84 / 155
84
しおりを挟む
「で、魔獄さんいるの?」
ヤスの顔が何かを思い出したようにハッとする。
「それが、会長は今……」
ヤスがそう言いかけたとき、一同の前で黒塗りの車が止まり、後部座席のドアから魔獄が降りてきた。
女連れだった。
並外れて大柄な女だった。
「おっ、おめえは……お兄さん、来てくれたのかい!」
「こんちは」
「そうかいそうかい来てくれたのかい! 嬉しいぜぇ~っ! ……ん? なんだおまえら。揃ってなにやってんだ?」
苦々しい顔でヤスが答える。
「実はちょいとした行き違いがありまして……」
「なにぃ~っ!」
たちまち魔獄のこめかみに太い青筋が浮かぶ。
「あ、あっしが悪いんでさぁ! あっしがこのお方を怪しい野郎と勘違いして……はべらっ!」
待てコラ野郎が魔獄に殴り倒された。
「てっ、てめえらっ! 俺の命の恩人になんてことしてくれやがったんだぁ!」
まるでフィルムを巻き戻したような既視感。
いや、気のせいではない。
確実にさっき見た光景が繰り返されようとしていた。
……オレは精神的な拷問を受けているのか?
冗談抜きで劇団・魔獄会の三文芝居にうんざりしていた。
「魔獄さん、オレ、今日んとこは帰るわ。じゃ」
「ちょちょちょちょっと待ってくれ! おい、おまえらお引き留めしねえかっ!」
「へいっ!」
組員たちが四つん這いのままでTの行く手を遮る。
「兄貴いっ! 会長が、ああして仰ってらっしゃいますんで、ここはどうかっ! どうかよしなにっ!」
「…………」
面倒臭いんでTは魔獄の歓待に応じることにした。
それにしても昨夜どこかの組織の襲撃を受けたばかりだというのに、たった今、ボディガードは運転手だけで女とどこかから帰ってきたところを見ると、魔獄も相当な玉というか、それとも危機感ゼロの馬鹿なのか、Tには判別に苦しむところだった。
いや、考えるまでもなく後者だろう。
「昨日の今日で来てくれるとは思わなかったからよ、ほんとに嬉しいよ」
「悟空ちゃん、こちら、どなたぁ?」
魔獄の連れの女だ。
魔獄より十五センチは背が高い。
ヒールは履いていない。
百八十五センチはある。
真っ黒な綿飴のような髪型。
男装が似合いそうな美しい顔立ち。
白磁のように滑らかな肌の悩殺的な肉体。
ぴったりと張り付くラメ入りの真っ赤なミニスカドレスから半分はみ出たバレーボールのような二つの胸。
Tの嗅覚は車のドアが開いたときから強烈な母乳臭を嗅ぎとっていた。
「こいつは俺のレコでトヨだ」
トヨの乳房に突き刺すような視線を向けているTに紹介する。
Tは視線をトヨの顔に向ける。
トヨの顔がポッと赤くなる。
ヤスの顔が何かを思い出したようにハッとする。
「それが、会長は今……」
ヤスがそう言いかけたとき、一同の前で黒塗りの車が止まり、後部座席のドアから魔獄が降りてきた。
女連れだった。
並外れて大柄な女だった。
「おっ、おめえは……お兄さん、来てくれたのかい!」
「こんちは」
「そうかいそうかい来てくれたのかい! 嬉しいぜぇ~っ! ……ん? なんだおまえら。揃ってなにやってんだ?」
苦々しい顔でヤスが答える。
「実はちょいとした行き違いがありまして……」
「なにぃ~っ!」
たちまち魔獄のこめかみに太い青筋が浮かぶ。
「あ、あっしが悪いんでさぁ! あっしがこのお方を怪しい野郎と勘違いして……はべらっ!」
待てコラ野郎が魔獄に殴り倒された。
「てっ、てめえらっ! 俺の命の恩人になんてことしてくれやがったんだぁ!」
まるでフィルムを巻き戻したような既視感。
いや、気のせいではない。
確実にさっき見た光景が繰り返されようとしていた。
……オレは精神的な拷問を受けているのか?
冗談抜きで劇団・魔獄会の三文芝居にうんざりしていた。
「魔獄さん、オレ、今日んとこは帰るわ。じゃ」
「ちょちょちょちょっと待ってくれ! おい、おまえらお引き留めしねえかっ!」
「へいっ!」
組員たちが四つん這いのままでTの行く手を遮る。
「兄貴いっ! 会長が、ああして仰ってらっしゃいますんで、ここはどうかっ! どうかよしなにっ!」
「…………」
面倒臭いんでTは魔獄の歓待に応じることにした。
それにしても昨夜どこかの組織の襲撃を受けたばかりだというのに、たった今、ボディガードは運転手だけで女とどこかから帰ってきたところを見ると、魔獄も相当な玉というか、それとも危機感ゼロの馬鹿なのか、Tには判別に苦しむところだった。
いや、考えるまでもなく後者だろう。
「昨日の今日で来てくれるとは思わなかったからよ、ほんとに嬉しいよ」
「悟空ちゃん、こちら、どなたぁ?」
魔獄の連れの女だ。
魔獄より十五センチは背が高い。
ヒールは履いていない。
百八十五センチはある。
真っ黒な綿飴のような髪型。
男装が似合いそうな美しい顔立ち。
白磁のように滑らかな肌の悩殺的な肉体。
ぴったりと張り付くラメ入りの真っ赤なミニスカドレスから半分はみ出たバレーボールのような二つの胸。
Tの嗅覚は車のドアが開いたときから強烈な母乳臭を嗅ぎとっていた。
「こいつは俺のレコでトヨだ」
トヨの乳房に突き刺すような視線を向けているTに紹介する。
Tは視線をトヨの顔に向ける。
トヨの顔がポッと赤くなる。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる