に画鋲のようにくっついたままだ。

 んなっ! んなっ! んなあぁぁぁあ~っ! 

「誉めてやるよ。口だけじゃなく、ちゃんと撃てたことを」

 目を皿のようにして集金人を見つめている女は腰を抜かしたまま失禁している。

 集金人はプレジデントデスクにひらりと飛び乗るや、しゃがんだ格好のまま、カチカチと引き金を鳴らしている大唾の手から左手で拳銃をひょいっと取り上げ、投げ捨てた。

 恐怖の表情を浮かべ椅子に貼り付いたようになっている大唾の顔をじっと見つめる。

「一つ聞く。魔獄会のシマにちょっかいかけてきたのは、自来也組の命令か? 正直に言えよ」

 襲撃者からの思いも寄らない問いかけに、一瞬の間が空く。
 脳内箪笥たんす抽斗ひきだしをひっくり返して質問の答えを探した。

「魔獄……会……? ああ……あれは……俺たちが勝手にやった。……自来也組は、他組織とは揉めるなと壊れたテープレコーダーのように言ってるよ。……これからのヤクザは平和共存だとな……そりゃ、下からの上がりで食ってる奴らはそれでいいだろうよ。だが俺たちにすりゃあ、少しでも自分たちのパイはデカくしたいんだよ。俺たちゃヤクザなんだぜ? 縄張りを広げたいって思うのはヤクザの本能だ。だから魔獄会に目をつけた。あんなちっぽけなとこなら食っても別にいいと思ったんだ。……てまさか、あんた魔獄会の?」

 聞き返しながら大埵は自分の運命をほぼ悟っていた。
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