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国素元Z務事務次官は 、山済元Z務事務次官が殺された翌日の四月十九日に自邸の階段から何者かに突き落とされて殺された。
死亡推定時刻は午前九時五十五分。
国素は独身。
過去に二度結婚していたが、二度とも妻が病死していた。
その度に莫大な保険金を手にしていた。
国素は歴代Z務事務次官の中で最も有能と言われていた。
その種明かしは、先祖に明治の元勲や事務次官経験者が何人もいるという血統、さらに伯父が大勲位と呼ばれる齢百を越える超のつく元大物政治家で、その威を笠に着て相手が総理大臣であろうが遠慮会釈なく怒鳴りつけることができたからだった。
遠慮会釈なく総理を怒鳴りつけて、情け容赦なく庶民に重税を課さしめた。
その余りの苛斂誅求ぶりに鬼代官、強制収容所所長、ポル・ポト、スターリン、鵜匠、ウンコなどと陰口を叩かれた。
反対する評論家がいれば痴漢や万引きの冤罪をでっち上げて社会的に葬り去った。
反対するフリージャーナリストがいれば事故死や自殺に偽装して物理的にこの世から消した。
もちろん自らの手を汚さずにだ。
そんな国素だから退官してもその影響力には些かの衰えもなかった。
国素は大柄で、真っ黒に染めた豊髪に、チベット仏画のブタ鼻の明王のような顔をしていた。
怖いようでどことなく愛嬌があり不思議と女にモテた──とは本人の弁であって、実際は気に入った女は片っ端から手籠めにしていただけだった。
中には訴えようとする女もいたが、手段を選ばない国素が相手では泣き寝入りするしかなかった。
これ以上ないほど恵まれたバックグラウンド、本人もそれを自覚し十二分に利用した上での負け知らずの人生、仕事も女も思いのままであった。
二度目の妻が病死したのは二年前だった。
それ以来誰憚ることなく気ままな独身生活を謳歌していた。
殺害される前夜も、国素はちょうど午後十一時に、頭は空っぽだが巨大な双乳に夢だか母乳だかがいっぱい詰まったゴージャスな肉体の、誰もが知っている二十二歳の超人気モデルのミマヨを連れて帰宅すると、そのまま警護の隊員たちに挨拶もせずにさっさと完全防音の寝室に入ってしまった。
それを指を咥えて見ていたその場の誰もが思った。
国素、てめえ、朝になったら遺体になっとれ! と。
それから九時間ほど経過して国素が充血した目でミマヨと一緒に寝室から出てきたとき、隊員たちはこの世の不条理を思い知った。
死亡推定時刻は午前九時五十五分。
国素は独身。
過去に二度結婚していたが、二度とも妻が病死していた。
その度に莫大な保険金を手にしていた。
国素は歴代Z務事務次官の中で最も有能と言われていた。
その種明かしは、先祖に明治の元勲や事務次官経験者が何人もいるという血統、さらに伯父が大勲位と呼ばれる齢百を越える超のつく元大物政治家で、その威を笠に着て相手が総理大臣であろうが遠慮会釈なく怒鳴りつけることができたからだった。
遠慮会釈なく総理を怒鳴りつけて、情け容赦なく庶民に重税を課さしめた。
その余りの苛斂誅求ぶりに鬼代官、強制収容所所長、ポル・ポト、スターリン、鵜匠、ウンコなどと陰口を叩かれた。
反対する評論家がいれば痴漢や万引きの冤罪をでっち上げて社会的に葬り去った。
反対するフリージャーナリストがいれば事故死や自殺に偽装して物理的にこの世から消した。
もちろん自らの手を汚さずにだ。
そんな国素だから退官してもその影響力には些かの衰えもなかった。
国素は大柄で、真っ黒に染めた豊髪に、チベット仏画のブタ鼻の明王のような顔をしていた。
怖いようでどことなく愛嬌があり不思議と女にモテた──とは本人の弁であって、実際は気に入った女は片っ端から手籠めにしていただけだった。
中には訴えようとする女もいたが、手段を選ばない国素が相手では泣き寝入りするしかなかった。
これ以上ないほど恵まれたバックグラウンド、本人もそれを自覚し十二分に利用した上での負け知らずの人生、仕事も女も思いのままであった。
二度目の妻が病死したのは二年前だった。
それ以来誰憚ることなく気ままな独身生活を謳歌していた。
殺害される前夜も、国素はちょうど午後十一時に、頭は空っぽだが巨大な双乳に夢だか母乳だかがいっぱい詰まったゴージャスな肉体の、誰もが知っている二十二歳の超人気モデルのミマヨを連れて帰宅すると、そのまま警護の隊員たちに挨拶もせずにさっさと完全防音の寝室に入ってしまった。
それを指を咥えて見ていたその場の誰もが思った。
国素、てめえ、朝になったら遺体になっとれ! と。
それから九時間ほど経過して国素が充血した目でミマヨと一緒に寝室から出てきたとき、隊員たちはこの世の不条理を思い知った。
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