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「ちょっと待って。あたしそれ知ってる! その緑色の隕石の話……四年くらい前にニュースでやってたやつだよね? 一晩で日本にたくさん隕石が落ちたってやつでしょ」
「覚えてたか。そうだよ、それだよ。オレに当たったのはそのうちの一つだよ。多分だけどな」
帰宅したTは自分が隕石の直撃を受けた昨夜、日本列島に数百個の隕石と見られる謎の物体が飛来していたことをネットで知った。
それらのほとんどは狙い澄ましたように長野県から岐阜県にかけての山脈地帯に集中的に落下していた。
そのお蔭で奇跡的に人的被害は出ていなかった──Tを除いて。
テレビやネットの動画には、あたかも緑色の打ち上げ花火の残光のようなものが映っていた。
こいつか~っ!
落ちた隕石を探しに多くの人々が山に入ったが、見つけた者はいなかった。
どうやら緑色に光っていたのは地面に着地するまでの間のようだった。
何日か経ったあと、たった一人、落下直後の隕石らしきものを撮った動画をUPした。
長野県南佐久郡川上村の住民が撮った、庭に落ちた隕石が地面に接触してから二、三分で光が消えるまでの様子が映った動画だった。
専門家の話では、仮にその発光の正体が微生物などの生命体だったとしても、地球の環境には適さなかったので、すぐ消えてしまったのだろうとのことだった。
その動画のお蔭で、発光しなくなったあとの隕石がどんなものかわかったので、日本全国で山から隕石を探し出し拾ってくる者が続出した。
発見されたそれらはかなりの高値で取り引きされた。
いくつかは国の研究機関が回収したらしかったが、以後何の報告もされることはなかった。
いつしか人々はそのことを記憶の片隅に追いやっていった。
「その隕石のせいで今の能力が身についたの?」
Tは隕石が直撃した場面以外は、キチガイの隣人のこと、自分がハゲ散らかした寂しい中年男だったこと、警備員をやっていたこと、などとはまるで別の作り話をしていた。
本当のことは誰にも言うつもりはなかった。
岐阜県山中で木こりをしていた設定にしていた。
「察しがいいな。そうなんだけど、もうちょっと喋らせろや」
「覚えてたか。そうだよ、それだよ。オレに当たったのはそのうちの一つだよ。多分だけどな」
帰宅したTは自分が隕石の直撃を受けた昨夜、日本列島に数百個の隕石と見られる謎の物体が飛来していたことをネットで知った。
それらのほとんどは狙い澄ましたように長野県から岐阜県にかけての山脈地帯に集中的に落下していた。
そのお蔭で奇跡的に人的被害は出ていなかった──Tを除いて。
テレビやネットの動画には、あたかも緑色の打ち上げ花火の残光のようなものが映っていた。
こいつか~っ!
落ちた隕石を探しに多くの人々が山に入ったが、見つけた者はいなかった。
どうやら緑色に光っていたのは地面に着地するまでの間のようだった。
何日か経ったあと、たった一人、落下直後の隕石らしきものを撮った動画をUPした。
長野県南佐久郡川上村の住民が撮った、庭に落ちた隕石が地面に接触してから二、三分で光が消えるまでの様子が映った動画だった。
専門家の話では、仮にその発光の正体が微生物などの生命体だったとしても、地球の環境には適さなかったので、すぐ消えてしまったのだろうとのことだった。
その動画のお蔭で、発光しなくなったあとの隕石がどんなものかわかったので、日本全国で山から隕石を探し出し拾ってくる者が続出した。
発見されたそれらはかなりの高値で取り引きされた。
いくつかは国の研究機関が回収したらしかったが、以後何の報告もされることはなかった。
いつしか人々はそのことを記憶の片隅に追いやっていった。
「その隕石のせいで今の能力が身についたの?」
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本当のことは誰にも言うつもりはなかった。
岐阜県山中で木こりをしていた設定にしていた。
「察しがいいな。そうなんだけど、もうちょっと喋らせろや」
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