超人ゾンビ

魚木ゴメス

文字の大きさ
上 下
60 / 155

60

しおりを挟む
「ダーッハッハッハッハ! おちんちんびろーん!」

 二十四時間気を抜けない状況が何日も続き、このままでは発狂すると思った玉革は、正気を保つためにあえて馬鹿になることにしたのだった。

 これが、Z務事務次官にまで登り詰めた男が選んだ、心の処方箋だった。

「わっしょいわっしょい! スターリングラード!」

 素っ裸で両腕を左右水平に広げ掌を上に反らし、警護する隊員たちの目の前を走り回る。

「ぷぁーいおつぷぁーいおつぅ、みぃーもぉーみぃーもぉー、うーんこーぶーりぶーりぃ、くっさーまーんじーぃるぅ」

 隊員たちの頭がおかしくなりそうだった。

「いんぐりっしゅ! もんぐりっしゅ! ぱつきんまんげぼーぼー! コマンチ!」

 玉革が殺されるか、犯人が捕まるまではこれが続くと思うと地獄だった。

 隊員たちはUFOコンタクティのように心の中で歴代Z務事務次官殺しに呼びかけた。

 おーい! ここだ! 早く来てくれー! と。

「エロマンガ! スケベニンゲン! メガチンポ! ヌルマンチョ!」

 叫びながら玉革はトイレに入った。

「鎮まれ、鎮まれぇーい! 我が赤兎馬せきとばよ……! 放水開始! ゴー! ゴー! ゴー! 若林豪! ンッゴウ!」

 意味不明な叫び声が止んだ。

 ……おかしい。数分経っても玉革は沈黙したままだ。大きいほうなら大きいほうで盛大に息む声が聞こえるはずだ。

 静かにドアが開き、首のない玉革の体がスローモーションで倒れてきた。

 首はねじ切られていて、ぐちゃぐちゃになった切断面がこっちを向いていた。

 死亡推定時刻は午後三時十二分。

 トイレの中にもう一人いた。

 男だった。

 恐ろしいほどの美形だった。

 身長は百八十センチくらい、こんの作業服の上下を着て、メデューサを退治したペルセウスのように右手に玉革の生首を掴んで立っていた。

 言うまでもなく血まみれだった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤毛の行商人

ひぐらしゆうき
大衆娯楽
赤茶の髪をした散切り頭、珍品を集めて回る行商人カミノマ。かつて父の持ち帰った幻の一品「虚空の器」を求めて国中を巡り回る。 現実とは少し異なる19世紀末の日本を舞台とした冒険物語。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...