超人ゾンビ

魚木ゴメス

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「そういやお兄さんの名前まだ聞いてなかったな。名前なんてんだい?」

「T」

「てぃー? 変わった名前だな、ひょっとして外人さんか?」

「いや、日本人だよ」

「ふうん。なるほど。お兄さんの名前はてぃーか。よし、T、飯食いに行こうや」

 魔獄はTを自分の縄張りにある高級中華料理店に連れて行った。

 店は五階建てのビルの二階にあった。

 店に着くなり貸し切りにした。

 Tと魔獄とトヨを残して、供の組員五人を階下に待機させた。

 予想通り出てきたのは満漢全席だった。

 三人とも大食だったから問題なかった。

 数時間かけて食事をしながら、Tと魔獄はいろんな話をした。

 どう見ても二十歳なのに、Tの口から語られる博識に魔獄は舌を巻いた。

 Tも魔獄が当初思っていたより遥かに知的で常識のある人物とわかり心の態度を改めた。

 昨夜、魔獄を襲った男たちは自来也(じらいや)組の系列の者だった。

「あいつら自来也組だったんだ」

「十七年前に蛮神(ばんじん)会が自来也組の傘下に入ったろ。そいつらだ」

 自来也組──日本人なら幼稚園児でも知っている日本最大最強の暴力団で、関西を本拠として全国に拠点があった。

 かつては関東ヤクザで団結してその侵攻を防いでいたが、度重なる執拗な切り崩しに遭い、今や東京もすっかり自来也組の勢力下にあった。

「あいつら俺のシマで商売してやがってよ。それも人身売買だぜ。舐めやがって。そこをぶっ潰したときこのトヨを見つけたのよ」

 トヨは世界中の金持ちに売りつけられる女たちの一人だった。

 ある日トヨは舅姑しゅうとしゅうとめの勧めもあり、産んで間もない子供を彼らに預けて街へショッピングに出かけた。

 初めて見る高級ブティック店に入った。

 ブラジャーの試着のとき女性店員に背後からクロロフォルムの染み込んだ布で鼻と口を覆われた。

 気づいたときは二十人ほどの女たちとどこかの地下に監禁されていた。

 海外に売り飛ばす女たちを拉致するための、自来也組の息のかかった店に入ってしまったのだった。

 捕らえられた女たちはイメージビデオを撮らされ、それを観た金持ちたちにネットオークションでり落とされていた。

 トヨは外人モデル並みの美貌とスタイルに豊満なボディー、その上子供を産んだばかりのパンパンに張った乳房に無尽蔵の母乳を蓄えた上玉中の上玉だったので、組員たちは味見を厳禁されていた。

 体に傷一つ付いただけで値段が変わってくるのだ。
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