超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 翌日の四月二十日、星堕(ほしだ)元Z務事務次官(六十三歳)が殺された。

 星堕はZ務官僚になったその日から、いつかは天上人たるZ務事務次官になるべく、誰の目からも豪胆な男に見えるよう、常日頃から豪胆な男を演じることに命を賭けて生きてきた。

 遂にZ務事務次官になってからは、恐れを知らぬ豪胆さで、増税に次ぐ増税を時の総理をして庶民に課さしめた。

 そんな星堕にとって命を狙われているからといって、さくの中の怯えた子羊のように自邸に閉じこもっていることなどあり得なかった。

 午前中、星堕がいつもの通り天下り先に顔を出そうと思っていた矢先、機先を制するように朝早く、まず三つある天下り先のうちの一つである某大企業から電話があり、丁重に出社を断られたのだった。

 電話相手の言葉遣いは卑屈そのものだったが、要は当分来なくていいということだった。

 当分は絶対に出て来るなということだった。

 もしあくまでも出社するというなら全会一致で解任せざるを得ないとまで遠回しに言われては、いかに豪胆で鳴らした星堕と言えども従わざるを得なかった。

 屈辱で全身が炎に焼かれているようだった。

 続いて残り二つの天下り先の政府系金融機関からも電話があり、それぞれ同じように出社を拒まれた。

 それら天下り先にしてみれば、連日の報道で衆目監視の中にある星堕に、二十人の特殊部隊員、場合によっては機動隊一個師団を引き連れて押しかけられては、要らぬ風評被害をはじめとして組織運営においても迷惑以外の何物でもなかった。

 この状況で世間の怨嗟の的であるZ務事務次官OBの天下り先として注目を浴び、あまつさえ指弾されるのは、たとえ星堕の逆鱗げきりんに触れようとも何としても避けたかったのだ。

 三つ全ての天下り先ににべもなく出社を断られた星堕は、怒りのあまり気が遠くなりかけた。

 そのままどう考えても精神衛生上良くない状態で午後三時まで過ごし、ようやく気分転換に散歩に出掛けることにした。

 星堕は大の闘犬好きで、都内でも有名な土佐犬のブリーダーだった。

 星堕邸の広大な敷地の一画には頑丈な板と二重の金網で出来た土佐犬の飼育場があって、近所の住民からは人食い土佐犬邸と呼ばれていた。
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